■往年のラグジュアリーSUVを振り返る
近年、世界的に人気となっているSUVですが、小型かつ安価なモデルから大型で数千万円クラスの高級SUVまで、さまざまなセグメントのモデルが存在します。
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とくに高額なモデルは利益率も高いことから高級車メーカーがこぞってSUVを販売しており、世界中のセレブに愛されています。
そんな高級SUVの歴史は意外と古く、まだSUV=クロカン車という時代にはすでに誕生していました。
そこで、現在のような人気となる以前に誕生したネオクラシックな高級SUVを、5車種ピックアップして紹介します。
●ランドローバー「レンジローバー」
SUVに特化したイギリスのランドローバーは、数多くのブランドを束ねていたブリティッシュレイランドグループ傘下で創業しました。
当初、ランドローバーが生産していたモデルは、快適性とは無縁の無骨なクロカン車である「ディフェンダー」が主力でしたが、1970年にはより快適なモデルとして初代「レンジローバー」を発売。
駆動方式は当時としては珍しいフルタイム4WDシステムを採用し、高い悪路走破性能と同時に高級セダン並の快適性を両立するというコンセプトで開発されました。
ボディは大型のステーションワゴンで、最初は2ドアのみでしたが後に4ドアが設定され、簡素だった装備も年を追うごとに充実してさらにラグジュアリーなクルマへと進化。
エンジンは3.5リッターV型8気筒ガソリンを搭載し、徐々に排気量を拡大。後年にはディーゼルエンジンも追加されました。
1980年代後半になるとレンジローバーは高級4WD車としての地位を盤石にし、バブル景気に湧く日本でも高い人気を誇りました。当時の価格は800万円代からとかなり高額ながら、セレブや芸能人がこぞって買い求めたほどです。
現行モデルのレンジローバーは4代目にあたり、今も世界中の富裕層から愛されています。
●ジープ「ワゴニア」
前出のランドローバーと同じく、SUVに特化したブランドとしてアメリカのジープがあります。かつてジープというと軍用車に端を発する「ラングラー」のイメージが色濃かったですが、高級感のあるモデルも存在。
それがピックアップトラックのシャシをベースに、洗練されたステーションワゴンタイプのボディが架装されたジープ「ワゴニア」です。現在も人気が高いフルサイズSUVの先駆け的な存在といえるでしょう。
初代ワゴニアは1963年にカイザー・ジープ社から発売。以降、ジープの製造権がAMC、クライスラーとなる間も、ワゴニアおよび、上級モデルの「グランドワゴニア」は、1991年まで生産が続きました。
なかでもクラシカルなデザインの初代ワゴニアは今も高い人気を誇っており、アメリカ本国だけでなく日本でもファンが存在します。
外観は荘厳な印象ですがボディサイドの木目調デコレーションが最大の特徴で、木製の幌馬車をイメージさせまず。
その後、グランドワゴニアの名前は1993年モデルとして1年だけ復活。当時の「グランドチェロキー」の最上級グレードとして設定され、ボディサイドにはしっかり木目調のデコレーションが施されました。
そして、2020年9月3日に新型ワゴニアの発表があり、2021年3月に復活を果たしました。
●トヨタ「ランドクルーザー 80」
トヨタ「ランドクルーザー」は日本が誇るクロカン車です。悪路走破性と信頼性の高さから、今も世界中で高い人気を誇っています。
なかでも現行モデルで最上級クラスに位置する200系は、悪路で真価を発揮する高級SUVという不動の地位を獲得。
このランドクルーザー200系の先祖にあたるのが80系で、1990年代初頭のRVブームの頃に一躍人気車となっていました。
1989年に発売されたランドクルーザー 80系は、5ドアのステーションワゴンタイプのボディで、3列シートの乗用モデルと、2列シートの商用モデルをラインナップ。
搭載されたエンジンは幅広くニーズに対応し、4リッターと4.5リッター直列6気筒ガソリンエンジンと、4.2リッター直列6気筒ディーゼルを設定していました。
トランスミッションは4速ATもしくは5速MTが組み合わされ、駆動方式はフルタイム4WDを採用。当時はまだ駆動系制御の電子化が進んでおらず、ランドクルーザー 80は悪路でドライバーの腕が頼りだった最後のモデルといえます。
ランドクルーザー 80は高級感もある洗練されたデザインで、クロカン車としての実力も高かったことから、北米ではレクサス初代「LX」として販売され、国産高級SUVの草分け的存在でした。
■軍用車をルーツに持つラグジュアリーSUVとは?
●メルセデス・ベンツ「Gクラス」
メルセデス・ベンツは、1903年に4輪駆動(全輪駆動)システムを世界で初めて開発し、1907年に4WD乗用車の開発に成功。4WD車についてはどこよりも長い歴史があります。
そして、1979年に登場した「メルセデス・ゲレンデヴァーゲン」は、軍事同盟であるNATO北大西洋条約機構の公式採用を認定した段階で付与される「制式名称」を持つ軍用車両として開発されました。
1981年にドイツで民生用としても販売が開始され、ドイツ語でオフロードカーを意味する「ゲレンデヴァーゲン」の頭文字「G」から「Gクラス」と呼称されるようになります。
基本的な構造を変えずに生産が続いて年を追うごとに高級化が進み、現在では本格的4WDでありながら高級車のGクラスは世界中のセレブを魅了する存在です。
なお、現行モデルは2018年に登場した第2世代といえる大幅改良モデルで乗り心地や直進安定性などがかなり向上しましたが、第1世代の最終モデルは本物のゲレンデヴァーゲンであり、悪路走破性を重視しているなどかなり辛口なドライブフィールが残っていました。
●ランボルギーニ「LM002」
現在、ランボルギーニの販売に多大な貢献をしているのが、スーパーSUVというべき「ウルス」です。このウルスは同社としては2車種目のSUVで1980年代には初のSUVを販売しており、それが「LM002」です。
ランボルギーニは1977年にリアミッドシップのアメリカ軍向け高機動車「Cheetah(チーター)」のプロトタイプを発表。1981年にはチーターを民生用にモディファイした「LM001」が試作されました。
そして、1982年には4.8リッターV型12気筒エンジンを、アルミとFRPでつくられたボディのフロントに搭載した「LM002」を初の市販オフロードカーとして発表。
1986年から販売を開始されると、フラッグシップスーパーカーの「カウンタック」用の5.2リッターV型12気筒エンジンを、過酷な環境下でも使用できるように改良して搭載されました。
外観は軍用車のチーターのイメージを踏襲していますが、エンジンを搭載した関係からフロント部分のデザインは大きく変わり、迫力のあるフロントフェイスに仕立てられています。
駆動方式はフルタイム4WDを採用して悪路走破性の高さだけでなく、最高速度210km/h、0-100km/h加速7.8秒と、当時のオフロードカーとしては驚異的な走行性能を発揮。
内装はオールレザーとされオーダー次第でさまざまな装備を追加できるなど、まさにLM002はプレミアムSUVの先駆け的存在でした。
その後、1993年に生産を終了し、2018年に発売されたウルスによってランボルギーニのSUVは復活を遂げたということです。
※ ※ ※
SUV人気は留まることを知らず、世界中のメーカーから次々に新型車が発表・発売されています。
さらに、2021年4月に開催された「上海モーターショー」では電動化したSUVも数多く出展され、すでに次のフェーズに移行したといえるでしょう。
もはやブームというよりも定番車種となったSUVは、まだまだ快進撃は続きそうな勢いです。
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