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【現場を取材】トヨタ全車種併売から1年 ディーラーどう変化? 成果と課題

掲載 更新 16
【現場を取材】トヨタ全車種併売から1年 ディーラーどう変化? 成果と課題

顧客の認識が追いついてきた

text:Satoru Uno(宇野智)

【画像】トヨタらしさ満載「GRシリーズ」【86とヤリスを見る】 全227枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

2020年5月に全国のトヨタディーラーが全車種併売を開始してからはや1年。

東京地区ではその1年早い2019年4月から統合がはじまった。トヨタディーラー統合のニュースは注目され、さまざまな議論が巻き上がったが、今はどうか?

はたして成功なのか、失敗なのか?

毎月発表される新車販売台数の数字では、トヨタ車の販売は非常に好調だ。魅力ある新型車を続々と投入したおかげではあるが、販売ディーラーサイドでは問題はないのだろうか?

今回、東京都にトヨタディーラーを198店舗、レクサスディーラーを24店舗展開する、全国でも最大級の規模を誇る「トヨタモビリティ東京株式会社」の広報担当、八木馨毅氏に現在の状況と変化について詳しく話しをうかがうことができたのでレポートする。

トヨタモビリティ東京は、コロナ禍においても売上は堅調だという。

その背景に、新型コロナ感染拡大防止の観点からマイカーが見直され、新型車の投入が後押しする格好となった。また、新車だけなく中古車販売も好調だとも語った。

気になるのは、統合されたトヨタディーラー同士での競合だ。

この点について八木氏は「ユーザーに、トヨタのディーラーは1つにまとまったという認識が浸透してきた。このため、トヨタディーラー間での競合はほぼなくなってきた」と回答した。

統合前は、たとえば、ディーラーが異なるノアとヴォクシーの両方の見積もりを取る、いわゆる「持ち回り」と呼ばれるユーザー動向がなくなったようだ。

トヨタモビリティ東京の全車種併売化は、それまで4つあった販売チャネルごとの販売会社を1社にまとめた統合の形である。

統合後も至近距離で営業しているワケは?

ディーラー同士での競合については納得がいったが、至近距離にある店舗が気になる。

統合前のトヨタディーラーは、チャネルが異なる店舗を目と鼻の先に展開させることが珍しくない。隣り同士に建っていることもある。隣接ないしは至近距離にあるディーラーは、統合時に1店舗にまとめたほうがムダがないと考えるのは普通のことである。

なぜ統合しなかったか、その理由を訊いてみた。

その回答は、「顧客管理システムが別々のままだったから。現在、システム統合を進めている」とのことだった。

なるほど、それなら合点がいく。今後、店舗に統廃合を進めていくのか、の問いについては「未定」との回答であったが、筆者が「順当に考えれば、システム統合後は店舗の統合も進むでしょうね」と水を向けると、ノーコメントながら真っ向から否定する雰囲気は感じられなかった。

おそらく、公式に回答ができる状況ではないが、その方向性は示されているのだろう。

筆者の老婆心ではあるが、ディーラーの営業マンの動向が気になったので訊いてみた。

統合前に比べて、取扱車種が単純計算で4倍となるため、営業マンの勉強量も4倍となり、負担も増える。

豊富な商品知識が取扱車種増加によって希薄化され、営業成績の下がる営業マンが増加するのではないかという心配をしていた。

しかし、これについては、DXを使用した営業ツールの活用で解消しているとのこと。

これはeラーニングのような方式で、全車種の商品知識を蓄えることができることと、営業上のナレッジの共有も加わり全体的な営業スキルの向上につながった、という。

また、オンライン会議システムを使用するなど、コロナ禍が仕事の効率化へつながり、さらなる販売力強化につながったとも語っていた。

コロナ禍も味方? 経営面では好影響

さらに、統合後は経営面でも好影響を及ぼしたようだ。

それまでの4社がそれぞれ保有していた経営資源が1つにまとまり一元管理することで、より効率的な経営が推進できるようになったという。

その実例として、中古車販売ディーラーだった敷地にレクサスディーラーを新規オープンさせたことを挙げた。

さかのぼれば、豊田章男社長が全車種併売を掲げたのは2018年11月のことだった。

当初は2022~25年をメドとしていたが、2019年6月には2020年4月に前倒しと修正した。この決断は、コロナ禍の来襲が一切予想できなかったことを考慮しても、英断だったのではなかろうか。

トヨタとしては、コロナ禍がさらに追い風となった格好だ。

敢えて東京で先行統合 問題点や課題は?

順風満帆と見て取れる、トヨタモビリティ東京だが、問題点や課題はないのか?

八木氏は、基幹システムの統合、一元化を1番目に挙げ、続いて旧販売チャネルごとに残る、異なるオペレーションの統一と、店舗完結型営業を可能にする店舗ファシリティの統一を挙げた。

具体的な問題点は語られなかったが、元々は違う4つの会社が1つにまとまるだけでも、さまざまなところに不協和音が発生することぐらいは、当事者でなくても想像はできる。

トヨタモビリティ東京が他地域に比べて1年早く統合された理由がわかるような気もする。

店舗数の多い東京で先に実施し、浮き彫りになった問題点とその解決をナレッジとして他地域に展開すれば、全国全車種併売化の強力な推進力となろう。

今後の展望はトヨタらしさが?

最後に、トヨタモビリティ東京の今後の展望をうかがった。

いの一番に挙げたのは、モビリティ社会への変革に向けた取り組みを加速させることだった。

社名に「モビリティ」が含まれるのは、単に車の販売だけでなく、多角的なモビリティを地域社会に提供する企業であるという狙いがある。

また、SDGs達成への取り組みの強化を推進するとのこと。

さらに、現状の課題となっているシステム統合を2~3年以内に展開し、社員全員が働きやすい環境をつくりたいとも語った。

インタビューの最後に「社員全員が」と発言されたのが、いかにもトヨタらしいと感じたところだ。顧客だけに目を向けるのではなく、一緒に働くファミリーも大切にしているのだ。

新車販売で快進撃を続けるトヨタ。商品力と販売力の見事な融合が、その実績を支えていたのだった。現時点、全車種併売化は成功といえよう。

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みんなのコメント

16件
  • 4チャネル条件は同じになるが、これまで専売だったカローラシリーズ、パッソ、ノア、プロボックス、タウンエースが併売になってもクラウン、ランクル、プラド、ハイラックス、ダイナ、ハリアー、アルファード、ハイエース、ヤリス、ヤリスクロス、VOXYを正規で扱えるようになったカローラ店が一番良かったと思う。

    トヨタ店はランクル、プラド、ハイラックス。
    ペット店はハリアー、アルファード、ハイエース。
    そしてネッツはヤリスにVOXY,さらにヤリスクロスを専売できないのは大きいと思う。
  • トヨタモビリティー東京はトヨタ自動車100%
    出資です。トヨタ自動車の販売店の記事ですから
    全国販売店の状況を書いて欲しいのですが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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