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トヨタ初代「GRヤリス」オーナーには刺激が強すぎる! マイチェンではなくて「進化型」と呼ぶにふさわしい完成度のヒミツとは?

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トヨタ初代「GRヤリス」オーナーには刺激が強すぎる! マイチェンではなくて「進化型」と呼ぶにふさわしい完成度のヒミツとは?

モータースポーツ直系の開発が行われている

2020年の夏に登場したトヨタ「GRヤリス」がマイナーチェンジを行なう。トヨタではそれをマイナーチェンジとはうたわず、あえて「進化型」と表明。デビュー以来、スーパー耐久に参戦したほか、全日本ラリー、さらにはこのクルマをベースにしたWRCまで、ありとあらゆるカテゴリーで鍛え上げて見えてきたノウハウが、いま市販車に舞い降りてきたのだ。すなわち、これは単なるマイナーチェンジじゃない。モータースポーツ直系の自動車開発をいま目の当たりにしているのだ。今回はそのプロトタイプを袖ヶ浦フォレストレースウェイで試す。

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新開発8速ATは世界トップレベルの変速速度を実現

のっけからかなりハードルが上がり気味だが、進化型GRヤリスのポイントはマニアックなものばかりじゃない。その最たるものが2023年のスーパー耐久もてぎラウンドで走ったものがベースとなる新開発8速ATだ。Gazoo Racing Direct Automatic Transmission(以下GR-DAT)は、スポーツ走行を多くの人に楽しんでもらおうという想いが込められ、単なるイージードライブではなく、プロドライバーと同じ感覚で走れるように、ドライバーの意思を読み取るものに仕上げたという。

これまでは速度や減速Gによるシフト制御としていたが、ブレーキの液圧変化やアクセルコントロールを読んでシフトを制御。もちろん、パドルによる操作も可能となるが、その場合もギアをしっかりとホールドし、勝手にシフトアップが行なわれないようにしている。さらに高応答リニアソレノイド、変速用クラッチに高耐熱湿式摩擦剤を採用したほか、ギア比のクロスレシオ化、ソフトウエアの改良により、世界トップレベルの変速速度を実現しているようだ。

ダッシュボードやシートポジションなどが一新された

もうひとつの進化のポイントはコクピットだ。ダッシュボードまわりを刷新し、まるで異なるクルマに変化したかに感じられる仕上がりは、プロドライバーの意見に耳を傾けて作り上げてきたものだという。操作パネルとディスプレイをドライバー側へ15度傾けて設置。ドアに備わるパワーウインドウのスイッチまわりは、フルハーネスを締め上げていても操作できるように手前へと迫り上がるようにセットされている。また、助手席側の小物置きは、じつは追加メーターを置けるようなサイズに仕上げるなど、今後の競技のことまで見据えた作り。さらに、メーターは12.3インチのフルカラーTFTメーターを採用し、視認性や警告などがわかりやすく表示されている。センタークラスター上端を50mm下げ、さらにルームミラーを上に引き上げたことで、前方左側の視認性も向上している。

これだけでも十分だと思わせる内容だが、さらにドライビングポジションを25mmも下げ、それに合わせたステアリングのテレスコ&チルトの量も変更したところが凄い。結果として事実上のマイナーチェンジであるにも関わらず、衝突試験をやり直しているというから驚きだ。

さらに細かいところで言えば、ATセレクターはMTと同様の位置にくるように75mm(GRヤリスRS CVT仕様比)も上昇させている。また、RC(競技ベースモデル)は、シフトレバーをドライバー側のシフトレバー脇に備える(オプション)など、これまでのトヨタでは見たことのなかったトライをしているところも興味深い。これなら油圧サイドブレーキいらずか!?

最高出力32ps/最大トルク30Nmアップした

進化ポイントはまだまだ終わらない。続くはエンジンだ。現行の最高出力272ps/6500rpm、最大トルク370Nm(37.7kgf-m)/3000~4600rpmから、進化型は最高出力304ps/6500rpm、最大トルク400Nm(40.8kgf-m)/3250~4600rpmへ。サーキットモードではアンチラグも作動させ、レスポンス向上も行なっているという。

ちなみにこのサーキットモードではスピードリミッターの解除やクーリングファンの出力最大化なども行なう。これに合わせるかのようにフロントバンパー開口部は広げており、ドライバー側にはサブラジエター、ATモデルは助手席側にATFクーラーを搭載。排気まわりも大型に変更となったため、リアバンパーも変更となり、バックフォグは上へと移設されている。

サスペンションやボディに対しても変更内容は多い。フロントのアッパーサポートは1点締結から3点締結へ。スポット打点は開口部などを中心に10%アップ。構造用接着剤の更なる投入も行なった。また、電動パワーステアリングをさらにリニアな特性へ。ショックやスプリング、そしてフロントスタビライザーも変更されている。

加えて前後のトルク配分を可変する4WDモードセレクトスイッチの内容も改められた。現行型はNORMALが60:40、SPORTが30:70、TRACKが50:50。進化型はNORMALが60:40、GRAVELが53:47、TRACKが60:40~30:70までの可変が盛り込まれた。

進化することで誰にでも扱いやすくなった

こうして大幅進化を遂げたGRヤリスはどんな走りを展開するのか? まずは旧型のフィーリングチェックをした後に、いよいよ進化型を試すことになった。試乗当日はあいにくのウエット。けれども、GRヤリスならそんなシーンでこそ威力を発揮しそうだから普段なら遠慮願いたいウエット路面も楽しみだ。

低く構えたドライビングポジションは明らかにスポーツカーテイスト。ラリーだけを意識したアップライトなポジションから生まれ変わったことは、サーキット派にはありがたいだろう。TFTメーターの視認性も抜群だし、何より気分が盛り上がってくる。これならピットアウトから全開だ。そこで感じたことは、とにかくピックアップ良く加速を続けることだった。

パワーやトルクのアップはこれまで十分に速いと感じていた現行型が物足りなくなるほどである。まるで良くできたNAエンジンのように、どの領域からもシュンシュンと吹け上がる新たなユニットはなかなか爽快だ。これなら車両が暴れたとしてもコントロールすることも容易いだろう。

ダイレクト感が増してドライバー意図を汲んでくれる

まずはGRAVELモードでコーナーリングへ向けてステアしていくと、安定感だけでなく質感もかなり増していることが感じられる。現行型はフロントのロールスピードが早く、そこでのステアリングインフォメーションも希薄だったが、進化型はわずかにステアした瞬間から確かな手応えが感じられ、ゆっくりとフロントがロールして行く。その過程がわかりやすく、リアの安定感も高い傾向にあるので、滑りやすい路面でも安心感は高い。旋回ブレーキで意図的にリアを発散させた場合であっても、リアの滑り出しがゆっくりで穏やかだ。現行型で同じことをした場合、リアの流れ出しがシャープでちょっと難しいところがあった。それを考えるとこの進化は誰にでも扱いやすくなったと喜べるかもしれない。

また、ボディ剛性が向上したせいか、乗り心地もややマイルドに感じるところもある。最終的にはストリートで試さなければ結論は出せないが、おそらく現行型で感じていたリアの突き上げはかなり改善されているのではないだろうか? ただ、ターンアウトではやや安定方向すぎるようにも感じる。そのあたりは現行型のほうがコンパクトに旋回している感覚だ。進化型はコーナーアプローチでしっかりと向きを変え、真っ直ぐ脱出するような走りが求められる。

けれども、そんなことを感じた時のためのTRACKモードが良い仕事をしてくれる。トルク配分を可変としたことで、コーナー脱出時にはアクセルで曲げてくれるお助け感をより感じられるし、一方でコーナー進入時にもスルリと旋回してくれる。たまにちょっとお節介すぎてスライドしすぎてしまうこともあったが、大半のドライバーはこの動きは助かるのではないだろうか。

GR-DATのシフトアップの早さに驚かされる

続いて試乗したATモデルは驚きの連続だ。駆動が途切れないために加速はMTよりも速そうだし、何よりシフトアップがとにかく素早い。クロスレシオ化されたことで小気味よいステップが繰り返される様は、まるでクイックシフターが入ったスポーツバイクか、極端に言えばドグミッションでも積んだかのような感覚がある。上のギアに繋いだ瞬間に、あえて出したというカツンと押し出される感覚がこれまたたまらない。

Dレンジであってもフル制動を行えばシッカリとギアがダウンされていくし、スライドコントロール中にアクセルワークをしても、シフトアップされることもない。パドルシフトの応答の良さもある。これはまさにドライバーの意志を汲んでくれるシステムだ。車両重量は20kgほど重くなるようだが、そんなネガは消えてしまうほどの楽しさだ。それを特に感じたのが、最後に走ったダート走行だった。

MTではサイドターンをする場合、シフトダウンをして、クラッチを切ってという複雑な動作が迫られるが、ATでは涼しい顔をしてサイドブレーキを引けばよいだけ。さらに、ステアリングやペダル操作に集中できる環境が整うことは、忙しくなりがちなダート走行においてかなり有難いと思えた。これならラリーデビューもできちゃうかも、なんて思える懐の深さがある。ATモデルはモータースポーツの裾野を広げるアイテムとしても大いに役立つことだろうし、1台のクルマを家族と使いたいと考える新たなるユーザー層の発掘にも役立つに違いない。

こうした進化型GRヤリスの一連の流れは、まるで鮭の母川回帰だ。競技という外洋で揉まれに揉まてれ大きくなった後に、新たな命を我々に授けてくれたかのようだ。たった3年半でここまで生まれ変わったのは夢のようでもある。果たしてこの進化型がまた荒波に向かった後に何が見えてくるのか? きっとまだまだ終わらない第2章がいまから楽しみだ。

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