最高出力830psでレブリミットは9500rpm
執筆:Matt Prior(マット・プライヤー)
<span>【画像】812 コンペティツィオーネ ベースのスーパーファスト 競合モデルと比較 全133枚</span>
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
特別なフェラーリが登場した。現行モデルのなかで、欲しいと強く思わせる新モデルが。
それこそ今回試乗した、812 コンペティツィオーネ。ポルシェやマクラーレンが与えるGT3やLTという略語ではなく、歴代のフェラーリらしい名前だ。先輩に当たるモデルとしては、F12 tdfや599 GTOなどが挙げられるだろう。
812 コンペティツィオーネのベースは、ご存知812 スーパーファスト。標準で800psを繰り出す6.5Lの自然吸気V型12気筒エンジンは、コンペティツィオーネという呼び名にふさわしく、更なるチューニングを受けている。
コンロッドはチタン製に。ピストンも新しく、クランクシャフトは3%軽量化された。高い回転数とアグレッシブなカムに最適化させるため、カムシャフトとバルブステムの間のスライディング・フォロワーを採用するヘッドも、新設計となっている。
その結果、V型12気筒のレブリミットは9500rpmまで上昇。最高出力は30ps増強され、830psを獲得している。
2015年にF12 ベルリネッタをベースとしたF12 tdfが発表された際、フェラーリのエンジニアは大排気量V型12気筒の開発には、さらにもう1世代の余地があると話していた。その伸びしろで生まれたのが、この812 コンペティツィオーネのユニットだ。
環境規制は厳しくなる一方。だが、さらにもう1段階、この先があるかもしれない。
F12 tdfのアクセルレスポンスは低回転域でも過敏で、攻撃的過ぎたことを覚えている。顧客には望まれるレスポンスだと、当時のフェラーリは考えていたのだろう。
高度な後輪操舵システムと空力ボディ
重たいV12エンジンをフロントに搭載した、超レスポンシブなクルマは運転が難しい。F12 tdfでは巨大なタイヤをフロントに与え、手懐けられるように思案されていたが、充分ではなかった。
812 コンペティツィオーネでは、より運転しやすいクルマを目指したと、フェラーリは話している。それでもフロントタイヤの幅は275と、極太だ。
バーチャル・ショートホイールベースと呼ばれる、フェラーリ第3世代の後輪操舵システムも搭載する。安定性と俊敏性を、両立させるために。
後輪操舵システムは、高速域ではフロントタイヤと同じ向きにリアタイヤの角度を制御し、安定性を高めるのが一般的。反対に低速域ではフロントタイヤと逆の向きに角度を付け、機敏な身のこなしを得る。
だが、フェラーリの第3世代は違う。リアタイヤ左右で、個別に角度を変えられる。コーナー侵入のブレーキング時は、トー角を調整するようにリアタイヤが動き安定性を高めつつ、その後は旋回性を高めるように制御されるという。
写真のとおり、エアロダイナミクスの向上にも抜かりない。ボンネットに追加された横方向の黒い帯は、フロントセクションのボリュームを短く感じさせる効果がある。当時に、エンジンルームから熱い空気を排出する機能も備わる。
フロントグリルは大型化。ラジエーターとカーボンセラミック・ブレーキへ、より多くの空気を送り込む。
エキサイティングでも、角が取れた印象
アンダーボディはフラットで、812 スーパーファストには備わる、ホイールアーチ内の気流を調整するフィンがなくなった。多量の空気がボディ底面を高速で流れ、巨大なリアのディフューザーへ導かれるように。
チタン製のエグゾーストは、リア・ディフューザーを避けてボディ両端から顔を出す。排気ガスの微粒子を取り除くガソリン・パティキュレート・フィルターが装備され、消音器部分が不要になったことで可能になったレイアウトだ。
リアデッキにはカーボンファイバー製のフィンが並び、ボディ幅いっぱいの巨大なリアスポイラーへ向けて、気流を整える。ボディと同色に塗られたデッキ部分は、ボディ後半を長く見せる効果もある。
フロントに大きなV12エンジンを載せた812 コンペティツィオーネだが、ミドシップのような雰囲気も湛えている。なんとも勇ましい。
今回筆者が試乗を許されたのは、フェラーリのフィオラノ・サーキット内のみ。F12 tdfで走った記憶が蘇る。830psを開放することが難しい、公道での走行は叶わなかった。
812 コンペティツィオーネは、むやみにドライバーを怖がらせない。レブリミットは9500rpmだから、極めてエキサイティングだが、より角が取れた印象がある。近づきやすい。
もちろん極めて機敏。極太のフロントタイヤと、アクティブ・リアステアのおかげで、1700kgほどと予想される車重を感じさせない。乾燥重量は1487kgで、812 スーパーファストより38kg軽い。
特別な最新のフェラーリは走らせても極上
ステアリングは、現代のフェラーリの特色といえる。軽く正確で、クイックだ。ブレーキペダルに力を入れたままコーナーへ侵入しても、シャシーは安定。フロントノーズの向きも、狙ったとおり。
高速コーナーでパワーを掛けても、フロントタイヤの反応は不変。バランスされたコーナリングへ、自然と落ち着くことができる。速度域を問わず信頼感が高く、コミュニケーション力が豊かだ。
ポルシェ911 GT3や、ミドシップのF8 トリブートほど、高バランスで自由度が高いわけではない。それでも、830psの最高出力とフロントタイヤのサイズを考えれば、充分に扱いやすい。
インテリアは、カーボンファイバーが各所に与えられているが、基本的な構造は812 スーパーファストと同じ。膨大なオプションリストから、自分好みに仕立てられる。
さて、812 コンペティツィオーネの英国価格は、44万6970ポンド(約6928万円)から。オプションレスで。
カーボン製ホイールは、1万7760ポンド(約275万円)で、車内のカーボン製ドアハンドルは2400ポンド(約37万円)。ローンチ・シルバーとイエロー・ストライプの塗装でボディを仕上げるには、2万160ポンド(約312万円)が必要になる。
思わず唸ってしまう金額だが、心配ご無用。999台の予定生産台数は、既にフェラーリをこよなく愛するコレクターによって受注済みだという。当面は市場に出てこないだろう。
特別なフェラーリは、大切に保管する価値がある。だが最新の812 コンペティツィオーネは、走らせても極上だった。
フェラーリ812 コンペティツィオーネ(欧州仕様)のスペック
英国価格:44万6970ポンド(約6928万円)
全長:4696mm
全幅:1971mm
全高:1276mm
最高速度:339km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1700kg(予想)
パワートレイン:V型12気筒6496cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:830ps/9250rpm
最大トルク:70.3kg-m/7000rpm
ギアボックス:7速オートマティック
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みんなのコメント
これで830馬力。
中古で4千万~5千万で買える800馬力の812スーパーファストがリーズナブルに感じちゃいます。
あってどっちにしても手が届かない車両ですが。(汗)