7000rpmオーバーで世界が変わる!
フェラーリ328GTBは、心を熱くするリアルスポーツである。328GTは、名車の誉れ高いディーノ206&246GTの後継車として1975年のパリ・サロンに登場した308GTの最終発展モデルだ。デビューは1985年のフランクフルト・ショーで、クローズドルーフ仕様のGTBと、デタッチャブルルーフ仕様のGTSの2タイプが設定されていた。
【20世紀名車ギャラリー】7000rpmオーバーで世界が変わる、1989年式フェラーリ328GTBの肖像
心を熱くする最大のポイントは、エンジンである。308系の3リッターから3.2リッターへと拡大したミッドシップ・マウントのV8DOHC32Vユニットは、9.8の圧縮比とボッシュ製Kジェトロニック燃料噴射システムとの組み合わせにより、270ps/7000rpm、31kgm/5500rpmのパワーを発生する。スペックは従来の308GTクワトロバルボーレと比較し30ps/4.5kgmの増強を実現していた。各部のリファインを通じてボディの軽量化を達成したのもポイントで、公称車重は1263kg(GTB)。これは従来の308系比で60~70kg軽かった。
内外装にも、心が躍る。フロント回りは、当時のフラッグシップモデル、テスタロッサとイメージの統一を図った造形。インテリアはレーシーに改良され、タコメーターは10000rpmまで表示したフルスケール(レッドゾーンは7800rpm)。5速MTは、アルミ製ゲートでしっかりと区切られている。
取材車は欧州仕様。走りはじめると、328GTの熱さはいよいよ明確になった。ドライビングポジションは、ステアリングが寝ていてしかもやや遠いイタリアンスタイル。左下が1速となる5速MTは、エンジンが暖まるまではやや固いシフトフィールを伝える。
オープンロードに持ち込み、右足に力を込める。エンジン回転が5000rpmを超えるあたりから、音色が明らかに揃いはじめ、6000rpmを超えるとパワーが炸裂。エンジンからドライバーに、もっと回せ、もっと回せと強いメッセージが伝わってくる。さらに7000rpmオーバーで世界が変わる。「コーン」とエンジン音が澄みわたるのだ。これほど「回すほどに本領を発揮する」クルマはない。低速域では、マイルドな印象もあった足回りも、高速になるほど安定し、ドライバーの意志にリアルに応えるようになる。ドライバーとクルマが一体化したかのような濃密体験、これこそフェラーリの世界だ。
超高回転&超高速域でドライバーを陶酔させるために、すべてをバランスさせたサラブレッド、それがフェラーリ328GTである。
1989年フェラーリ328GTB主要諸元
モデル=1989年式/フェラーリ328GTB
全長×全幅×全高=4255×1730×1128mm
ホイールベース=2350mm
車重=1263kg
エンジン=3186cc・V8DOHC32V
エンジン最高出力=270ps/7000rpm
エンジン最大トルク=31.0kgm/5500rpm
トランスミッション=5速MT
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
タイヤ&ホイール=フロント:205/55R16/リア:225/50R16+アルミ
駆動方式=MR
乗車定員=2名
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みんなのコメント
とんでもない快音だった
フェラーリ傑作車の一台。
しかも、デザインした当人自身が308GTBを所有していた。
自分の手掛けたクルマに自分が乗る。これぞデザイナー冥利。