■無骨すぎるデザインのモデルを振り返る
クルマのデザインは販売台数にも大きく影響する重要な要素のひとつで、時代によって流行があります。近年はシャープなヘッドライトによって演出される精悍なフロントフェイスや、セダンやSUVではクーペのようなフォルムがトレンドです。
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一方、昭和の頃といえば直線基調の無骨なデザインのモデルが多く、とくに高級車ではメッキパーツを多用して押し出し感を強調するフロントフェイスを採用することが流行っていました。
そこで、ゴツいデザインのクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「ローレル」
1968年に発売された日産初代「ローレル」は、サイズ的に「スカイライン」のポジションながらスポーティ路線ではなく、落ち着いたイメージのセダン、クーペというハイオーナーカーとしてデビューしました。
1972年に発売された2代目は、シャシやパワートレインを4代目スカイラインと共有する兄弟車となり、デザインも共通項がありましたが、スカイラインには設定されなかった2.6リッターエンジンを搭載するなど、独自路線を歩みます。
そして、1977年に登場した3代目では高級車をイメージさせる重厚な外観へ一新。ボディタイプは4ドアセダン、2ドアハードトップに加え、シリーズ初のピラーレス4ドアハードトップを設定しました。
エンジンは2.8リッター直列6気筒を頂点とし、2リッター6気筒、1.8リッター4気筒を搭載。
「セドリック/グロリア」に匹敵するような高級感を演出したことで、日産のハイオーナーカーとして確固たる地位を確立しました。
その後もローレルは代を重ねましたが次第に存在感は薄れていってしまい、2003年に販売を終了し、長い歴史に幕を閉じました。
●トヨタ「クラウン」
1955年に発売された「トヨペット・クラウン」は、誕生の時からトヨタの高級車としてのポジションを担っており、現在まで65年もの長い歴史を刻んできました。
そして、1971年に発売された4代目では、斬新すぎるデザインが仇となって販売が低迷したことから、5代目では重厚でいかにも高級車らしいデザインに一新。
さらに1979年に登場した6代目では、より直線基調で風格のある外観へと変貌を遂げました。
ボディバリエーションは4ドアセダン、2ドア・4ドアハードトップ、ステーションワゴン、バンの5種類が設定され、基本的なコンポーネンツは先代から継承。
エンジンはシリーズ最大となる2.8リッター直列6気筒に、2リッターが2種類、2.2リッターディーゼルを設定し、1980年のマイナーチェンジではトヨタ初の2リッターターボエンジンを搭載しました。
コンセプトは1980年代のクラウンという先進性を強調し、高級車に不可欠な静粛性や乗り心地の良さ、走行安定性などの基本的な性能を向上しつつ、到着推定時刻や平均速度などを演算・記憶する「クルーズコンピュータ」やリアパワーシート、録音可能なオーディオなどの新機構や新装備を採用。
その後、7代目ではスマートな印象となり、8代目以降はトレンドを反映して曲面を多用するデザインとすることで、無骨なイメージは薄れました。
■1960年代のデザインで20年以上も生産されたモデルとは
●三菱「デボネア」
1964年にデビューした三菱の高級セダンの初代「デボネア」は、1960年代のアメリカ車をオマージュしたような、エッジの効いた前後フェンダーに重厚感のあるフロントフェイスが特徴です。
発売当初は2リッター直列6気筒OHVエンジンを搭載し、室内では高い静粛性を実現。また直6エンジンならではの滑らかな加速は、三菱を代表する高級セダンにふさわしいものでした。
しかし、ライバルのクラウンやセドリック/グロリアなどに比べ、高額な車両価格だったことから販売は苦戦を強いられます。
その後、排出ガス規制への対応のために、新世代の2.6リッター直列4気筒エンジンに換装するなど改良されましたが、それ以外は大幅な変更はおこなわれず、1964年当時の基本設計のままデボネアは1986年まで生産が続けられました。
そのため、クラシカルなデザインのデボネアは「走るシーラカンス」と呼ばれ、前時代的なクルマの代表的な存在となります。
しかし、生産を終了した後にクラシカルなデザインが再評価され、中古車の人気が上昇するという現象が起きました。
※ ※ ※
クルマのデザインは昔もいまもプロセスは大きく変わっていませんが、コンピューターを駆使したCGによるシミュレーションなど、ツールの発達は目覚ましいものがあります。
また、金属加工技術や樹脂を多用することで、かつては実現できなかった造形も可能になりました。
しかし、デザインを生み出すのはあくまでも人間の感性であり、いくらツールや加工技術が発達しても、優れたデザインのクルマが誕生するのは、簡単なことではないということでしょう。
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