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スバル WRX STI S206は、AMGやBMW Mを彷彿とさせる感動ものの走りを見せてくれた【10年ひと昔の新車】

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スバル WRX STI S206は、AMGやBMW Mを彷彿とさせる感動ものの走りを見せてくれた【10年ひと昔の新車】

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、スバル WRX STI S206だ。

スバル WRX STI S206(2011年:コンプリートカー)
S206はスバリストにとって待ちわびたモデルなのかもしれない。このクルマはインプレッサWRX STI 4ドアをベースに、富士重工業(編集部註:現SUBARU)のモータースポーツ総括会社であるSTI(スバルテクニカインターナショナル)によって、より走りとデザインを極めるために製作されたコンプリートカー「S」シリーズの最新モデルである。

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試乗車は300台限定の内のさらに100台限定モデル「NBR チャレンジパッケージ」。ルーフはカーボン製で、見た目からもスポーツコンプリートのこだわりを感じる。

レカロ製のドライビングシートは少し強めのサポート感だが、それがこのクルマには合っている。少し重めのクラッチをつなぎ、アクセルを踏み込んで走り始める。ステアリングホイールを切り、6速MTをシフトする。ドライビングの一連の操作のすべてが極低速域からとてもスムーズだ。いわゆる、ショップレベルのチューニングカーでは味わえない、造りのしっかり感とスムーズさは、メーカー直系のコンプリートカーというもの。欧州のAMGにもBMW Mにも通じる感覚だ。

速度を上げていっても、乗り心地に変化がみられない。路面に対してクルマの反応がとてもスムーズだ。突起を乗り越えても振動に角がなく、すぐに納まる。振動の余韻がないからボディへの一瞬の入力だけが記憶に残る。市街地走行では、大きな凹凸や突起ではスポーツ系の足の硬さを感じさせられることもあるが、ほど良いレベルの路面ではとてもスムーズ。ロードノイズも気にならない。

しなやかな走りを狙いビルシュタインを装着
サスペンションには、インプレッサ系コンプリートモデルでは22B以来のビルシュタイン製ダンパーが採用された。その理由としては、やはりしなやかさがあるからだという。

もちろん減衰力は専用にチューニングされ、コイルスプリングも専用のものだ。他にフレキシブルタワーバー、フレキシブルロースティフナー、フレキシブルサポートリアなどが付く。重要なことは、それらの技術とビルシュタインダンパーの組み合わせが絶妙であること。セダンをベースとしたことによる剛性アップと数kgの軽量化もしなやかな減衰の実現に貢献しているようだ。

ウエットコンディションのクローズドコースで、かなり速度を高めても、S206驚くほど安定している。まるで路面に吸いついているかのようなオンザレールの走りを見せるのだ。しかも、極低速からこの超高速域までステアリングを切り始めた時にハンドルから伝わるしなやかさは同じ。裏を返せば、ゆっくり走っていてもスポーティな感覚が味わえる。

速度が上がればもうひとつ重要になるのがブレーキ性能。ブレンボ製のフロント6ポッド、リア4ポッドのブレーキシステムには今回ドリルドローターが採用され、ルックスもとてもレーシーになった。

ウエット路面では最初、ちょっと踏み込んだだけで予想以上に効く感じだった。しかし、走り込んでローター温度が上がるに従って、コントロール性の良いタッチで不安なくスピードコントロールができた。冷間時の初期制動は強めで、街乗りでの安全性を重視すればそれも良いが、この部分だけはまだ熟成が必要なように思う。

限界に近い速度域でも高い安定性を維持
エンジンはボールベアリング仕様のツインスクロールターボを採用している。視覚的にはインタークーラーに「S206」のロゴを入れることで専用チューンであることをイメージさせている。

最高出力は320ps、最大トルクは431Nmと、前モデルのR205と変わらないが、ECUの専用チューンや低背圧マフラー等の採用によって、中低速トルクの発生キャラクターを扱いやすさを重視したフラットな方向に設定している。これがS206用EJ20型エンジンの特徴だ。

その結果、コーナリング中に2速で回し切りたいところを3速で行ってもストレスをほとんど感じない。また、アクセルの強弱に対するレスポンスがとても良く、ターボ車とは思えないくらい応答が速い。さらにパワーを上げるのは容易だが、そうするとこの中低速で発生するトルクの扱いやすさを犠牲にしなくてはならず、パワーとトルクがいちばんバランスしているのがこの状態なのだろう。

限界域に近いスポーツドライビングでは、コーナーへの進入がとてもスムーズ。高い速度を維持したままでも安定している。限界を超えれば基本的にアンダーステアとなるが、フロントタイヤのグリップを失う瞬間がわかりやすく、滑り方もジワジワとしたものなので不安感は少ない。

アクセルオンでグリップを失う時はイン側リアのホイールスピンから始まるが、センターデフのコントロールをAUTOにセットしておけばフルロックまでのコントロールがリニアに行われるため、雨の中でも非常に安定したトラクションのかかり方を体験できた。

運転が上手になったように感じるハンドリングは、かなりのレベルで達成されていると言えよう。レースだろうが普通の道だろうが運転しやすくなければならない、という開発者の思いがしっかりと伝わってくるモデルだった。

スバル WRX STI S206 主要諸元


●全長×全幅×全高:4605×1795×1465mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1470kg
●エンジン:対4 DOHCターボ
●総排気量:1994cc
●最高出力:320ps/6400rpm
●最大トルク:44.0kgm/3200-4400rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●JC08モード燃費:未発表
●タイヤサイズ:245/35ZR19
●当時の車両価格(税込):540万7500円<NBR チャレンジパッケージは600万円>

[ アルバム : スバル WRX STI S206 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

5件
  • GVB型WRXがベースだが、この内容でこの価格は非常に値打ちがある。ほぼ同じ価格のアルファードとか、はっきりいって値打ちないね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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