ここ2年ほどの日本車の販売台数を見ると、トヨタ車は全体的に絶好調か実力相応というモデルがほとんどである。
一方、トヨタ以外のモデルには「良いクルマで、きちんとすべきことをしているのに」と感じるにも関わらず、「これしか売れてないの?」というものも少なくない。本稿ではそんなクルマたちの過小評価されている点などを考えてみた。
総勢17モデル! 超激戦SUVカテゴリーに登場予定の国産車たち
文/永田恵一、写真/HONDA、NISSAN、MAZDA
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■日産 スカイライン
2019年にビッグマイナーチェンジされた日産 スカイライン。運転支援システムやスポーツモデルの投入など力を入れているが販売台数は低迷している(写真はスポーツモデルの400R)
日本車でもっとも伝統あるモデルの1台であるスカイラインながら、2013年登場の現行モデルは、スポーツ性に代表されるスカイラインらしさに欠けている点や、日本市場軽視という印象があったのは否めなかった。
そうした点への反省もあったのか、2019年にビッグマイナーチェンジされた現行スカイラインは、3.5L・V6ハイブリッドのみながら世界最先端の運転支援システムとプロパイロット2.0の採用や、自社製3L・V6ツインターボを搭載した標準系とスポーツモデルとなる400Rの設定など、たいぶ日本市場にも配慮したセダンとなった。
しかし、スカイラインの2021年1月~7月までの販売台数は1882台と低迷している。この結果は、セダンというジャンルやスカイラインが400万円以上する高額車な点、ベンツ CクラスやBMW 3シリーズといった500万円級の輸入車に対する魅力度を考えると……といった意見はあるだろう。
それにしてもビッグマイナーチェンジでそれなりの日本市場への対応をおこないながら、これしか売れていないというのはあまりに不相応である。
■ホンダ フィット
2020年に登場した現行型ホンダ フィット。広さを武器にしたコンパクトカーというのがウリだが、クルマには不可欠な『華』の部分に乏しく、売れ行きには繋がっていない
2020年2月に登場した現行型4代目フィットは、過小評価されているクルマの代表だ。
現行フィットはハイブリッドを1モーター(i-DCD)から2モーター(e:HEV)へシステム変更、クロスオーバーの「クロスター」追加といった話題もあったが、「広さを武器にしたファーストカーとしての使用にも対応するコンパクトカー」というコンセプトは不変だ。
それだけにクルマとしての面白みはともかくとして、万能・万人向けなのは確かで、ごく普通にクルマを使う筆者の叔母が「ヤリスが欲しい」と言った際に、現行フィットを勧めたくらいだ。
万能、万人向けな現行フィットながら、登場時の月間販売目標1万台に対し2021年1月から8月までの平均月販台数は約4600台と、目標の半分も売れてない。
その原因にはスポーツモデルの設定がないなど、クルマという商品にほしい「華」がなく、スタイルにクセがあるといったこともあるだろう。
しかし、フィットは現行モデルもキープコンセプトなだけに「そんなに変わらないから、先代モデルからの乗り換えが進んでいない」、「長距離ドライブや5人乗車をしないという人なら、総合的な出費が安く済む軽自動車のN-BOXやN-WGNに流れている」といった事情も小さくないのかもしれない。
■日産 デイズ&ルークス
高度な安全装備と抜群のステアリングフィールを備えた日産 デイズ&ルークス。実力は折り紙付きながら販売台数に結びついていない(写真はルークスと、スポーティモデルのハイウェイスター)
軽ハイトワゴンのデイズは2019年、軽スーパーハイトワゴンのルークスは2020年にそれぞれ現行型2代目モデルに移行しており、どちらも両ジャンルにおいては最新モデルとなる。
軽自動車は差別化が難しいジャンルだが、この2台はもともと高性能な単眼カメラとミリ波レーダーを使った自動ブレーキを発展させた、自車の2台前の先行車の動きもセンシングするインテリジェント FCW(前方衝突予測警報)を、軽自動車ながら装備するなど、高い安全性を備える。
また、ハンドルを切った際にドライバーが感じるステアリングフィールも非常にスムースで、軽自動車では文句なしのナンバー1である。
その割に2021年1月から8月までの販売台数は、デイズが登場の月間販売目標台数8000台に対し月平均約4200台、他社の軽スーパーハイトワゴンは月平均1万台を超えているのに対し、ルークスは約7300台と、実力と販売台数がシンクロしていないとしか言いようがない。
デイズとルークスが実力ほど売れていないのは、軽自動車は「クルマ自体の善し悪しよりも、今までの付き合いや見た目の好みで選ばれることが多い」という、軽自動車市場の習慣のようなものの方が大きな原因なのかもしれない。
■ホンダ ステップワゴン
ホンダ ステップワゴン。ターボエンジンを搭載することにより、動力性能はライバルを圧倒する。しかしフロントデザインの大人しさからか販売台数は伸び悩む(写真はステップワゴンスパーダ)
トヨタ ヴォクシー(2014年登場)、日産 セレナ(2016年登場)、ホンダステップワゴン(2015年登場)というミドルBOX型ミニバンは、現在3台ともモデル末期である。
そのなかで、ヴォクシー/ノア/エスクァイアのガソリン車、セレナのマイルドハイブリッド車が2L・4気筒NAエンジンを搭載するのに対し、ステップワゴンは1.5L・4気筒ターボの搭載により、回転フィールなどのエンジンの質感は2台を圧倒する。
また、ステップワゴンはハイブリッドの動力性能も2Lエンジンを搭載することなどから2台を圧倒。また、ヴォクシー三兄弟に対しては自動ブレーキ&運転支援システムの性能、セレナに対してはハンドリングと乗り心地のバランスで圧倒的に上回っている。
つまりステップワゴンは、2台に対し総合性能が高く、筆者は「この3台から選ぶならステップワゴンしかない」と思っているほどである。
それにも関わらず、ステップワゴンの2021年1~8月までの販売台数は、月平均約3400台と、ヴォクシーの半分近く、セレナの70%程度と、クルマの実力を考えたら気の毒になるくらいだ。
ステップワゴンが販売台数は2台に水を空けられている理由は、初期モデルのフロントマスクがスポーティなスパーダでも大人しすぎ、ミニバンユーザーが好む押し出しに欠けていたことだけだろう。
また、ハイブリッドを追加した2017年のビッグマイナーチェンジで、スパーダのフロントマスクを変更しても販売台数が伸び悩んでいるのは、同時期にホンダ社内でN-BOXのフルモデルチェンジとシビックの日本市場復活があり、販売現場でのステップワゴンに対するケアが手薄になったこともありそうだ。
それだけにステップワゴンには次期モデルで、今までのうっぷんを晴らすような活躍を見せてほしい。
■マツダ CX-3
2015年登場と、コンパクトSUVとしては古参モデルのマツダ CX-3。初期の作りの粗さが尾をひいているのか、まとまりのよい1.5Lガソリン車が追加された現在も売れていない
CX-3は2015年登場と、コンパクトSUVとしては古いモデルである。2020年に1.5Lガソリン車が加わるまでは、スタイリッシュなエクステリアと引き換えにキャビンとラゲッジスペースの狭さ、価格の高さ、乗っていて粗さを感じる点など、「売れないのも仕方ない」と感じるモデルだった。
しかし、追加された1.5Lガソリン車は、運転支援システムの選択に制限はあるものの、中心となる「15Sツーリング」のFF車で199万1000円とリーズナブル。また、乗ってみてもタイヤなどがベーシックな16インチとなることなどが幸いしているのか、まとまりが良い。
こうなると、CX-3はスタイリッシュなエクステリアなどの魅力もより際立ってくるのだが、売れ筋のコンパクトSUVにも関わらず、今年1~8月までの平均月販台数は約800台と、ライバルのヤリスクロス、キックス、ヴェゼルとは桁が違うほど売れていない。
心機一転頑張っているのを考えると、CX-3がここまで売れていないのは可哀そうになる。月1000台程度は売れるようなもうワンパンチがほしいところだ。
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