英国でR34を借り出し、ニュルを目指した!
もうかれこれ20年以上も前のことだ。ニュルブルクリンク24時間レースがまだ「壮大な草レース」としてマニアだけに注目されていた頃の思い出である。BNR34のスカイラインGT-Rがファルケンチームから出場するというので、応援がてら取材に行く企画が持ち上がった。24時間レースとはいえ、ただその取材だけではツマラナイ。何か面白いプランを追加できないか。
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優秀な編集者はいつだって貪欲なもの。それなら英国日産からBNR34を駆り出してドーバーを渡りフランスからドイツを目指そうと言うことになった。確かMスペックの開発が終わった頃で、英国日産にMスペックの足回りに仕上げた広報車両があるという情報を耳にしたからだ。
ドーバートンネルの列車にクルマごと乗り込み、いざフランスへ。そこから一気に宿泊地のコブレンツを目指したのだが、フランスのオートルートで面白いことが起きた。鮮やかなブルーメタリックのBNR34をまずまずの速度で走らせていると、日本でいうところの白バイが追いかけてきた。オートルートの制限速度は130km/hだ。確かにそれ以上で走ってはいたけれど、闇雲に飛ばしていたわけでもない。ちょうど料金所が迫っていて、越えたところで停車を命じられた。スピード違反なのかなぁ、と覚悟してクルマから降りると、若い警官がニコニコしながら拙い英語で話しかけてきた。「わお!これがスカイラインGT-Rか」。
要するに初めてみたGT-Rにコーフンしてたまらず追いかけてきたというわけだった。そういえば前日、パリの凱旋門を“周回”して並走した際にも警官に停められ、叱られると思ったら喜ばれた。彼らは異口同音に「グラントゥーリズモでしか見たことがない!」と叫んだものだ。
ドイツのアウトバーンでは、速度制限のない区間でポルシェ911とバトルした。幸いにもターボではなかったのでラクショーだった。けれどもその時はノーマル仕様のリミッターカットだったので、300km/hオーバーを達成することはできなかった。筆者が国産車で初めてオーバー300km/hを実現したのは、それから数年後、R35GT-Rで同じくアウトバーンを走った時のことだった。
ニュルブルクリンクに到着した際にも愉快な出来事があった。サーキットのどこに駐車すればいいのか分からず、うろうろしているうちに誤ってパドックへのゲートにたどり着いてしまった。パドックの駐車パスなど持っていない。入っていくのはレーシングカーやスタッフのバンばかり。さりとて後戻りもできず、仕方なくゲートに差し掛かってみれば、そのままイケイケと中へ案内された。レーシングカーと間違えられたのだ!
おかげでパドック内をぐるぐるクルマで見物してまわり、ひとしきり挨拶をして、何食わぬ顔で外へ出た。これもまたBNR34がまだ珍しかったからこそのエピソードだろう。
【プロフィール】
西川淳(にしかわじゅん)/奈良県生まれ。クルマを歴史、文化面から技術面まで俯瞰して眺めることを理想とする自動車ライター。大学では精密機械工学部を専攻。輸入車やクラシックカーなど趣味の領域が得意ジャンル。AJAJ会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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