このクルマから実用車のイメージが変わるかもしれない
3代目となる新型フリードの注目度は高い。受注は絶好調。ディーラーにユーザーが殺到しているという。フリードはコンパクトなサイズと十分に広い室内空間をアピールする両側スライドドアモデル。快適性と燃費にもこだわった、すべてに「ちょうどいい」クルマだ。
現代における「世界一価値の高いファミリーカー」を追求した新型ホンダ・フリードが発売
満を持して登場した新型は、AIR(エアー)とCROSSTAR(クロスター)の2シリーズ。エアーは定員6名と7名が選べる3列シート車。タフなギア感を追求したクロスターは、大きな荷室の2列シートと3列シートを設定する。パワーユニットはe:HEVハイブリッドと1.5リッターガソリンの2種で、駆動方式はFFと4WDを用意する。
「“Smile” Just Right Mover(“スマイル”ジャスト・ライトムーバー)」をグランドコンセプトに掲げる3代目をいち早くドライブした。実力は予想以上。その印象をお伝えしよう。
e:HEVハイブリッドは圧倒的に力強くスムーズ。大幅刷新の1.5リッターガソリンも気持ちいい
走り面の最大の変更点は、ハイブリッドが1モーター2クラッチ式のi-DCDから、2モーターe:HEVシステムになった点だ。登場直後に熟成不足を指摘されたi-DCDが、新世代e:HEVに刷新された。e:HEVはヴェゼルなどと同じ1.5リッター直4アトキンソンサイクル(106㎰/127Nm)と2モーター内蔵CVT(122㎰/253Nm)の構成。販売の中心となるe:HEVは、i-DCDよりずっと乗りやすい。e:HEVは低~中速走行時はシリーズ式ハイブリッド。低負荷の高速走行時にはパラレル式になり、必要に応じてエンジンがかかる。発進から80km/h程度まではモーター駆動が主体で、リニアさとスムーズさが際立つ。エンジン主体に移行しても静粛性はそのままで、しかも力強い。
乗り比べた従来型のi-DCDはだいぶ改善が進み、ギクシャクしにくくなっていた。それでも、e:HEVのスムーズさと力強さには遠くおよばない。新型は4WDを大幅に刷新したのもニュース。雪道だけでなく雨天走行時などでも、4WDのメリットが実感できるという。
1.5リッターガソリン(118㎰/142Nm)も、いろいろ進化していることが確認できた。機構的には直噴ではなくポート噴射となるのが特徴で、フィットに対してローレシオ化したCVTが組み合わされるほか、制御においても新しい方向性を取り入れている。
たとえば、ステップアップ/ダウンシウト制御の採用で、全開加速時のフィーリングが人間の感性にあったものになり、下り坂やコーナー進入での減速時の安定性が増大。次の加速に備えてくれる。
加減速時の不快な車体の揺れを抑制する制御の導入もニュースだ。従来はアクセルオフ時に一気にフューエルカットしていたのだが、新型は段階的に行う技術で、車体の揺れはほとんど気にならないほどゆるやかになった。これには大いに感心した。
1.5ℓガソリン車は、非常に扱いやすい乗り味に仕上がっていた。踏み込んだときにはホンダの4気筒エンジンらしい元気なサウンドを聞かせながら爽快に吹き上がり、楽しい。新型はアイドリングストップ機構未搭載。いろいろな意味で見識である。歓迎する。
新型の足回りは適度なゆったり感を追求。リニアなハンドリングと相まって全域で心地いい
新旧を乗り比べ、静粛性が「別物レベル」にあることも実感した。高速周回路での風切り音やタイヤが発する音の車内への侵入が、新型は明らかに小さい。開発関係者が静粛性にはかなり力を入れたと話していたとおりだ。
プラットフォームはいわゆるキャリーオーバー。新型はe:HEVへの対応や衝突安全性能の向上を念頭に、各部が綿密に手当てされ、進化している。要所の剛性向上や剛性バランスの調整など、ボディ剛性の最適化が図られており、その成果を随所に感じる。
乗り心地もほとんどのシチュエーションで新型のほうが快適だ。クルマの動きが落ち着いていて乗りやすい。おそらく足回りへの考え方が変わったのだろう。従来型はキビキビとした軽快な走りを積極的に追求していた。そのためサスペンションはそれなりに引き締まっていて、電動パワーステアリングの操舵力は軽かった。
新型はスムーズさと、適度なゆったり感の実現がテーマだ。多人数を乗せるミニバン&ユーティリティカーにふさわしい乗り味を意識した。その一環として、フロントロワアームブッシュやスタビライザーブッシュを低フリクション化するなどサスペンションを動きやすくしている。剛性を高めたしっかりとした車体と、路面をしなやかに捉える足回りが快適な乗り心地を生み出している。
ステアリングフィールもいい。従来型は中立付近にやや遊びがあり、そこからグンと曲がる感覚があった。新型は、電動パワーステアリングのモーター容量がアップされ微舵からリニアに応答、抵抗感なく滑らかに動く。
操舵に対する動きは穏やかで、レーンチェンジでの挙動は新型のほうが落ち着いていた。正確に動いて揺り返しも小さいので、修正舵要らず。縦方向の動きも横方向の動きも新型はカドがない。バンクを高速で走ったときも、地に足のついた安心感があった。
2列目に乗っても新型は快適。突き上げが小さく、コーナーで身体が左右に揺すられる感覚も小さい。見晴らしのよい視界をはじめ諸々の配慮とあいまって、新型は実に心地よい。
新型の完成度は非常に高い。数値に表れない乗り味の微妙な部分でも、大きく進化している。新型フリードは、走りにおいてもより“ちょうどいい”クルマになっていた。
ホンダ・フリード主要諸元
グレード=e:HEVエアー(FF・6名乗り)
価格=269万7200円
全長×全幅×全高=4310×1695×1755mm
ホイールベース=2740mm
トレッド=前1480/後1485mm
車重=1480kg
エンジン=1496cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
エンジン最高出力=78kW(106ps)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク=127Nm(13.0kg・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力=90kW(123ps)/3500-8000rpm
モーター最大トルク=253Nm(25.8kg・m)/0-3000rpm
WLTCモード燃費=25.4km/リッター(燃料タンク容量42リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路=25.7/27.4/24.0 km/リッター)
サスペンション=前ストラット/後車軸式
ブレーキ=前ベンチレーテッドディスク/後ディスク
タイヤ&ホイール=185/65R15+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=6名
最小回転半径=5.2m
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