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連続ポール獲得も勝利が遠いハータと低迷するグロージャン。苦心するアンドレッティチームの障壁はF1参戦計画か

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連続ポール獲得も勝利が遠いハータと低迷するグロージャン。苦心するアンドレッティチームの障壁はF1参戦計画か

 7月2~3日にアメリカのミド・オハイオ・スポーツカーコースで開催されたNTTインディカー・シリーズ第9戦。予選でポールポジションを獲得したコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)は、決勝レースでその速さを発揮することができず、2度目のピットストップ時にピットレーン速度超過を冒して中団へと沈んでしまった。

 チームメイトのロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)は、予選14番手/決勝13位と1度もトップ争いに絡めずに週末を終えている。強豪であるはずのアンドレッティ・オートスポート、その2大エースとも言えるふたりはいまだ未勝利のままにシーズンを折り返してしまった。勝利を望まれているふたりを襲う不調の原因はどこにあるのだろうか。

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 アンドレッティ・オートスポートは、2023年シーズンのスタートを順調に切った。開幕戦のセント・ピーターズバーグではロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)がポールポジション、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)が予選2番手でフロントローを独占。今年からチーム入りしたシリーズ2年目のカイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポート)も予選5番手と、レギュラードライバーの4人中3人が予選のファイナルに進出した。

 第3戦ロングビーチの予選では、カークウッドがポールを獲得しグロージャンが予選3番手、ハータは7番手となった。決勝レースではカークウッドのインディカーシリーズ初勝利を挙げ、グロージャンが2位となって1-2フィニッシュを達成。ハータも4位に入り、ストリートコースで彼らは強さを発揮していた。

 アンドレッティ・オートスポートとしてみれば、ハータとグロージャンが彼以上の成績を残すことを想定していたのだから、この第3戦ロングビーチでのカークウッドの優勝は、ある意味で期待を上回る成果だった。

 しかし、その後もふたりは勝利を挙げることができず、そうこうしているうちにシーズンは折り返し点の第9戦にまで進んでしまった。グロージャンはアラバマで今シーズン2回目の2位フィニッシュを果たしたが、一方のハータはまだ表彰台に上ることすらできていない。

■2強に遅れを取ってしまったビッグチームの苦悶
 アンドレッティ・オートスポートは、これまで通算71勝と4度のタイトルを獲得し、インディ500では5回の優勝を誇る強豪チームのひとつであることに間違いはない。しかし、最後にチャンピオンを獲得したのは2012年のライアン・ハンター-レイによるもので、10年以上もの間が空いてしまっている状況だ。

 過去3シーズンを振り返ってみても、アンドレッティ・オートスポートの勝利数は5勝。対するライバルのチーム・ペンスキーは過去3シーズンで19勝、またチップ・ガナッシは15勝と2強に水を開けられている。

 こうした不調から脱却するため、アンドレッティ・オートスポートはこのオフにエンジニアリングの強化を実施し、クルーたちはピットストップの練習に励んだ。その成果がストリートコースでのパフォーマンスに早くも現れ、ロードコースでの戦闘力は確かに向上したと言えよう。

 しかしその一方、一時は彼らの強みのひとつでもあったはずのインディアナポリスでのスピードがどこかに消えてしまった。2020年にはマルコ・アンドレッティがポールポジションを獲ったが、今年のアンドレッティ勢は彼を含む5人で挑んだものの、ポールデイのファスト12には誰ひとり進出できず、レースでもアンドレッティのドライバーが優勝争いに加わることはなかった。

 今季のグロージャンの成績は、2度のPPと2回の2位表彰台を獲得しているが、ハータは同じく2度のPPを獲ったもののレースでの最高位は4位にとどまっている。期待の若手であるカークウッドは、1度のPP獲得と1勝という成績を残し、チーム唯一の勝ち星を挙げている。

 ポイントランキングで見ると、ハータが9位(204点)、カークウッドが11位(177点)、グロジャンが12位(167点)となっている。ポイントリーダーであるアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)とは、チームでもっとも高い順位のハータでさえ173点という大差をつけられている状況だ。

■クラッシュ多発で不振のグロージャンに足りないものとは

 若手のカークウッドにポイントランキングで遅れを取っているグロージャン。その理由として挙げられるのは、今季は特に目立ってしまっている決勝レースでのリタイアだろう。

 昨シーズンのリタイアは2回で、さらにそのうちの1回はメカニカルトラブルによるものだった。対する今シーズンは、開幕戦でのトップ争いでのクラッシュに始まり、第2戦テキサスでは上位を争うもゴール目前でクラッシュを喫した。

 続く第3戦ロングビーチ、第4戦アラバマは連続2位フィニッシュを果たしたが、インディアナポリスのロードコースは不発。

 その後のインディ500、デトロイトではまたしてもクラッシュを喫し、ロードアメリカは完走こそしたもののコースオフによって上位フィニッシュの望みを自ら絶った。そしてミド・オハイオでは、ハータがPPを獲得するなかでグロージャンは予選14番手、決勝13位という低迷ぶりだった。

 インディカーに参戦する前から、グロージャンを見舞うアクシデントは少なくなかったのも事実だ。さらに、F1に乗っていたころから精神的な弱さについても指摘されていた。

 そんなグロージャンだが、デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRという小さなチームからインディカーにデビューし、優勝争いに絡む走りを披露した。その結果、2シーズン目にはアンドレッティ・オートスポートに“優勝請負人”として招聘された。

 しかし、2022年の彼はロングビーチとナッシュビルの2位フィニッシュ以外に目立ったパフォーマンスはなかった。今季に向けては、アレクサンダー・ロッシがアロウ・マクラーレンへと移籍し、チームはさらなる結束を目指していたはずだ。

 しかし、ハータは自分を担当するエンジニアと我が道を行くタイプということもあり、4台体制のメリットを活かしきれていないと言える。

■待たれるインディカー初勝利に足りないのは冷静さか
 今のグロージャンは、勝利へのプレッシャーに苛まれ、精神面の安定を欠いているとしか考えられない。度重なるアクシデントは、彼がまさに陥っている負のスパイラルからくるものに他ならないだろう。

 “フェニックス”というニックネームに見合う逆境(後方グリッド)からの凄まじい追い上げ……というものも見られていない。まさか、すでに諦めの境地に入っているわけでもないだろうが……。

 2023年開幕戦セントピーターズバーグは、グロージャンにとって2011年のGP2以来となる勝ち星に大きく近づいたレースだった。

 だが、トップを争うスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)にターン5で仕掛けたタイミング、そしてアウトサイドから抜きに行くという判断は、残念ながら正しいものではなかった。

 インサイドで粘ったマクラフランは、縁石に乗ってバランスを崩してグロージャンともどもタイヤバリアに突っ込みレースを終えた。結果論でいえば、次のターン6へのラインを交錯させて抜くか、バックストレートエンドのターン10で勝負を仕掛けるべきだった。

 優勝から長らく離れてしまっているグロージャンは、焦りから勝負どころを見誤ってしまったのだろうか。あの開幕戦で勝ち星を挙げられていたならば、グロージャンのインディーカーでのキャリアは大きく違っていたものになっていただろう。次戦トロントでは、開幕からパフォーマンスの良いストリートで今度こそ待望の初勝利を掴みたいところだ。

■ハータの天性の速さを勝利に繋げるための一手

 一方のハータは、フルシーズン参戦5年目を迎えているが、安定性の確保がいまだに果たせていない。ハードなプライマリー・タイヤでは速いが、ソフトのオルタネート・タイヤではデグラデーションの進行が速い、といったレースになりがちなのは、異能と評されるドライビングにあるのではないだろうか。

 持ち前の優れた感覚に依拠した走りにおいては、マシンが常に高い限界点でコントロールされ、タイヤに大きく負担をかけてしまうのではないだろうか。また、集中力がたった一瞬でも途切れた時にはミスに直結してしまうという欠点もある。

 開幕戦では早過ぎる1回目のピットインによって順位を落とし、セカンドスティントではウィル・パワー(チーム・ペンスキー)と争って彼の強引なドライビングの被害者となった。

 ロードアメリカでは、PPからスタートしレースの大半をリードしたが、2回目のピットストップをライバル勢より1周早く行う作戦に足を引っ張られ、5位でのフィニッシュが精いっぱいだった。

「自分たちのマシンが最速だった。余力を残した状態でトップを走っていた」とレース後にハータは語っていたが、2回目のピットストップに早く入らざるを得なかったのは、セカンドスティントでの彼の燃費セーブが不十分だったからだ。

 これはドライバーのミスというより、チームが無線で燃料セーブの指示を出し続けなかったことがこのレースの敗因だろう。さらに、ハータは最終スティントの序盤にプッシュトゥパスを多用しており、チームとして戦い方がかなりちぐはぐになってもいた。

 ミド・オハイオでもハータは2戦連続となるPPを獲得し、決勝序盤をリードした。しかし、ここでも彼は勝てなかった。

 プライマリー・タイヤを使ったアタックでのPP奪取という予選の戦い方では、ライバル勢の鼻を明かしたアンドレッティとハータだったが、レースでは逆にプライマリータイヤでのスタートをチョイスしたアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)に勝利をさらわれた。

 そして、自らはピットスピード違反を冒して11位フィニッシュ。勝利を狙えたレースとしては、惨憺たる結果しか得られなかった。

■安定した走りを見せるライバルらに勝つためには
 第2戦テキサスは予選10番手/決勝7位、続く第3戦ロングビーチは予選7番手から4位フィニッシュとハータは手堅くまとめていた。

 第4戦アラバマは予選決勝とも14位、インディアナポリスのロードコースで行われた第5戦では予選14番手/決勝9位と振るわず、波に乗れず。

 次に来たシリーズで最も重要なインディ500では、予選21番手と沈んだものの、決勝レースでは9位フィニッシュと粘りを見せた。

 まだ23歳の彼の頭には、安定感の獲得に向けた意識があることは認められる。現在のインディーカーシリーズには、パロウやパト・オワード(アロウ・マクラーレン)といった若くても確かな安定感を兼ね備えているドライバーがいる。

 彼らのドライバーとしての完成度は、ハータよりも明確に上だ。また、参戦2年目のクリスチャン・ルンガー(レイホール・レターマン・ラニガン)にもスピードとスマートさは備わっているように見て取れる。今後もそうした若いドライバーたちが次々と参戦してくるだろう。

 ハータが持つ生来のスピードがトップレベルにあることは間違いない。彼はあとひとつの要素として少しの安定感を手にしただけで、タイトルへ突っ走ることさえ可能だろう。

 ただし、そのためには彼を成長させる力を持ったチームスタッフ、不利をもカバーするチームの作戦力、確実な仕事をするクルーたちが必要だ。

■低迷の発端はF1進出へ向けたチーム改造計画か
 F1進出に向けて巨大ファクトリーの建設に取り掛かり、従業員の大幅増員も進めているアンドレッティ・グローバル、そして、その一部であるアンドレッティ・オートスポート。

 かつてない転換点を迎えている彼らは、メガチームとして成功するために新しい組織の構築を迫られており、現場でのパフォーマンス向上と同時に進めねばならない新たなチーム作りの難しさに直面している。

 F1進出に勢いをつけるためにも、彼らは自らのルーツであるインディカーシリーズで確固たる成績を残したいはずだ。しかし、現場の補強はまだ不十分で、アロウ・マクラーレンという新たなライバルにナンバー3の座を脅かされ、さらにインディライツでも新興のHMDモータースポーツに主導権を奪われてしまっている。

 チームがインディカーで再び成功するためには、アンドレッティ・オートスポートはより具体的かつ明確な目標を設定し、多くの優れた人員を主にマネジメント部門に迎え入れる必要があるのではないだろうか。

 マイケル・アンドレッティを中心としたプロジェクトは、サポートする企業も結束しており資金も潤沢だ。彼らはすでに来シーズンに向けた改革に着手しているので、それらがハータとグロジャンのパフォーマンス向上に繋がることと期待される。

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