現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > むしろ一般道こそ使うべき胸部プロテクター 死亡事故分析がライダーの“誤解”を警告!!

ここから本文です

むしろ一般道こそ使うべき胸部プロテクター 死亡事故分析がライダーの“誤解”を警告!!

掲載 26
むしろ一般道こそ使うべき胸部プロテクター 死亡事故分析がライダーの“誤解”を警告!!

危険認知速度70km/h以下では、胸部ダメージの方が高い

 公益財団法人「交通事故総合分析センター」(ITARDA)が、「二輪車における胸部損傷事故の特徴について~胸部プロテクターのすすめ~」という研究成果を公表しました。八木敏昭主任研究員が2024年10月11日、胸部損傷事故の特徴と被害軽減対策としての胸部プロテクターの効果を語りました。

【画像】え!? そうだったの!? 二輪車における胸部損傷事故の特徴を画像で見る(7枚)

 バイク事故の被害軽減のためには頭部、胸部、腹部を守ることが重要です。この安全知識を疑うライダーはいないでしょうが、現実はどうでしょうか。ヘルメットの装着で頭部は守っているものの、そのほかの部分については“丸腰”と言ってもいい状態です。

 ITARDA八木主任研究員の調査によると、2017~2022年の人身事故から算出した胸部プロテクターの着用率は平均4.2%で、排気量が小さくなるほど着用率は下がり、排気量251cc以上の小型二輪では14.6%だったものが、50cc以下では1.7%しかありませんでした。

 大型バイクは高速道路を走る機会が多いから、という意識でプロテクターの装着を選択するのだと考えられます。排気量の小さなバイクを街乗りで利用する際にプロテクターの装着は邪魔だし、大げさだろうと考えた結果が反映された着用率だったのでしょう。

 こうした着用実態があった上で、2013~2022年の10年間のバイク人身事故の分析から、二輪車乗車中の死者割合は上昇傾向にあることを警告し、死者数の損傷部位は「近い将来、胸部が頭部を上回る可能性がある」と予測しました。

 2010年頃までの死者数は頭部損傷と胸部損傷の間に圧倒的な開きがありましたが、2017年に胸部の損傷が上昇して頭部損傷とほぼ同数になり、その後再び、頭部損傷が胸部損傷を上回るようになりますが、それぞれの死者数はどんどん近づいています。

 重傷者の損傷部位はもっと明確に違っていて、「脚部」「腕部」の次に「胸部」「頭部」の順に多いという結果が出ています(重傷事故とは全治30日以上の状態)。

 さらに、対象を死者・重傷者に絞り、損傷部位を胸部・頭部に限定して比較した結果を、八木氏は次のように分析しました。

「死者・重傷者については、胸部は頭部の約1.6倍だった」

 死亡や重傷の損傷部位と、危険認知速度を重ね合わせると、さらに胸部保護の重要性がわかってきました。危険認知速度とは、当事者が事故発生を予見した瞬間、急ブレーキや急ハンドルなどの回避行動をとる直前の速度のことです。

「危険認知速度70km/h以下において、死者・重傷者割合は、頭部より胸部の方が高い」

 八木氏の研究結果を言い換えると、高速道路より一般道の走行の方が、胸部損傷による死亡・重傷に至るケースが多いことを物語っています。

 つまり、プロテクターを装着していたならば、一般道での死亡を重傷に、重傷を軽傷に、という軽減効果が見込めたことを示しています。

プロテクター着用と非着用で、明暗を分ける結果が

 それでも原付バイクなどの小排気量バイクで胸部プロテクターを装着するのは面倒だ、というライダーに、八木氏は危険認知速度ごとに着用と非着用で死者割合と重傷者割合を比較して、こう結論付けました。

「死者割合において、着用により危険認知速度40km/h以下で着用の効果が見られる。重傷者割合においても、危険認知速度40km/h以下で着用の効果が見られる」(八木氏)

 危険認知速度70km/h以上の事故では、ヘルメットやプロテクターを着用していたとしても、身体が事故の衝撃に耐えることが難しくなってきます。それが、同40km/h以下の場合には、胸部プロテクターの衝撃吸収力が効果的に作用するため、非着用よりも身体への損傷を軽減できるわけです。

 ライダーの体感で速度40km/h以下は、けして速くはありませんが、八木氏は、危険認知速度40km/h以下をこう説明します。

「出会頭事故で胸部損傷している原付1種の死者数は、全体の98%が危険認知速度40km/h以下で発生しています。重傷事故では97.1%を占めます。ここに含まれた運転者が胸部プロテクターを装着することで、死者及び重傷者の削減の可能性が示唆されます」

 危険認知速度40km/h以下で発生した死者と重傷者を、車種別にした割合は以下の通りです(死者割合・重傷者割合)。

■原付1種 98.0%・97.1%■原付2種 56.9%・76.1%■軽二輪 21.2%・61.4%■小型二輪 10.6%・39.8%

 衝突軽減ブレーキなど先進安全技術が進む四輪車と比較して、現状のバイクには乗員を技術で守る装備が充分ではありません。そのためライダー自らがヘルメットやプロテクターで被害軽減を図るしかありません。

 四輪車乗車中との比較で「二輪車乗車中の死者割合は約3倍、死者・重傷者割合は約5倍」(八木氏)と、ライダーが装備で身を守る重要性を説きます。

 なぜ胸部プロテクターの着用が重要なのか。八木氏は発表をこう締め括りました。

「バイク死亡・重傷事故は、バイクの前面で衝突することが多い。その場合、肋骨が折れて肺に突き刺さり呼吸困難に陥るなど二次的な要因で死に至ることが多く、胸部プロテクターの装着で、まずはそれを防ぐことができる。胸部プロテクターの着用率は少なく、着用率の向上で、死者と重傷者の削減の可能性は高い。万が一の事故に備えて、ちょい乗り時にも胸部プロテクターの着用を推奨したい」

 胸部プロテクター着用の必要性を、実行に移す時かもしれません。

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

ヘルメットであればなんでもいい!?  バイク専用のヘルメットを買わないといけないの?
ヘルメットであればなんでもいい!? バイク専用のヘルメットを買わないといけないの?
バイクのニュース
使い分けの基準を知ってる? バイクで走行中のハイビーム
使い分けの基準を知ってる? バイクで走行中のハイビーム
バイクのニュース
一体何処がすごいの? 世界で初めてストロングハイブリッドが採用されたカワサキ「Ninja/Z 7ハイブリッド」の魅力とは
一体何処がすごいの? 世界で初めてストロングハイブリッドが採用されたカワサキ「Ninja/Z 7ハイブリッド」の魅力とは
バイクのニュース
おじさんになったら運転は「目」に注意! 視力低下と防ぐ方法
おじさんになったら運転は「目」に注意! 視力低下と防ぐ方法
ベストカーWeb
ヤマハの右ミラーは、なぜ逆ネジ? 採用した理由があった!
ヤマハの右ミラーは、なぜ逆ネジ? 採用した理由があった!
バイクのニュース
チェックするタイミングはいつ!? バイクのチェーンとスプロケの点検頻度は?
チェックするタイミングはいつ!? バイクのチェーンとスプロケの点検頻度は?
バイクのニュース
「なぜお酒やめられない? 運転前に…」 飲酒運転による死亡事故で24歳の男を逮捕…! SNSでは「飲酒運転=危険運転に」の声も! 12月は「特に気をつけるべき」理由とは 元警察官が解説
「なぜお酒やめられない? 運転前に…」 飲酒運転による死亡事故で24歳の男を逮捕…! SNSでは「飲酒運転=危険運転に」の声も! 12月は「特に気をつけるべき」理由とは 元警察官が解説
くるまのニュース
年末年始に近づかないほうが無難な車の特徴とは?「ふらふら」「“わ”ナンバー」「不要なブレーキ」…君子危うきに近寄らずです
年末年始に近づかないほうが無難な車の特徴とは?「ふらふら」「“わ”ナンバー」「不要なブレーキ」…君子危うきに近寄らずです
Auto Messe Web
エンジン始動上手なやり方は!? キックスタートのメリットとデメリットとは?
エンジン始動上手なやり方は!? キックスタートのメリットとデメリットとは?
バイクのニュース
「停止線の少し手前で止まるクルマ」一体なんのため? 停止線から“わざと”離れて止まる行為に賛否あり!? 実は「運転が上手い人」とされる理由とは
「停止線の少し手前で止まるクルマ」一体なんのため? 停止線から“わざと”離れて止まる行為に賛否あり!? 実は「運転が上手い人」とされる理由とは
くるまのニュース
帰ってきた道先案内人シェルパ! フレンドリーだけど頼りになる相棒
帰ってきた道先案内人シェルパ! フレンドリーだけど頼りになる相棒
バイクのニュース
「悪質!」なんて思ったら助けてくれてた可能性も! 故意かうっかりか「トラックの幅寄せ」をくらった乗用車ドライバーはどうすべき?
「悪質!」なんて思ったら助けてくれてた可能性も! 故意かうっかりか「トラックの幅寄せ」をくらった乗用車ドライバーはどうすべき?
WEB CARTOP
エンジンコンディションは吸排気バルブ周りが大きく影響
エンジンコンディションは吸排気バルブ周りが大きく影響
バイクのニュース
どんな由来があるのか知ってる? バイクにまつわる専門用語
どんな由来があるのか知ってる? バイクにまつわる専門用語
バイクのニュース
[一時停止]すらわからないって…外免切替制度があまりにも緩すぎな件
[一時停止]すらわからないって…外免切替制度があまりにも緩すぎな件
ベストカーWeb
すべてのテスト項目で最高得点! 新型「ポルシェ・マカン」が「ユーロNCAP」で5つ星を獲得
すべてのテスト項目で最高得点! 新型「ポルシェ・マカン」が「ユーロNCAP」で5つ星を獲得
LE VOLANT CARSMEET WEB
春までバイクに乗らない!? 冬のバイク保管方法
春までバイクに乗らない!? 冬のバイク保管方法
バイクのニュース
「ワザとノロノロ運転」は違反になる? 過去には「10キロおじさん事件」、最近では「岡崎の妨害運転」も… 後ろのクルマ「通せんぼ行為」 法律ではどう書いてあるのか
「ワザとノロノロ運転」は違反になる? 過去には「10キロおじさん事件」、最近では「岡崎の妨害運転」も… 後ろのクルマ「通せんぼ行為」 法律ではどう書いてあるのか
くるまのニュース

みんなのコメント

26件
  • hnp********
    夏であろうと長袖とプロテクターつけるのが普通
    半袖や短パンで乗ってるやつらは危機感が欠如した連中なので近づかない方がいい
  • tes********
    自分は常にプロテクター入りのジャケットを着てますね。
    街乗りだと下は普通のジーンズとかも有りますが、上は暑い時はメッシュジャケットで乗ります。
    半袖なんてのは論外。
    サラリーマンじゃないので怪我したら飯を食えなくなります。
    他人に強要するつもりは有りませんけどね。

    「人身事故における着用率」が低いのは、着ている人はそれだけ安全意識が高いから事故率そのものが低いのでは無いかと思います。
    別に無傷じゃなくても死ぬことろが死なずに済んだとか重傷が軽傷で済んだとかで効果は充分です。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村