現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜメルセデス・ベンツが10年後EV専業メーカーに!? 衝撃の中身と急速なEVシフトの理由とは

ここから本文です

なぜメルセデス・ベンツが10年後EV専業メーカーに!? 衝撃の中身と急速なEVシフトの理由とは

掲載 更新 22
なぜメルセデス・ベンツが10年後EV専業メーカーに!? 衝撃の中身と急速なEVシフトの理由とは

■日本での乗用車におけるEV比率は現状わずか0.7%

 メルセデス・ベンツから驚きの発表がありました。それが、2021年7月22日の「Mercedes-Benz prepares to go all-electric」というタイトルの発表です。

トヨタが165万円のEVを発売! これは買える! 使える!

 直訳すれば「メルセデス・ベンツは、オール・エレクトリックへの準備を進める」というものになります。

 オール・エレクトリックとは、全EV(電気自動車)化ということが考えられます。つまりメルセデス・ベンツは「市場の状況が許すかぎり」という前提条件を添えつつも「10年後には、すべてをEVにする準備を進める」というのです。エンジン車をやめてEVへという、いわゆる「EVシフト」の宣言です。

 これは自動車業界にとっては激震ともいえる発表です。政治家ではなく、実際にクルマを販売している自動車メーカーのメルセデス・ベンツがいっているところに重みがあります。では、その宣言が、どんな内容かと、以下に箇条書きしてみました。

・2022年までに、すべてのセグメントにEVを投入する。
・2025年以降に発売される新たなアーキテクチャー(プラットフォームを指しているようです)は、すべてEV専用となる。
・2025年に3つのEV専用アーキテクチャーを発表する。
・3つのアーキテクチャーは、中型から大型の乗用車用、AMG用、バン用。
・10年後は、すべてがEVに切り替わる準備をする。

 しかも、こうした計画を実現するために、モーターを製造する会社の買収やサプライヤーの垂直統合の推進、バッテリー開発のために欧州のパートナーとの提携、8つのバッテリー工場建設、充電インフラの拡大、1000km以上の航続距離を持つEV「VISION EQXX」の開発、世界中の工場でのEVの生産、バッテリーのリサイクルの研究・開発、従業員への研修や新規人材の獲得なども考えられているのです。

 さらに「メルセデス・マイバッハやAMGのようなハイエンドモデルのEV比率を高めて、純利益を増加させる」「デジタル・サービスからの収益の増加」という考えもあります。お題目ではなく、しっかりとした筋道のある計画であることがわかります。

 しかし、日本に住む私たちにとって、今回のメルセデス・ベンツの発表に、いまひとつリアル感を抱けない人も多いはずです。

 なぜなら、日本では、すでに約10年も前から日産「リーフ」や三菱「i-MiEV」というEVが販売されています。しかし、直近(2021年6月)の国内販売を見ると、軽自動車を除く乗用車のうちEVの割合は、わずか0.7%(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会 燃料別販売台数より)にすぎません。

 ちなみに、エンジン車は51.2%、ハイブリッドは40.2%、ディーゼルは6.5%、PHVは1.2%、FCVが0.2%です。

 ざっくりいえば、電動化率は約42%といったところ。軽自動車が省かれていますが、現時点での電動化率が40%台というのは世界でも有数の高さではないでしょうか。電動車は増えているのですが、EVそのものの普及は停滞しているのが現実です。

 そうした現状を目の当たりにする日本の人間としては、今回のメルセデス・ベンツの発表は、いささか先鋭的すぎるのではとの思いがよぎります。

■10年後のEVシフトは市場が求めるからこそ

 しかし、メルセデス・ベンツの発表からは、日本とは違う、EVシフトへのシリアスさが感じられます。

 リリースの最後に「この計画に基づき、メルセデス・ベンツはEVの世界でICE(内燃機関)時代と同様の企業マージンを予測している」とあります。これほどに前のめりの計画でありながらも、目指しているのは、現在と同様だというのに驚かされます。つまり、これほどの思い切った計画でないと、現在と同じ地位を保てないと考えているようなのです。EVシフトへの危機感とでもいえるでしょう。

 もちろん、メルセデス・ベンツの首脳陣が、日本でのEV普及の苦戦を知らないはずがありません。しかし、日本と欧州ではEVシフトに関する見方や雰囲気が異なるのでしょう。今回の計画のベースには「2025年までに電動車の割合が50%、今後10年で完全にEVに切り替わる、新車販売の市場シナリオ」があるといいます。10年で、すべてEVに切り替わるなんて市場シナリオは、日本では、ちょっと考えられません。

 また、大企業であればあるほど、小さな可能性であっても、危機の対策を怠るわけにはいきません。「きっとEVは普及しない」と侮って、もしも本当に急激なEVシフトが起きてしまったら、対応に遅れて会社が危機的な状況に陥ってしまうかもしれません。

 水素と二酸化炭素を使ったカーボンフリーとなる新液体燃料「eフューエル」というエンジン車が生き残る技術が注目されていますが、まだまだ未知数というのも事実。その一点に賭けるにはメルセデス・ベンツという企業は大きすぎます。さらに2030年ではなく、もっと先の未来にはエンジン車がなくなってEVとFCVになるという予測は古くからあるものです。つまり、いつかはEVへとシフトするはずなのです。

 それらのリスク回避や、将来を見据えて、メルセデス・ベンツは、あえて早めのタイミングでEVシフトする計画を立てたのかもしれません。もしも、市場のEVシフトが10年後よりも遅れれば、それにあわせてメルセデス・ベンツの計画も遅らせればいいというわけです。計画がないままオロオロするよりは、はるかにましでしょう。

 ただし、今回のメルセデス・ベンツの発表にもあるように、基本には「市場の状況」があります。市場がEVを求めるからこそ、エンジン車が消えるのです。

 逆にいえば、市場が求めなければ、10年後のEVシフトは起こりません。10年後にどうなるのかは、まさに「神のみぞ知る」といえるでしょう。

 もちろん、メルセデス・ベンツだって未来のことはわかりません。しかし、可能性はわかります。そして、その可能性に対処するために、今回の驚きの計画を発表したのではないでしょうか。

こんな記事も読まれています

6速MTあり! 全長5.4m超のトヨタ新型「タフすぎ車」発表! パワフルなハイブリッド搭載した「新型タコマ」約610万円から米で発売
6速MTあり! 全長5.4m超のトヨタ新型「タフすぎ車」発表! パワフルなハイブリッド搭載した「新型タコマ」約610万円から米で発売
くるまのニュース
JR中央本線の上空 一夜にして橋が出現! 名古屋‐中津川の国道19号バイパス「瑞浪恵那道路」
JR中央本線の上空 一夜にして橋が出現! 名古屋‐中津川の国道19号バイパス「瑞浪恵那道路」
乗りものニュース
ニューウェイがレッドブルを離れても、ライバルの獲得は2027年までお預け? 契約に不履行条項が存在か
ニューウェイがレッドブルを離れても、ライバルの獲得は2027年までお預け? 契約に不履行条項が存在か
motorsport.com 日本版
歩行者でも道交法違反になる! マラソンや駅伝の規制中に警察の指示に従わず「コースを横断」は罰則の可能性アリ!!
歩行者でも道交法違反になる! マラソンや駅伝の規制中に警察の指示に従わず「コースを横断」は罰則の可能性アリ!!
WEB CARTOP
電動車ブランドになったヒョンデが、あえて高性能モデル「N」を日本に投入する理由とは?
電動車ブランドになったヒョンデが、あえて高性能モデル「N」を日本に投入する理由とは?
レスポンス
プリウス顔のSUV!!  しかもEVってマジか!!  トヨタ本気のEV攻勢
プリウス顔のSUV!!  しかもEVってマジか!!  トヨタ本気のEV攻勢
ベストカーWeb
日産が新型「エヴォ・コンセプト」世界初公開! めちゃカッコいい「流麗セダン」中国で登場! どんなモデル?
日産が新型「エヴォ・コンセプト」世界初公開! めちゃカッコいい「流麗セダン」中国で登場! どんなモデル?
くるまのニュース
エイドリアン・ニューウェイがレッドブルF1離脱を決断との報道。ホーナー騒動が一因か。チームは2025年末までの契約を強調
エイドリアン・ニューウェイがレッドブルF1離脱を決断との報道。ホーナー騒動が一因か。チームは2025年末までの契約を強調
AUTOSPORT web
ホンダの赤い「新型プレリュード」初公開! “2ドアクーペ”実車展示で反響スゴい!? 25年登場!? 車名復活で米国でも注目
ホンダの赤い「新型プレリュード」初公開! “2ドアクーペ”実車展示で反響スゴい!? 25年登場!? 車名復活で米国でも注目
くるまのニュース
スズキ「GSX-8R」の仕立ては想像超え!! 親しみやすく扱いやすいマルチなポーツバイクだった
スズキ「GSX-8R」の仕立ては想像超え!! 親しみやすく扱いやすいマルチなポーツバイクだった
バイクのニュース
ランドローバー ディスカバリースポーツ、エントリーグレードを追加…2025年モデルの受注開始
ランドローバー ディスカバリースポーツ、エントリーグレードを追加…2025年モデルの受注開始
レスポンス
デカすぎ……レクサスLMは48インチのディスプレイ採用!! もう「高級車=セダン」は時代遅れ? 高額なミニバンやSUVが登場するワケ
デカすぎ……レクサスLMは48インチのディスプレイ採用!! もう「高級車=セダン」は時代遅れ? 高額なミニバンやSUVが登場するワケ
ベストカーWeb
トヨタ「GRヤリス」のマイナーチェンジはフルモデルチェンジに等しい! 初期型ユーザーは買い替えのご準備を
トヨタ「GRヤリス」のマイナーチェンジはフルモデルチェンジに等しい! 初期型ユーザーは買い替えのご準備を
Auto Messe Web
マットモーターサイクルズのニューモデルDRK-01(250/125)受注開始!同社初の水冷エンジン搭載車は6月下旬発売予定
マットモーターサイクルズのニューモデルDRK-01(250/125)受注開始!同社初の水冷エンジン搭載車は6月下旬発売予定
モーサイ
「コイツ、実はクルマです…」馬って公道OKなの!?高速道路は?
「コイツ、実はクルマです…」馬って公道OKなの!?高速道路は?
月刊自家用車WEB
テスラのすべてのモデルが新価格に! Model 3 RWDやModel Y RWDがこんなに安く!
テスラのすべてのモデルが新価格に! Model 3 RWDやModel Y RWDがこんなに安く!
月刊自家用車WEB
渋滞対策の最終兵器! 『渋滞情報マップby NAVITIME』ならリアルタイムで渋滞回避をサポート
渋滞対策の最終兵器! 『渋滞情報マップby NAVITIME』ならリアルタイムで渋滞回避をサポート
月刊自家用車WEB
テスラ、モデル3に価格改定とスポーツ走行まで楽しめる”パフォーマンスモデル”を追加
テスラ、モデル3に価格改定とスポーツ走行まで楽しめる”パフォーマンスモデル”を追加
月刊自家用車WEB

みんなのコメント

22件
  • EVになったらAMGなんていらんだろう。
  • テクノロジーもインテリアも数年で時代遅れになりそう。こんなデカくて使い捨てみたいな車が環境にいいはずはない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村