初体験のドライブは、イタリアの魅力にあふれていた
“紅一点”でAMW編集部のリレーインプレに今回から加わることになり、初参加でドライブするのはアバルト「695トリビュート131ラリー」。国産スポーツカー乗りの筆者にとってイタリア車といえばスーパーカーというイメージで、残念ながらドライブする機会には恵まれなかったため、今回がイタリア車の初ドライブということになる。そんな初体験記をお届けしよう。
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想い出深いイタリア車たち
長らく国産車に乗ってきて、欧州車といえば少しばかりドイツ車をたしなんだ程度のクルマ歴の筆者にとってはイタリア車は憧れのスーパーカーというイメージ。庶民である筆者は残念ながらドライブする機会には恵まれなかったので、イタリア車の初ドライブがアバルトになったというわけだ。
その昔、スーパーカー界隈に少しだけ縁があって、知人が所有するフェラーリ「F40」を見せてもらったことがある。十数年前でさえプレミア価格がついていたその稀少な姿に感動したことを憶えている。その反面、フェラーリオーナーであるがゆえの名誉の苦労を目の当たりにして、もうそれだけでお腹いっぱいになってしまったのも事実。そんなこともあり、どちらかと言うと国産車万歳で落ち着いていた筆者のイタ車魂に火を点けたのが、忘れもしない2007年の東京モーターショーだ。「SLRマクラーレン ロードスター」が公開されていて、ナマで見て触れたSLRの素晴らしさに満足したあとでランボルギーニのブースに向かうと、そこには明らかにただならぬオーラをまとったスーパーカーが鎮座していた。それこそが「レヴェントン」で、一般公開日には姿を見せることがなかった幻のクルマだった。まさにステルス戦闘機のようなシルエットに圧倒され、再びイタ車沼に。
「小さな巨人」に進撃された筆者のマインド
そんなド派手なイタリア車にばかり目を奪われていた筆者なので、申し訳ないがフィアットやアバルトはまったく眼中にない存在だった。ましてすぐ壊れるというイメージが先行しているイタリア車を所有しようなどとは微塵も考えたことなどなかった。けれども今回初めてドライブしたアバルトのおかげで少し大袈裟ではあるものの、イタリアという国の自動車産業の根底にあるマインドに触れることができたような気がする。
ところで、恥ずかしながらアバルトに乗るまで「小さな巨人」という言葉がアバルトを指していることすら知らなかったほどだ。小さいくせに巨人とは? と、まったくピンと来ていない言葉だった。ところがである。なるほど、言い得て妙とはこのこと。自分の無知に恥じ入りつつ、小柄なくせにパワフルな走りはまさに「小さな巨人」そのもので完全に腑に落ちてしまったのだ。頭の中でアバルトのドライブフィールを反芻しながら、「そういうことか」とその走りの良さを再認識するに至った。あんなに可愛らしくて小洒落たフォルムとは裏腹に、クラッチを繋いだ瞬間からアバルトがまさしくスポーツカーなのだと思い知らされたのだった。
最初のコーナリングで心を奪われた
「131ラリー」という名を背負うだけあって、その走りは随所にラリーカーのプライドが感じられるものだった。センターパネルのスコーピオンボタンを押すとスポーツモードになって、急に獰猛なほどの本性を現してくるのだ。ただし街乗りでは前車に追突しそうな勢いのトルクを発揮し、臆病者の筆者には刺激が強すぎたようだ。とくに渋滞がちな都内では封印しがちになってしまうのは残念だった。その分、ノーマルモードではターボに物言わせ、パワーに任せて走らせると小柄なボディゆえによりダイナミックな挙動を感じ取りながらドライブを愉しむことができる。
ちなみに筆者の愛車は超ローテクマシンでパワステもついていないし、電子制御のたぐいは一切装備されていない。そのためこのアバルトに乗り込み、エンジンを始動しようとするとエンジンスターターボタンではなく、キーをシリンダーに差し込むところから気に入ってしまった。走りにおいてもラリーカーをオマージュしているだけの覚悟が感じられ、それは、走り出して最初の交差点でのコーナリングで感じられた。ハンドリングの応答性が抜群でキレがあり、操舵角と侵入スピードに比例したステアリングの重さがダイレクトに手に伝わってくる感覚は、運転する愉しさそのもの。ハイテク武装された昨今のクルマばかりのなか、クルマと対話しながら走る感覚は忘れがちだが、一瞬一瞬の挙動を感じ取りながら走ることが愉しいと思わせてくれるクルマに久しぶりに出会った気がする。
陽気なお国柄を感じられる愉しい走り
勝手な偏見ではあるが、イタリア人は陽気で日常を愉しんで生きているイメージがある。実際、同じラテン民族でスペイン人の知人が筆者にはいるのだが、まさに誰にでもウェルカムな陽気なセニョールなのだ。だから会うたびに元気をもらう。そんなあけっぴろげで陽気な性格で、日常を愉しむというマインドはクルマにも現れているのだと、今回の試乗を通して大いに感じさせてもらった。純粋に、そして無心に愉しむ経験を提供してくれるのがクルマでもある。しかも一緒にそれをつくり上げている感覚も味わえる。どんなハイテク装備よりも、「愉しい」を装備したクルマが最強なのだ。
真面目で几帳面な日本車もいいけれど、陽気で日常の些細なことも愉しく感じられるようなイタ車魂に、筆者の大和魂は見事に進撃されてしまったのだった。
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みんなのコメント
って、言っても記名記事じゃなければ、名無し一人でOKじゃんw