「現代」を象徴するような電動SUVたち
実用性、走行性能、コストパフォマンス、航続距離、高級感といった観点から、それぞれ「ベスト」な電動SUVを紹介する。
【画像】こ、これが米スタートアップ企業の「底力」か…!【フィスカー・オーシャンの内外装を写真でじっくり見る】 全43枚
SUV人気はとどまるところを知らない。トヨタRAV4や日産キャシュカイ(日本名:デュアリス)が開拓した小型クロスオーバー/SUVの市場、ジープやランドローバーのようなオフロード車への熱い視線、ポルシェ・カイエンやBMW X5が見せつけた高級車らしい走り、そしてテスラ・モデルYのような電動SUVの台頭……。
EV(電気自動車)への移行により、SUV独自のメリットがひそかに注目されている。車高が高いため、大容量の駆動用バッテリーを隠すのに理想的なのだ。背の低いセダンなどでは、室内空間への影響を抑えるのに苦労する。
今や世界各地でさまざまな電動SUVが発売されているが、今回はEVの選択肢が豊富な欧州市場からトップ10を選出した。ただ、サイズや価格の差が大きすぎるため、走る楽しさや使い勝手の良さなど各分野ごとに1台(+アルファ)ずつ紹介していきたい。
キアEV9 – 室内空間と汎用性
優秀賞:テスラ・モデルY、スコダ・エンヤク
電動SUVが求められる理由の1つに「室内の広さと使いやすさ」がある。この点、キアEV9は頭一つ抜けている。絶対的な広さではメルセデス・ベンツEQS SUVが勝るが、価格は高いし、それほど汎用性があるわけではない。
EV9はガラスエリアが広く、折り畳みが簡単なシートを備えている。充電ケーブルを収納するフロントのラゲッジコンパートメントのおかげで、広々とした空間をより有効に活用できている。単に広いだけではないのだ。
走りも非常によくできている。デュアルモーター仕様は強力なパフォーマンスを誇るが、今後発売されるシングルモーター仕様が販売の主力となるだろう。7人乗りのSUVとしては非常にスタイリッシュで、高級感、効率性、航続距離ともに申し分ない。
英国価格は6万5025ポンド(約1240万円)から。もう少し手頃なものや、あるいは7人乗りを必要としないなら、テスラ・モデルYかスコダ・エンヤクが最有力候補となる。
フィスカー・オーシャン – 航続距離
優秀賞: BMW iX、ポールスター 3
SUVのボディ形状は空力の面で理想的とは言いがたいが、巨大なバッテリーを搭載することで効率の悪さを補うメーカーもある。航続距離の長い電動SUVの代表格となっているのが、フィスカー・オーシャンだ。最上位グレードの「エクストリーム」は1回の充電で最長707kmも走行可能とされる(WLTPサイクル)。
中間グレードの「ウルトラ」も690kmという驚異的な数値を謳っている。弊誌はまだ徹底的な試乗テストはできていないが、この2つのグレードにはヒートポンプが標準装備されているので、冬でも航続距離はかなり保たれるはずだ。バッテリーは106kWh と大容量だが、200kWの急速充電に対応している。
航続距離以外の点では、おおむね快適で、静粛性も高く、実用的で、運転しやすい。ステータスを「走り」に全振りしていない分、扱いやすいクルマとなっている。価格としてはウルトラが5万900ポンド(約970万円)、エクストリームが5万7900ポンド(約1100万円)と、他の高級電動SUVたちと比べると少しだけ安く感じられる。
最も安価なエントリーグレードの「スポーツ」は3万6900ポンド(約700万円)からで、航続距離は464kmとされる。
他に航続距離が長いEVとしては、BMW iX xドライブ50(615km)かポールスター3(610km)があり、どちらも高価だが快適な高級SUVだ。
テスラ・モデルY – エネルギー効率
優秀賞:ヒョンデ・アイオニック5/ジェネシスGV60、フォルクスワーゲンID.4/スコダ・エンヤク
航続距離を伸ばすために大容量バッテリーを積むのもいいが、当然ながらバッテリーが大きければ大きいほど充電に時間がかかる。急速充電の料金も安くない。エネルギー効率(電費)を高め、小さなバッテリーを最大限に活用する方が賢い選択に思える。
現在のところ、文句なしの効率王者はテスラだ。モデルYのシングルモーター(RWD)仕様の電費は6.4km/kWhで、実走行でもこれに近い数値が出る。デュアルモーター(AWD)仕様のロングレンジは6km/kWhと若干劣るが、それでも素晴らしい。もちろん、車高が低く、空力に優れたモデル3はさらに優れている。
テスラの極めてミニマルな内外装デザインは万人向けではないし、ドライビング・エクスペリエンスも規範的なものではないが、モデルYの基本的な資質に異論はない。サイズの割に室内が広く、速く、魅力的な走りを見せる。
部品を多く共通化するモデル3は最近改良を受け、電費をさらに高めたほか、快適性とインテリアの雰囲気が改善された。同様の改良は最終的にモデルYにも実施されるだろう。
テスラがお気に召さないなら、シングルモーターのヒョンデ・アイオニック5やジェネシスGV60(両車パワートレインを共有)もかなり高効率だし、フォルクスワーゲンID.4やスコダ・エンヤク(こちらもパワートレイン共有)も最近大幅に効率を上げてきた。
ヒョンデ・アイオニック5 N – 走りの楽しさ
優秀賞:BMW iX3、ジャガー Iペイス
運転が楽しい電動SUVなんてあるのか? そう疑問に思われる人も多いだろうが、結論、ある。ヒョンデは、ガソリンエンジンを搭載した同社初のホットハッチであるi20 Nとi30 Nが優れた性能を発揮し、発売直後からクルマ好きの注目を集めた。そして、そのドライビングの魅力をEVにも引き継ぐべく、アイオニック5の高性能版を開発した。
アイオニック5 Nは、硬いサスペンションと高出力モーターだけのパワープレイヤーではない。強固なボディシェル、リアアクスルのリミテッド・スリップ・ディファレンシャル、アダプティブダンパー、そしてエンジニアのユーモアセンスのおかげで、純粋に楽しめる。パワーのオン・オフの繰り返しが面白く、6速MTとガソリンエンジンのテイストを模倣することもできる。
弊誌のマット・プライヤー記者は試乗記でこう述べている。「これは画期的なクルマだと思う。初の本格EVドライバーズカーだ。エンジン音がするからではなく、チューニングが素晴らしく、真のエンジニアリングを感じられるからだ」
アイオニック5 Nが少しハードコア過ぎるなら、他の選択肢もある。BMW iX3は、モーターが1基しかないため頼りなく聞こえるが、どちらかといえば、それが逆にBMWらしいハンドリングに役立っている。また、やや旧式化してはいるが、ジャガーIペイスも運転していて楽しい。
メルセデス・ベンツ EQE SUV – 運転支援
優秀賞:BMW iX、スコダ・エンヤク
長時間の運転に疲れたとしても、最近のクルマ、特に高級車には運転支援技術が満載されている。中には全く役に立たない機能もあり、オフにしないとストレスで発狂しそうなアラームもあるが、大体の機能はロングドライブや退屈な渋滞時のストレスを取り除いてくれる。
メルセデス・ベンツは、1999年に初めて本格的なアダプティブ・クルーズ・コントロール・システムを導入し、今でもトップクラスの運転支援技術を誇るメーカーだ。他社のシステムほど「短気」ではなく、前方に他車が割り込んできてもいきなりブレーキをかけるのではなく、徐々に減速する。ステアリングアシストはスムーズで、渋滞等で交通の流れがストップすると、二輪車や緊急車両が通れるようなポジションを取る。車線維持や速度超過警告などはほとんど運転の邪魔にならず、オフにするのも簡単だ。
ライバルとなるBMW iXのアダプティブ・クルーズ・コントロールも非常に優れており、最新のスコダ・エンヤクの運転支援もスムーズに作動する(初期バージョンは動作がやや不安定なこともあった)。テスラの「オートパイロット」は北米市場では有用だろうが、欧州など他の市場では初歩的なバージョンしかないため、今回は取り上げなかった。
ジェネシス・エレクトリファイドGV70 – 使い勝手の良さ
優秀賞:BMW iX3、スコダ・エンヤク
タッチスクリーンの台頭と過剰なほどの多機能化により、「ただ乗り込んで走る」ということが難しくなってきた。乗り込むたびに細かい設定をいじるのはストレスである。ジェネシスGV70の場合、最初の1週間ほどは自分の好みに合わせていろいろ設定するのに時間がかかるが、一度設定してしまえば、あとはストレスフリーだ。
タッチスクリーンは大きくて反応がよく、回転式コントローラーや物理ボタンと組み合わされていて非常に使いやすい。古風だが便利だ。やはりタッチ操作だけですべての車載機能を制御するのは、よほど卓越したユーザーインターフェースでない限り難しいようだ。
BMW iX3は旧バージョンの「iドライブ」システムを使用しているが、これは新しいモデルよりも使いやすい。また、物理的なクライメートコントロールや、カスタマイズ可能なショートカットボタンも残されている。スコダ・エンヤクはタッチスクリーン集約型だが、2024年にマルチメディアが大幅にアップデートされたため、使い勝手が向上している。
BMW iX – 乗り心地と高級感
優秀賞:ジェネシス・エレクトリファイドGV70、レクサスRZ
BMWは「駆けぬける歓び」というキャッチフレーズを使い続けているが、環境規制や道路状況の変化により、「歓び」の定義も変わりつつあるようだ。BMWはEVによって、快適性のスペシャリストへと進化している。
iXは、世界トップクラスのローリング特性とドライバビリティ、圧倒的なパフォーマンス、そして実用的な航続距離を備えている。一方、BMWのインテリアはスポーツセダン的なイメージがあるが、iXはどちらかというとi3の大型版のように感じられる。開放的な空間、柔らかいフォルム、珍しい内装材のオプションなど、ラウンジに近い環境だ。iX xドライブ40にはエアサスペンションとロングレンジバッテリーが装備されていないため、購入を検討するならiX xドライブ50をおすすめしたい。
メルセデス・ベンツのEQS SUVとEQE SUVはハイテクを感じさせるが、製造品質と素材の質感ではBMWに軍配が上がる。BMW iXと同じようなレベルのものをより安価に手に入れるなら、ジェネシス・エレクトリファイドGV70は古風な高級感があり、レクサスRZもかなり魅力的だ。
スコダ・エンヤク – 総合力
優秀賞:テスラ・モデルY、フィスカー・オーシャン
手頃な価格、実用性、航続距離、使いやすさ、ドライバビリティを兼ね備えた電動SUVがスコダ・エンヤクだ。1つの分野で特に秀でているわけではないが、素晴らしいオールラウンダーである。2021年に発売されたエンヤクは、兄弟車フォルクスワーゲンID.4やアウディQ4 eトロンよりもMEBプラットフォームの使い方が上手い。最近では、小さな弱点を潰すアップデートが施され、魅力に磨きがかかった。
エントリーグレードのエンヤク60は3万8970ポンド(約740万円)からだが、最長560kmの航続距離と充実の標準装備を揃えたエンヤク85エディションをおすすめしたい。マルチメディア・システムはバグが少なく、非常に使いやすい。室内空間は十分に広い。標準装備のアダプティブ・クルーズ・コントロールと、パドル調整の回生ブレーキにより、直感的に運転できる。また、特に面白いとは言えないまでも、バランスの取れたシャシーも秀逸である。
総合力ではテスラ・モデルYも優れており、ナビのルートプランニング技術は長旅のストレスを軽減してくれる。フィスカー・オーシャンも非常に有望で、注目に値する。
フィスカー・オーシャン:コストパフォマンス
優秀賞:テスラ・モデルY、スコダ・エンヤク
本日2度目の紹介となるフィスカー・オーシャン。今回は、バッテリーを小型化し、モーターを1基だけ搭載したエントリーグレード「スポーツ」に注目したい。コストパフォマンスが高く、車両価格は3万6900ポンド(約700万円)から。通常この金額ではキア・ニロEVにさえ乗れない。
航続距離は464km、最高出力282psと十分なパワーを備え、室内も広々としている。装備もかなり充実しており、シートヒーターとパノラミックルーフは標準装備。弊誌はまだ長期間の試乗はできていないが、広々として快適で、かなり使いやすいと感じた。
実績のあるEVを選ぶなら、テスラ・モデルYがおすすめだ。シングルモーター(RWD)仕様は4万4990ポンド(約860万円)と、目を見張るほど安くは見えないが、欧州で展開されるテスラのリース契約はかなり有利だと言われる。それ以外では、スコダ・エンヤク60がかなりお買い得で、航続距離も十分だ。
レンジローバー・エレクトリック – 熱い期待
優秀賞:ポルシェ・マカン
毎日新しい電動SUVが発売されているように感じるが、実は真の目玉商品は驚くほど少ない。2024年も多くの新型車が発表される予定だが、中でもレンジローバー初のEV、レンジローバー・エレクトリックにはひとかたならぬ期待を寄せている。
今のところ公式情報は少なく、一部のデザインが公開されている程度だが、外観としては既存のレンジローバーとほとんど変わらない。大容量バッテリーとデュアルモーターを搭載し、500ps近いパワーと高いオフロード性能を発揮することは間違いない。800Vシステムにより、超急速充電を実現することもわかっている。
その他に期待されるのが、ポルシェの新型マカンだ。フォルクスワーゲン・グループの新プラットフォームPPEを採用するEV専用車で、アウディQ6 eトロンと兄弟車となる。もっと手頃な価格帯では、フォードが欧州向けにエクスプローラーを発売する。フォルクスワーゲン・グループのMEBプラットフォームをベースにしており、米国向けの同名モデルとはまったく異なる電動SUVである。
電動化の推進とSUVブームにより、今後も続々と電動SUVが登場することだろう。このビッグウェーブはどこかで落ち着くのかもしれないが、しばらくは「時代の最先端」として目が離せないカテゴリーである。
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みんなのコメント
少し前まで欧米ドラマや映画でも日本車は良く使われてた
富裕層の設定は相変わらず欧州の高級車だが庶民の足に韓国車が多く使われてる
今の日本車て欧米での評価はこんな感じなんだよな