新車を売るディーラーマンにとって、1台でも多くの自社のクルマを売りたいのは当然のこと。でも売るには限度がある、もっと売りたいけど、売れる車種がないのが悩み……という、ディーラーマンが多いのではないだろうか。
実際、トヨタの営業マンと話している時に「日産さんが羨ましい。ノートe-POWERをウチで売りたい」という声を聞いた。
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そこで、新車ディーラーの現場取材をライフワークにしている、ベストカー本誌でもお馴じみの遠藤徹氏に、おつきあいのあるトヨタ、日産、ホンダのディーラーマンに「もしも他社のクルマを売ることができたら、どのクルマを売りたいですか?」という質問をぶつけてもらった。
さて、各ディーラーマンたちは、他社のどのクルマを売りたいのか、本音を聞いた。
文/遠藤 徹
写真/ベストカー編集部
■トヨタのディーラーマンはセレナとノートのe-POWER、N-BOXが欲しい!
やはりトヨタのディーラーマンがベタ褒めして悔しがっていたのはセレナe-POWERが売れていることだった
新車販売店のディーラーマンは日常、自社の扱う新車を売るのに熱心で、他社のライバルモデルと競合すると、負けたくないためにライバルモデルの弱点を指摘して、自車の良さをアピールし、売り勝つのを優先させている。
ところが本音は違う。ライバル車のなかには多くの場合、競合し、顧客を取り合っている際、「ライバル車のこの部分は超えられない。自社の競合モデルにこの部分があれば勝てる。このライバル車はぜひ自分が売りたい。」などと思うケースはよくある。
まず、トヨタのディーラーマンから話を聞いた。ノア/ヴォクシー/エスクァイアの販売を得意としているトヨタモビリティ東京の営業マンである。
「セレナe-POWERに乗りましたが、加速がいいですよね。ワンペダルのアクセル操作も思ったよりもすぐに慣れましたし、走りがおもしろかったです。
弊社で扱っているトヨタ3姉妹、ノア/ヴォクシー/エスクァイアの1.8Lハイブリッド車は静かでスムーズな走りが自慢ですが、走りの楽しさからいったらセレナe‐POWERに負けています。う~ん悔しいですが、ワンペダルはウチにも欲しいです。
日産さんからはもう1台は欲しいですね。ノートe-POWERです。まさかこれほどノートが売れると思っていませんでしたのでビックリしました。
弊社のヴィッツ1.5Lハイブリッドと比べるとパワフルさで完敗。ワンペダルの走りもセレナe-POWER以上に楽しかったです。でも音がちょっとうるさいのがタマに傷ですかね。新型ヤリスで打ち負かしたいですね~。
ノートがこれほど売れると思わなかったというトヨタのディーラーマン
最後に私が個人的に一番欲しいと思っているのはN-BOXです。グループ会社のダイハツさんがあるので、トヨタが作った軽自動車を売りにくいのはわかりますが……。
軽自動車販売ナンバー1のN-BOX。これほど完成された軽自動車はないと絶賛
軽自動車販売は、新車販売の約4割に達しているのに、トヨタが軽を作っていないのは変ではありませんか? ダイハツさんからのOEM車だけでは販売台数はなかなか増やせません。
完成されつくして文句のつけどころのないN-BOXのようなすばらしい軽自動車をトヨタが作るべきではないでしょうか」
※ダイハツからOEM供給を受けているトヨタの軽自動車は、ピクシスエポック(ミライース)、ピクシスメガ(ウエイク)、ピクシスジョイ(キャスト)、ピクシストラック(ハイゼットトラック)、ピクシスバン(ハイセットカーゴ)
■日産のディーラーマンはプリウス、アル/ヴェル、86が欲しい!
マイナーチェンジで普通の顔になったプリウスを日産のディーラーマンがベタ褒め
続いて都内の日産のディーラーマンに聞いてみた。このディーラーマンは
数年前には「日産には今売るクルマがない」と嘆いていたが、 ノートとセレナが想像以上に売れていることで、一転ホクホク顔だ。
「ノートe-POWERが売れてはいますが、長期的にはプリウスに対抗できる日産車はありません。航続距離が伸びたとはいえ、電気自動車のリーフでは太刀打ちできませんよ。プリウスにはお手上げです。リーフとプリウスをトレードしてほしいと思ったことが何回もあります」
ひと頃に比べると売れゆきが減ってきたプリウスだが、依然として日産のディーラーマンからは恐れられているようだ。さらにこう続ける。
「アルファード、ヴェルファイアはぜひ弊社で売りたいです。見栄えのよさ、使い勝手、パワーユニットの性能、リセールバリューなど大部分の商品性でエルグランドは負けてます。
日産のディーラーマンはエルグランドをどうにかしてほしいと訴えていた
アルファード、ベルファイアは1~2年ごとにマイナーチェンジや一部改良で商品性を進化させているのに対して、エルグランドの現行モデルの発売が2010年と古く、進化のレベルが遅いです。
パワートレインにしてもエルグランドはガソリンNAの2.5L&3.5Lですがアルファード、ヴェルファイアは2.5L&3.5LNAガソリン、さらに2.5Lハイブリッド車も設定しています。
こうなったらなりふり構いません。アルファード/ヴェルファイアのバッジを日産のバッジに変えただけでも……、無理ですね。とにかく、もう一度、ひと花咲かしてくれませんか、エルグランドに。
そしてもうひとつ、86をウチでぜひ売りたいです。というより、新しいスポーツカーが欲しいです。GT-Rはもう12年、Zも11年が経ちますし。とにかく、いまの日産には300万円以下のスポーツカーが必要です。シルビアが復活してほしい!
ベストカー本誌が製作したe-POWERを採用したスポーツモデルの予想CG。シルビアサイズのFRプラットフォームの開発はコスト的に厳しいが、FFプラットフォームを採用してe-POWERで後輪駆動を採用できる可能性はある。デビュー時期は2~3年以降か?
現実的な話に戻りますが、日産は2022年までにe-POWER、電気自動車の国内での各5車種を販売する体制を明らかにしています。これらのクルマが出揃えばe-POWERの日産がますますパワーアップしますので期待してください。
最後にお詫びです。お客様からは、日産車のモデルチェンジサイクル長すぎるという指摘が多く寄せられています。重ね重ね申し訳ございません。我々、販売の現場も厳しい状況です。昔のように戻してほしいですね」
■ホンダのディーラーマンが欲しいのはアル/ヴェルとハスラー&クロスビー
最後は都内のホンダカーズのディーラーマン。オデッセイやステップワゴン、初代フィットなどバカ売れしていた頃のホンダを知るベテランディーラーマンである。
「私はホンダのミニバン全盛期、初代オデッセイや初代ストリーム、初代、2代目ステップワゴン、フィットを数百台は売ったと思います。
でも今はオデッセイにしてもかつての勢いはありませんし、ステップワゴンにしてもトヨタさんのミニバンと比べると厳しいと言わざるを得ません。
作りのよさ、使い勝手、価格に応じたグレード構成のうまさ、そしてコワモテ顔など、トヨタさんがやることは時代に合わせるのがうまいですよね。
新型インサイトにしても、インサイトが1.5Lハイブリッドで、プリウスが1.8Lなのに、インサイトの方が50万円以上も高い。これでは勝負になりません。
今、私が一番悔しいのはエリシオンが生産中止になったことです。しっかりフルモデルチェンジしてアルファード、ヴェルファイア対向車として存続してほしかったですね。オデッセイだけでは対抗できません。
2004~2013年まで生産されていたホンダエリシオン。アルファード、ヴェルファイアに駆逐され生産中止となった
アルファード、ヴェルファイアがウチに欲しいですね。切実ですよ。また背の高いLサイズミニバンを作ってほしいです。アルファード、ヴェルファイアに負けないコワモテ顔でぜひ出してほしいですね。
次に、ウチで売ってみたいクルマはハスラーと、兄貴分のクロスビーです。レトロでカッコいいですし、室内も広い。ハイブリッドもありますし、売れる要素と言いますか、おさえるべきところはほぼおさえています。売れない要素が少ないんです。
ホンダにはヴェゼルやCR-VなどクロスオーバーSUVはありますが、クロスオーバー風の背の高いクルマ(2列シートのハイトワゴン)がないですから。
昔、クロスロードやエレメントなど、ホンダは独創的なクルマを出してきましたが、ハスラーが出た時、スズキに1本取られた!って思いました。
SUVテイストの箱型のクルマは今のホンダ車にはないキャラクター。ホンダのディーラーマンはハスラーとクロスビーをベタ褒め
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