この記事をまとめると
■電動車の火災は通常の消火方法による消化が難しい
ロスの山火事で燃えたEVが危険で撤去が進まない! 他人の家の「盗電」問題も噴出! 「そうまでしてEV普及させる意味ある?」の声が出てくる可能性
■電動車の火災を消火するために「車両火災用ブランケット」の普及が進んでいる
■「車両火災用ブランケット」は窒息効果と火災の延焼防止を狙ったもの
駆動用バッテリーに引火した車両火災の消火は困難
近年、BEVなど駆動用バッテリーを搭載した電動車が増えてきている。これまでのクルマとは扱いが違う部分もあるが、それは車両火災時も同じだ。通常の水を用いた消火方法では消火が難しいことがある。そこで現在普及が進んでいるのが、車両火災用ブランケットだ。
なぜBEVの車両火災で有効なのか
BEVの駆動用バッテリーにはリチウムイオンバッテリーが使用されることが多いが、このバッテリーは燃え始めると結構くせ者だ。事故の損傷などにより発熱や発火が起きると熱暴走状態となり、自己発火を繰り返してしまう。これが水だけでは消火できない主な理由だ。
火災は酸素が供給されることによって行われるため、酸素の供給をなくす窒息効果を狙うのが消火の方法としてある。車両火災用ブランケットはこの窒息効果と火災の延焼防止を狙ったもの。車両すべてを覆うことができる耐熱性のブランケットをかけることで酸素の供給を絶つのが火災抑制のメカニズムだ。
通常のガソリン車の火災でも使用することができるが、二酸化ケイ素を主成分とした高純度シリカでできており、1600℃という高温にも耐えることが可能。そのため、高温となるリチウムイオンバッテリーの火災でも窒息効果を発揮しながら、火災の延焼防止ができるのだ。
また、水をブランケットの上からかけて、プラスで冷却効果を発揮させることも可能となっていて、冷却効果が有効なBEVの初期消火に有効なアイテムといえる。
じつは消火の手順はまだ統一ルールがない
車両火災用ブランケットは、消防機関はもちろんBEVを取り扱うディーラーや自動車メーカーなど幅広いユーザーが購入しているとのこと。じつはもともとBEVを大量運搬しているフェリーで、BEVの火災により運んでいた車両が全消失してしまったことが開発の経緯にあるのだ。使用回数に制限はないそうだが、車両の破損した突起部などで穴が開いてしまった場合は窒息効果が望めないため交換が必要となる。
じつは各都道府県、そして世界的にもBEVの消火活動に関する明確な取り決めが整っているケースは少なく、車両火災用ブランケットを配備していない消防機関もある。以前、BEVの火災があったときも「車両火災用ブランケットがあればもっと早く消火できたはず……」という声があったケースもある。
そうなると具体的に消火までどれくらい時間がかかるのか? という疑問が聞こえてきそうだが、コチラはケースバイケースだ。というのも燃え方はもちろん、バッテリー容量や車両の大きさによっても異なってくるからだ。
ブランケットは初期消火のためのアイテム
ただBEVの車両火災において、完全なる消火は車両火災用ブランケットだけでは足りないとされることもある。冒頭でお伝えしたように熱暴走で自己発火を繰り返すからだ。車両火災用ブランケットは初期消火のアイテムと考えておくべきといえる。
完全なる消火に必要なのは長時間の冷却だ。車両全体を沈めることができる大きな水槽に一定時間以上付けておくのが完全な消火に必要とのこと。そこで今回取材協力をして頂いた株式会社モリタでは、水をその場でせき止めることが出来る止水板で簡易的なプールを作ることをセットで提案しているそうだ。
今後増えていくであろうBEVの車両火災。もしものときのためにも、各機関で車両火災用ブランケットは初期消火の必須アイテムとなるだろう。
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