現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > これがフォードの本気! WRCで勝つために作られた最強の市販車「RS200」とは

ここから本文です

これがフォードの本気! WRCで勝つために作られた最強の市販車「RS200」とは

掲載 更新 2
これがフォードの本気! WRCで勝つために作られた最強の市販車「RS200」とは

WRCを戦うためにゼロから開発された

 閉鎖した区間で競技が行われるとは言うものの、スペシャルステージをつなぐリエゾン区間も走ることから、ラリーでは市販のロードゴーイングカーをベースとして競技車両が製作されてきました。そして世界ラリー選手権(WRC)が制定された当初はグループ(Gr.)4カーが総合優勝を争っていましたが、1981年に国際自動車スポーツ連盟(FISA)が車両規定を一新。それまで数字で分けられていたカテゴリーをアルファベットで表すようになりました。そして83年からWRCではGr.Bが主役を務めることになりました。

30年落ちなのに「新車」より「中古」が高い! スーパーカーでもないのに「驚き価格」の国産車4選

 下位カテゴリー、例えばGr.2やGr.Aに規定以上のチューニングを施したクルマが編入されるのはGr.4もGr,Bも同様でしたが、最低生産台数がGr.4の400台から200台に半減されたことで、多くのメーカーがGr.Bカーを製作してWRCに参戦してきました。そのほとんどは市販のロードゴーイングモデルをベースにしていましたが、今回紹介するフォードRS200は、Gr.BによるWRCを制覇するために、ゼロベースから開発されたスペシャルモデルでした。

レース技術の集大成がミッドシップの4WDで公道に出現

 RS200を手掛けたのは、数多くのF1GPカーやGr.Cカーを手掛けてきたトニー・サウスゲート。アルミハニカム製のモノコックのミッドシップにエンジンを搭載し4輪を駆動するというもので、当時のWRCで主流になっていたパッケージでしたが、組付けられるサスペンションも、レーシングカーでは当たり前に採用している前後ともにダブルウィッシュボーン式とされていました。

 またボディカウルは、アルミなどを多用して軽量化を追求していたライバルよりもさらに過激で、ガラス繊維強化樹脂、いわゆるGFRPで成形したパネルが使用されていました。

 搭載されるエンジンはコスワースRS200の愛称からも想像できる通り、レーシングエンジンのスペシャリストであるコスワースが開発した、1.6ℓ直4ツインカム16バルブのBDAをベースに、排気量を1803ccにまで拡大するとともにギャレット製のターボを装着したBDTユニットを採用。ベースモデルでも250馬力を捻り出していたから、重量が1200kgを切るボディに対しては十分以上のパフォーマンスを発揮していました。さらに、競技用のワークスカーでは公称出力では450馬力を絞り出していたとも伝わっています。

 そんなエンジンからの駆動力は、直接にプロペラシャフトを通してフロントに置かれた一体式のトランスミッション&フロントデフに伝えられ、さらにもう1本のプロペラシャフトでフロントのデフからリアのデフに駆動力が戻ってくる、という少し複雑な駆動レイアウトを採用していました。たとえて言うなら日産GT-Rのパッケージングを前後逆に置き換えたようなパッケージングとなっていたのです。このように、当時としての最新技術が投入されていますが、ここまでは競技用車両、あるいはそのベース車両としては、まだ想定内でした。

 その一方で、RS200がGr.Bカーのライバルたちと一線を画していたのは、エクステリアデザインでした。他のライバル、アウディ・クワトロ、プジョー205T16などは、市販モデルのロードゴーイングカーをベースにしていて、エクステリアデザインも、基本的にはベースモデルのシルエットを持っていました。しかし彼らはGr.Bの“マシン”に生まれ変わる段階で、例えばクーリングのダクトが大きくされたり、新たにシュノーケルが追加されたりした結果、オリジナルのシルエットが所々で破綻していたように思われます。

デザインの雄、カロッツェリア・ギアが関与した戦闘マシン「RS200」

 ところがRS200は“マシン”に生まれ変わることを前提にデザインがまとめ上げられていたのです。当時フォードの傘下にあったイタリアのコーチビルダー、カロッツェリア・ギアが担当しており、ベースモデルと競技車両の差があまり感じられませんでした。ですから迫力満々のライバルに交じってラリーのパルクフェルメで憩う、流麗なスタイリングのRS200は、まるで掃き溜めに鶴のような華麗さがありました、というとちょっと言い過ぎでしょうか。

 個人的にはランチャ・ラリー037の流麗さが一番のお気に入りでしたが、ワークスのマルティ二・カラーはずいぶんと派手でしたから、フォード・ワークスであるMスポーツの、大人しいカラーリングもお気に入りで「自分で手に入れるんだったら037よりもRS200だなぁ」と、身に過ぎる夢を見ていたことを思い出しました。それもそのはず今でもどちらも価値ありありで、今年の2月にイギリスで行われたシルバーストーンオークションでは、単純シンプルの市販バージョンであるRS200でも2500万円余で落札されていました。

 ホワイトボディに紺のストライプが映えるワークスカラーの個体はフランスのマノワール自動車博物館とシュルンプ・コレクション(国立自動車博物館)で、深紅のロードゴーイングモデルは四国は高知県の香南市にある四国自動車博物館で撮影。

こんな記事も読まれています

【トヨタ分析】「ガチンコ勝負でパワーが落ちた」7号車のトラブル。「ワーストコンディション」で光った8号車平川/ル・マン24時間
【トヨタ分析】「ガチンコ勝負でパワーが落ちた」7号車のトラブル。「ワーストコンディション」で光った8号車平川/ル・マン24時間
AUTOSPORT web
フェラーリが快挙! 90年ぶりのにル・マンとモナコGP同年優勝。連覇達成で「まぐれではないことを証明した」
フェラーリが快挙! 90年ぶりのにル・マンとモナコGP同年優勝。連覇達成で「まぐれではないことを証明した」
AUTOSPORT web
F1復帰を諦めるつもりはないと主張するシューマッハー。一方でシート獲得に向けて戦うのは「消耗する」と明かす
F1復帰を諦めるつもりはないと主張するシューマッハー。一方でシート獲得に向けて戦うのは「消耗する」と明かす
AUTOSPORT web
元国民的アイドルが500万超の「国産カスタムカー」を購入! 加護亜依が“即決買い”する姿に「びっくり!」「センスいい~」と話題
元国民的アイドルが500万超の「国産カスタムカー」を購入! 加護亜依が“即決買い”する姿に「びっくり!」「センスいい~」と話題
くるまのニュース
狂気の空力マシンで300馬力 スターリング・モスが395km/hを記録した日 歴史アーカイブ
狂気の空力マシンで300馬力 スターリング・モスが395km/hを記録した日 歴史アーカイブ
AUTOCAR JAPAN
高橋巧筆頭に3連覇狙うTeam HRC。「誰が乗っても速く走れると思っていた」新加入の名越と荒川が感じた課題/鈴鹿8耐テスト
高橋巧筆頭に3連覇狙うTeam HRC。「誰が乗っても速く走れると思っていた」新加入の名越と荒川が感じた課題/鈴鹿8耐テスト
AUTOSPORT web
RB代表「リカルドが結果を出せるよう努力している」必要とするものを与えるのはチームの責任だと語る
RB代表「リカルドが結果を出せるよう努力している」必要とするものを与えるのはチームの責任だと語る
AUTOSPORT web
ベントレーがゴージャスな「大人エレベーター」を手掛けたら…「How do you Bentley?」で「B世代」にアピールしたかったものとは
ベントレーがゴージャスな「大人エレベーター」を手掛けたら…「How do you Bentley?」で「B世代」にアピールしたかったものとは
Auto Messe Web
リバティ・グローバルがフォーミュラEの経営権を取得へ。保有比率65%の主要株主に
リバティ・グローバルがフォーミュラEの経営権を取得へ。保有比率65%の主要株主に
AUTOSPORT web
トヨタ新型「“タフ”ミニバン」発表! 斬新“大口顔”が超カッコイイ! MT&アンダー320万円設定ありの「プロエース“シティ”」墨に登場
トヨタ新型「“タフ”ミニバン」発表! 斬新“大口顔”が超カッコイイ! MT&アンダー320万円設定ありの「プロエース“シティ”」墨に登場
くるまのニュース
「南海フェリー」がトラック乗りの強い味方に! 始発便の「早乗り」がドライバーに優しいサービスだった
「南海フェリー」がトラック乗りの強い味方に! 始発便の「早乗り」がドライバーに優しいサービスだった
WEB CARTOP
愛車の履歴書──Vol41. 大黒摩季さん(後編)
愛車の履歴書──Vol41. 大黒摩季さん(後編)
GQ JAPAN
テインから『ギャランフォルテス』用車高調「ストリートアドバンスZ」が発売
テインから『ギャランフォルテス』用車高調「ストリートアドバンスZ」が発売
レスポンス
わがままを叶えてくれるプレミアムSUV──新型レクサスNX350“F SPORT”試乗記
わがままを叶えてくれるプレミアムSUV──新型レクサスNX350“F SPORT”試乗記
GQ JAPAN
なぜ「ペダル踏み間違え」起きる? 原因はどこにある? 相次ぐ「重大事故」は“高齢者”特有の問題ではない! 有効な「対策法」はあるのか
なぜ「ペダル踏み間違え」起きる? 原因はどこにある? 相次ぐ「重大事故」は“高齢者”特有の問題ではない! 有効な「対策法」はあるのか
くるまのニュース
カーメイト、新型ワイドリアビューミラー発売…ホンダ WR-V などに対応
カーメイト、新型ワイドリアビューミラー発売…ホンダ WR-V などに対応
レスポンス
ミック・シューマッハー、来季F1復帰の可能性はあるのか?「それが僕の目標だけど……僕がコントロールできることじゃない」
ミック・シューマッハー、来季F1復帰の可能性はあるのか?「それが僕の目標だけど……僕がコントロールできることじゃない」
motorsport.com 日本版
神奈中の赤い「連節バス」ついに横浜へ登場 箱根駅伝ルート経由で駅 団地結ぶ
神奈中の赤い「連節バス」ついに横浜へ登場 箱根駅伝ルート経由で駅 団地結ぶ
乗りものニュース

みんなのコメント

2件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村