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290万円以下のクラシック・スポーツ ランチア・ベータ・モンテカルロ ポルシェ914 1970年代の2台

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290万円以下のクラシック・スポーツ ランチア・ベータ・モンテカルロ ポルシェ914 1970年代の2台

身近な存在になったミドシップ・スポーツカー

1970年代、ミドシップ・スポーツカーは身近な存在になった。モーターショーの展示台に飾られるコンセプトカーから、一般道を走る量産車へ急速に展開していった。

【画像】290万円以下のクラシック・スポーツ 1970~1980年代 現行のAMG SLとコルベットも 全133枚

北米を中心に人気を集めた英国製スポーツカーは、その頃には賞味期限が過ぎていた。他国のメーカーが手頃な2シーター・モデルを売り込むのに、丁度良い状況でもあった。

そんな1970年代から、1万8000ポンド(約289万円)の予算で狙えるクラシック・スポーツカーを選ぶなら、ランチア・ベータ・モンテカルロとポルシェ914という2台が挙げられる。生産期間はずれているが、ジュニア・スーパーカーとして好対照だと思う。

1969年に生産が始まった914は、FRモデルのポルシェ924と入れ替わるように、1976年にディーラーから姿を消した。一方のベータ・モンテカルロは1975年に発表され、途中の生産停止を挟みながら、1984年まで提供が続いている。

どちらも4気筒エンジンをシャシー中央に搭載するミドシップ。圧倒的なスピードではなく、機敏な操縦性に強みがある。

914はカルマン社が、ベータ・モンテカルロはピニンファリーナ社が製造を担った高価なボディを相殺するべく、可能な限り量産車の部品を流用している点でも共通する。タルガトップやスパイダーなど、ボディスタイルも凝ったものだった。

フォルクスワーゲンとの共同開発

ベータ・モンテカルロは、フィアット124クーペの後継モデルとして開発が進められ、同じくフィアットX1/9の格上モデルに据えられる予定だった。しかし、量産化の直前にランチアへブランドチェンジ。新しい名前が与えられた。

実際、技術者のアウレリオ・ランプレディ氏が設計した2.0Lツインカム・エンジン以外、ベータ・シリーズとの共通点は殆どなかった。本来の流れを汲む、FFのベータ・クーペも存在していた。

北米市場へは、ランチア・スコーピオンという名前で上陸。しかし、排出ガス規制に対応するため馬力が削られ、スタイリングを壊す大きなバンパーが与えられ、充分な人気は得られなかった。1年で彼の地での販売は終了している。

初期のベータ・モンテカルロは、フロントブレーキがロックするという深刻な問題を抱えていた。それを改善するため1978年に生産は一時停止され、1980年からシリーズ2として提供されている。

対するポルシェ914は、フォルクスワーゲンとの共同で計画がスタート。設計・開発を主に担ったのはポルシェで、新たなエントリーモデルの創出を目的としていた。デチューン版の2.0Lフラット6を搭載した、912の交代も視野にあった。

フォルクスワーゲンは、カルマンギアにかわるスポーツモデルの獲得を考えていた。しかし、新しく同社CEOに就任したクルト・ロッツ氏は、ポルシェとの緩やかな協働関係に疑問を抱き、デザインの権利を巡って対立してしまう。

生産数が遥かに少ないベータ・モンテカルロ

最終的には、ポルシェがフォルクスワーゲンへマージンを支払うことで決着。手頃なスポーツカーが想定されていたにも関わらず販売価格へ転嫁され、911とさほど違わない金額へ上昇。生産開始も遅れてしまった。

新開発のシャシーには、インジェクション化されたフォルクスワーゲン・タイプ4用の水平対向4気筒エンジンが載った。914/6として水平対向6気筒版も追加されたが、販売は振るわなかった。914が12万台近く生産されたのに対し、3351台へ留まっている。

公式には、914の右ハンドル車は作られておらず、6台が英国でコンバージョンされている。そのため、スポーツカー好きが多い英国ながら、馴染みが薄いポルシェといえる。

ベータ・モンテカルロは、グループBマシンがラリーで、グループ5マシンがサーキットで活躍したが、生産数は遥かに少ない。1982年までに7798台がラインオフしている。その内の2160台は、シリーズ2が占めている。

程よく肉付きが良く、タイヤの存在感が強いベータ・モンテカルロの方が、並ぶとハンサムに見える。細身でアイデンティティが弱いものの、ワイドなキャビンと前後に荷室を備える914は、パッケージングで優れる。

英国へ導入されたベータ・モンテカルロの多くは、リアデッキにガラス張りのフライングバットレスを背負っていた。だが、今回のブルー・グリーンの例は生産初期の左ハンドル車。ロンドン・モーターショーに展示された車両で、スチールで覆われている。

ドライバーの気持ちをそそる914のインテリア

ベータ・モンテカルロのインテリアは明るく開放的。ステアリングコラムのレバーはフィアット128譲りながら、デザインには同時期のフェラーリのような上質感が香る。パワーウインドウも備わる。ペダル配置はタイトだ。

ツインカム4気筒エンジンは、サイドヒンジで開くリッドの下に、20度傾いて搭載されている。ミドシップのメリットを、最大限に活用されている。

914の水平対向4気筒は、低いリアデッキの下。レッドの今回の例は1971年式で、オリジナルの1.7Lユニットが維持されており、かなりレアだ。5速トランスアクスル・マニュアルは、後端の荷室の下に潜っている。

インテリアは質素だが、ステアリングホイールは911譲り。堅実にデザインされた雰囲気が、ドライバーの気持ちをそそる。両車ともコーナーでの横Gを支えてくれる、サイドボルスター付きのシートが組まれている。小物入れは殆どない。

最高出力で33ps高いベータ・モンテカルロは期待通り速く、0-97km/h加速は8.9秒と
914より2秒ほど鋭い。ドライバーの直後で、ウェーバー・キャブレターが大きい吸気音を放つから、スピード感も高い。

シフトフィールは少し曖昧で、慣れが必要だろう。選びたいギアの位置を、確認しながら倒す必要がある。今回の例ほど機敏に走れるベータ・モンテカルロは、現在では一握りだろうと想像もしてしまう。

ミドシップらしく機敏に反応するシャシー

一方、914のフラット4は滑らかに回る。ビートルのような粗っぽいノイズは立てず、洗練されている。トルクも太く、僅か86psという最高出力以上に活発に感じられる。

回転の上昇はやや重苦しい。高回転域まで回しても、目立った恩恵は得られない。ベータ・モンテカルロと同様に。

ステアリングホイールは、シフトレバーと同じく914の方が重い。小さなミドシップらしく、シャシーは機敏で正確に反応する。グリップ力も意外なほど高い。サーキットを攻め込むと、アンダーステアで危険性を教えてくれる。

公道の速度域では、カーブでアクセルペダルを一気に緩めるとノーズが内側へ食い込んでいく。テールは安定して路面を掴み続ける。もう少しパワーが欲しくも感じられた。

この2台は、北米市場での販売拡大を目的に生み出された。大学へ進学した10代後半の子どもへ、運転も楽しめる通学手段として、小柄でスポーティな欧州車を買い与える富裕層が一定数存在していた。

当時の若者の写真には、914が一緒に写っていることも多いはず。そのなかの数枚は、スコーピオンも一緒かもしれない。

協力:デビッド・ウィルコック氏、マーク・シーモンズ氏

ランチア・ベータ・モンテカルロとポルシェ914 2台のスペック

ランチア・ベータ・モンテカルロ(1975~1978年、1980~1982年/英国仕様)

英国価格:2261ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約402万円)以下(現在)
販売台数:7798台
全長:3810mm
全幅:1690mm
全高:1190mm
最高速度:191km/h
0-97km/h加速:8.9秒
燃費:10.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:1040kg
パワートレイン:直列4気筒1995cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:119ps/6000rpm
最大トルク:16.8kg-m/3500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

ポルシェ914 1.7(1969~1976年/欧州仕様)

英国価格:801ポンド(新車時)/3万5000ポンド(約563万円)以下(現在)
販売台数:11万8978台
全長:3985mm
全幅:1650mm
全高:1230mm
最高速度:177km/h
0-97km/h加速:11.0秒
燃費:9.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:899kg
パワートレイン:水平対向4気筒1679cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:86ps/4900rpm
最大トルク:15.0kg-m/2900rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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  • どっちもイイ車だった 30年以上前に買おうとしたが、予算が維持費込み150万の為に手が届かず、70万でX1/9を買った。 全く壊れず維持費用はチューニングに化けました 今じゃ考えられん。
  • >車両重量:899kg

    914てこんなに軽かったんだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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