日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表した2020年1月の新車販売台数を見ると、インプレッサ(XV含む)が4160台となり、対前年比は211.7%に達した。
対前年比が2倍以上と、ここまで対前年比が延びた原因はどこにあるのか? ここで改めてインプレッサ、XVの魅力についても迫っていきたいと思う。
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文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】魅力倍増の新型インプレッサ/XVの詳細写真&販売台数内訳
マイナーチェンジしたインプレッサ&XVの売れた原因はどこにある?
2016年10月13日に発表されたD型インプレッサ。2Lモデルが2016年10月25日発売、1.6Lモデルの発売は2016年6月末だった。2019年10月に発表されたマイナーチェンジモデルの発売は2Lが2019年11月15日発売、1.6Lモデルの発売は2020年初頭。これまでメッキ加飾されていたメッキのないフレームレス仕様になり、ヘッドライト&フォグランプが新デザインに変更されたほか、横一線につながる新デザインのバンパーやアルミホイールに変更されたのがトピックス
2017年4月6日に発表され、5月24日に発売されたD型XV。2018年11月2日にe-BOXERが追加。今回のマイナーチェンジモデルは2019年10月10日に発表され、2Lモデルの発売は11月15日、1.6Lモデルの発売は2020年初頭。一方XVは新デザインのLEDハイ&ロービームライトやリアフォグランプに変更されたものの、インプレッサのようなエクステリアの大がかりなデザイン変更は行われなかった
日本自動車販売協会連合会が集計した2020年1月の新車販売台数によると、インプレッサ(XV含む)が4160台となり、対前年比は211.7%に達した。
インプレッサは2019年10月に比較的規模の大きなマイナーチェンジを受けたが、現行型の発売はインプレッサスポーツとG4が2016年、XVも2017年だから新型車ではない。今になって前年の2倍以上に達する売れ行きは凄いことである。
■ここ6ヵ月間のインプレッサ(XV含む)新車販売台数
・2019年8月:2772台(81.6%)総合26位
・2019年9月:4114台(101.2%)総合23位
・2019年10月:1615台(43.0%)総合33位
・2019年11月:3513台(72.9%)総合17位
・2019年12月:2989台(72.2%)総合20位
・2020年1月:4160台(211.7%)総合14位
※自販連調べ
■2020年1月のモデル別販売台数
・インプレッサG4/366台
・インプレッサスポーツ/1588台
・XV/2199台
※スバル調べ
そこでスバルの販売店に好調に売れている理由を尋ねた。
「インプレッサとXVのマイナーチェンジの発表は、2019年10月10日、発売は2L車が11月15日、1.6L車は2020年初めとなっています。
やはり今回のマイナーチェンジの大きな目玉は運転支援機能をアイサイトツーリングアシストに進化したことで、渋滞時でもステアリングの制御を続けられるようになりました。
ハイビーム状態を維持しながら、対向車の眩惑を抑えるアダプティブドライビングビームも設定されています。快適装備も向上して外観も洗練させたので、従来型からマイナーチェンジ後の新型に乗り替えるお客様が増えました。
もともとスバルのお客様は、フルモデルチェンジだけでなく、マイナーチェンジで乗り替える傾向が強いです。
販売が好調なこともあり、マイナーチェンジを受けたインプレッサの納期は、今は少し長いです。そのために2020年に入って納車が進んだ事情もあります」と説明してくれた。
※インプレッサ、XVのマイナーチェンジ情報についてはこちらをクリック!
インプレッサとXVは2019年10月10日にマイナーチェンジを発表したが、納車を伴う「発売」は2019年11月15日で、1.6Lエンジン搭載車は2020年初頭までズレ込んだ。
そのためにインプレッサ+XVの登録台数は、2019年1~9月までは前年と比べて若干少ない程度だったが、10月の対前年比は43%まで落ち込んでいる。
従来型からマイナーチェンジ後の新型に切り替わる時期だから大幅な減少になった。この後、マイナーチェンジが実施された2019年11月も72.9%、2019年12月も72.2%だから前年実績を下まわった。
続いて、スバル広報部に、2020年1月の販売台数が伸びた理由を聞いた。
「ビッグマイナーチェンジしたインプレッサ、XVはツーリングアシストを標準装備としたことで受注は好調に推移してきましたが、登録は台風19号による出荷遅れにより、12月から本格的に進み始めました。また1.6Lモデルの登録(納車)が始まった(1月発売)ことで伸長しています」とのこと。
このような売れ方になった理由は、マイナーチェンジの発表が10月なのに、納車の開始は2Lエンジン車が11月、1.6Lは翌2020年1月と時間差が長引いたからだ。
受注はしているのに納車が滞り、登録台数も伸ばせなかった。2020年1月になって、この受注台数を一気に登録したから、対前年比が急増した。
またインプレッサ+XVは、2018年10月11日にも改良を発表しており(要は毎年改良している)、納車を伴う発売はインプレッサが同年11月2日、XVは10月19日であった。
この時も改良の影響でインプレッサ+XVの対前年比は10月が69.6%に下がり、11月は112.3%に増えたが、12月は再び69.9%になった。
しかも2019年1月には、群馬製作所が生産するインプレッサ、XV、フォレスターの電動パワーステアリングに不具合の可能性のあることが分かり、1月16日から27日まで生産と出荷を停止した。この影響で2019年1月のインプレッサ+XVの登録台数は、対前年比が44.3%に激減している。
つまり2019年1月には登録台数が大幅に減り、2020年1月はマイナーチェンジの効果で増えたから、2020年1月の登録台数は対前年比が2倍以上になった。対前年比を上乗せする事情が2つ重なったわけだ。
2019年2月の対前年比は81.6%、3月は78%と回復に向かったが、依然としてマイナスが続いた。改良の効果が登録台数に表われたのは、4月になって対前年比が98.5%に持ち直した以降だ。その意味では、インプレッサ+XVの対前年比は、今後しばらくプラスを保つ可能性が高い。
インテリアはマルチファンクションディスプレイ、シート材質、マルチインフォメーションディスプレイ付きメーターが新デザインに変更された。ステアリング右側には全車速追従機能付クルーズコントロールやステアリングアシストのスイッチを配置。ステアリング右下には、ステアリングに連動してヘッドライトの向きが変わる「SRH(ステアリングレスポンシブヘッドライト)」や「スバルリアビークルディテクション(後側方警戒支援システム)」のON/OFFスイッチなどを配置
スバルは大企業だが、ほかの自動車メーカーに比べると規模は小さい。そのためにエンジンやプラットフォーム、車種の数を少なく抑えている。新型車の発売も1~2年に1車種程度だ。
しかも2014年には、レヴォーグ、WRX、レガシィをまとめて発売したから、その後は新型車が滞った。2016年にインプレッサ、2017年にはXV、2018年にはフォレスターを発売したが、2019年は登場していない。
この状況で重要になるのが、綿密な改良とマイナーチェンジだ。インプレッサのようにほぼ毎年改良を加えれば、商品力を高く維持できる。
先代インプレッサは、翌年にフルモデルチェンジを控えたモデル末期の2015年に、ハイブリッドを追加した。同じ年に改良も実施している。
最後まで進化を怠らず、常に最良のスバル車をユーザーに届ける。この技術指向のクルマ作りは、安全のために視界にこだわる商品開発を含めて、スバルの大切な個性になっている。
だからこそ、セールスマンが述べたように「スバルのお客様は、フルモデルチェンジだけでなく、マイナーチェンジで乗り替える傾向が強い」わけだ。
マイナーチェンジしたインプレッサ、XVは買いか?
先行車追従クルーズコントロールはアイサイトVer.3では0~100km/hの最高速度としていたものをツーリングアシストではそれぞれ0~120km/hに引き上げた。 速度計などの誤差があるため、実際に設定できる速度はアイサイトVer.3の114km/hから、135km/hに変更
マイナーチェンジしたインプレッサ&XVは大きな武器を手に入れたと言える。全車標準装備となったアイサイトツーリングアシストはソフトウェアの変更により、ハードウェアこそVer.3と共通ながら、予防安全性能をそのままに、運転支援機能が大幅に増強された。
その最大の効果は、渋滞時の先行車追従時に発揮される。これまで、アクティブレーンキープの作動領域は55km/h以下では作動を停止していたが、新たに0~135km/hで使用できるようになったのだ。
また、作動条件として車線両側2本が完全に識別できねばならなかったものが、片側車線(0~135km/h)および先行車追従(0~60km/h)でもレーントレースが可能。
これにより、渋滞時のペダル操作と車線トレースから、ドライバーはほぼ開放されることになったのが嬉しい。
片側1車線のバイパスでは、左側車線が摩耗していて見えないことが多くあるが、こういったシーンでも、ツーリングアシストであれば、継続的にレーントレースが可能になったのだ。
また、一部高速道路での制限速度引き上げ施行に伴って、運転支援機能の作動上限速度も引き上げられている。
先行車追従クルーズコントロールは0~135km/h(実測120km/h)でセット可能で、145km/h以上で自動解除となり、またレーントレースも同様に0~135km/h(実測120km/h)でセット可能で、145km/h以上で自動解除となる。
XVに関しては今回のマイナーチェンジで、2LのNAモデルが廃止。最高峰グレードのAdvanceはそのままに、18インチ仕様の2.0e-S EyeSight、17インチ仕様の2.0e-L EyeSightを加えた、e-BOXERの3グレード構成となった。
またX-MODEの内容が改良されて現行フォレスターと同じ「SNOW・DIRT」と「DEEP SNOW・MUD」の2モードが利用できるようになった。 ただし、インプレッサで行われたデザイン変更はXVではデザイン行われず、フロントビューモニターの搭載も見送られた。
乗り心地の向上も大きなポイント
スバルは毎年行う年次改良によって年を追うごとによくなっていくが、今回のマイナーチェンジについても大幅に進化していた
今回のマイナーチェンジで見逃せないポイントは乗り心地の向上だ。フロントサスペンションの仕様を変更し、フロントスプリングの形状と減衰力特性を変更した。
細かく見ていくと、フロントに若干残る突っ張り感を和らげるため、スプリング形状と減衰力特性を変更。ブレーキング時にギャップに乗った瞬間に感じるフロントの硬さを和らげつつ、コントロール性とスタビリティを向上させ、 ダンパーおよびEPSの特性を最適化するとともに、クロスメンバーとリアサブフレームの溶接を見直して強度向上を図っている。
昔からスバルのエンジニアの仕事は、フルモデルチェンジで終わりではないと言われてきた。エンジニア自らが、継続的にテストドライブを繰り返すことで、弱点を徹底的に炙り出し、年次改良やマイナーチェンジで次々に対策を打って、どんどん熟成を図っていく。それがスバルの“らしさ”なのだ。
今回のビッグマイナーチェンジは、こうしたスバル本来の“らしさ”を感じさせるものだった。だからこそ、販売が伸長したのだ。
さらに今回の足回りの改良にはSTIも参画しているというが、スバル&STIが一体化したワンチームとしてのクルマ作りによってブランドがさらに強くなっていくだろう。次期レヴォーグも新車開発からワンチームで行われているというから期待できそうだ。
なぜ北米では新型なのに日本で売っているレガシィは旧型なのか?
最後に“苦言”を記しておきたい。このスバルの良心が、最近は少し怪しくなってきた。北米には2019年7月に新型レガシィを投入したのに、国内仕様は2019年9月に改良を実施しただけで、2020年に入った今でも旧型を売り続けているからだ。
海外で売られる新型レガシィには、新しいプラットフォームが採用され、ドライバーの運転状態をチェックするドライバーモニタリングシステムなども設定している。これを国内に投入しないのはどうかと思う。
最近の日本車メーカーは、海外先行のフルモデルチェンジを行うケースが増えた。ホンダアコードは海外では2017年10月に新型を投入しながら、日本では2013年に発売された旧型を売り続けていたが、ようやく新型を2020年2月21日に発売開始した。
近々フルモデルチェンジするが、海外に比べれば3年近くが経過しているから、もはや新型とは呼べない。日産のジュークやシルフィも、海外では新型が発売されたのに国内では旧型を売っている。
このような日本車メーカーの情けない状況を考えると、レガシィを責めることもできないが、スバルの企業イメージは前述の通り「0次安全」の思想を含めた安全重視にある。旧型レガシィのラインナップは、最もスバルらしくない売り方だ。
現在日本で販売されている現行レガシィB4。次期型の国内投入は2020年末から2021年初めにかけて行われる見通し
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