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カーボンモノコックのスペチアーレ「F50 & エンツォ」(1995-2002)【フェラーリ名鑑】

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カーボンモノコックのスペチアーレ「F50 & エンツォ」(1995-2002)【フェラーリ名鑑】

F40に続く新たなスペチアーレ「F50」

フェラーリのロードカーで、ひとつの頂点として語られる存在が、一般的には“スペチアーレ”と呼ばれることも多い、限定生産を前提としたハイパフォーマンスモデルだ。このスペチアーレのカスタマーは、購入希望者の中からフェラーリによってセレクトされることがほとんどで、価格高騰を防ぐために一定期間の転売防止を成約する書類にサインを求められるともいう。いずれにしても、このスペチアーレに自らのステータスが届くまでの時間と努力、そして資金は相当に大きなものになるというのが実際のところだ。

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限定台数を最初から349台と明言して、その生産を1995年に開始した「F50」。1987年に誕生したF40では、明確に生産台数は限られてはいなかったから、結果的には1300台以上のF40がマラネロの本社工場のゲートから世界に向けて出荷されることになってしまった。それはフェラーリにとっては必ずしも望ましいことではなかったのだ。

公道走行が可能なF1マシン=F50

このF50で開発コンセプトに掲げられたのは“オンロード F1”。すなわち公道走行が可能なF1マシン。それを操ることができるカスタマー、そして今は亡き創業者のエンツォが常に唱えていた、必要とされる数より1台少ない数がベストだという持論に基づき、F50は最終的に349台の限定車として生産されることが決定した。生産が開始されたのは1995年のことで、これは最後の1台を50周年となる1997年に出荷すると同時に、それ以前のタイミングなら厳しさを増す新たな排出ガス規制をクリアできるという理由から決定されたスケジュールだった。

F50が“オンロードF1”と例えられるのは、基本構造体のカーボンモノコックにV型12気筒エンジンがリジッドマウント、すなわち剛結されていることがその理由。同時にエンジンはサスペンションの構造部材をも兼ねていた。V12エンジンの最高出力は実に520ps。最高速度は325km/hにまで達する。

2002年「エンツォ フェラーリ」発表

さらに2002年には、創業者の名前をそのまま車名とした「エンツォ フェラーリ」が誕生する。デザイン・プロトタイプ、FXのワールドプレミアを東京で行い、その後パリ・サロンで正式発表されたそれは、もちろん限定生産を前提としたスペチアーレ。生産台数はF50と同様に349台を計画したが、それは後に399台に改められ、さらに後日、ローマ教皇、ヨハネ・パウロ2世からのオーダーに応えて1台を特別に製作。1億5000万円強の落札金の全額は災害の義捐金として寄付された。

遂に350km/hに到達した最高速度

日本人デザイナーの奥山清行をチーフ・スタイリストとするピニンファリーナのチームが手がけたエンツォのボディデザインは、当時最新のF1マシンを彷彿させる、実に刺激的なフィニッシュをもつものだった。シザースドアの採用や、円柱形のテールランプを半分だけ露出するデザインなどは独創的で、同時にインテリアもより快適な空間になった。搭載エンジンは、5988ccのV型12気筒。最高出力は660psと非常に強力で、6速のF1マチックと組み合わされる。参考までにこのパワーが負担する車重は、ドライウエイトで1255kg。最高速度は350km/hを実現した。

【SPECIFICATION】

フェラーリ F50

年式:1995年

エンジン:65度V型12気筒DOHC(5バルブ)

排気量:4698cc

最高出力:382kW(520hp)/8500rpm

最大トルク:471Nm/6500rpm

乾燥重量:1230kg

最高速度:325km/h

エンツォ フェラーリ

年式:2002年

エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)

排気量:5998cc

最高出力:485kW(660hp)/7800rpm

最大トルク:657Nm/5500rpm

乾燥重量:1255kg

最高速度:350km/h

※すべてメーカー公表値



解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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