市販EVのパイオニアである三菱「i-MiEV」や日産「リーフ」は通常のカタログモデルとして、いつでも購入可能な体制を作っている。しかし、最近登場したEVやPHEVは、台数限定や年度ごとの受注台数が決まっており、いつでも買える物ではなくなってしまっている。
なぜ台数を絞っているのか? 普通に販売できないのはナゼなのか? 売れないことへの不安なのか? それともそもそもそんな生産能力がないのか? 購入したい人からすると嬉しくない現状はなぜなのか考察していきたい。
「わ」ナンバーなぜ激増? レンタカー&カーシェアリングの実態と最前線
文/渡辺陽一郎
写真/編集部、LEXUS、SUZUKI
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■注目のEV&PHEVはいつ手に入る!? その最新事情
最近はEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド/充電可能なハイブリッド)が増えている。この背景には、欧州のCAFE(企業別平均燃費)を筆頭に、今後実施される厳しい燃費規制がある。CAFEは各車種ではなく企業別に平均燃費を規制する制度だから、EVやPHVを増やして燃料消費量を抑えれば、ほかの燃費の悪い車種を補うことが可能だ。
そこでEVやPHVの新型車が続々と投入されているが、最近発表された車種を見ると、販売規模が全般的に小さい。
トヨタ「RAV4 PHV」は、2020年6月に発売され、1カ月の販売目標が300台とされる。2019年度(2019年4月から2020年3月)に、RAV4は1カ月平均で約6000台を登録したから、PHVが1カ月平均で300台というのはかなり少ない。そのためにRAV4 PHVは、発売直後の7月上旬に、「2020年度内の生産分を受注した」という理由で注文を停止した。
トヨタの販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「2020年11月中旬時点で、RAV4 PHVを契約することは可能ですが、生産や納車される日程は不明です。それでも生産が2021年3月以降になることは間違いないです。現時点で3月以降の生産を待っているお客様がおられますから、さらに長い順番待ちになるでしょう。2020年12月になると、受注した車両の納期がある程度はわかると思います」
すでに契約を済ませて2021年の生産を待っているユーザーがいるから、2020年11月中旬以降に契約した場合、納車は2021年5月以降になると思われる。
2020年6月8日に発売されたトヨタ「RAV4 PHV」。2020年度分の受注枠はあっという間に終了、今後の新規受注の再開予定はわかっていない
ホンダのEV「ホンダe」は、2020年10月に発売(発表は8月)された。1年間の販売計画は1000台だから、1カ月当たり83台と少ない。そこで複数回に分けて受注している。マンションのような売り方だ。第1期の販売は、発売前の9月に台数の枠が埋まって早々に終了した。第2期は2020年11月5日に開始されている。
そこで販売店に尋ねると、以下のような返答だった。
「2020年11月中旬の時点で、第2期も受注できる台数に達して締め切られました。次は第3期の販売ですが、いつ開始するかわかりません。仮に2021年3月としても、納車までに4カ月ほど要しますから、手元に届くのは7月頃でしょう」
2020年8月に発表されたホンダ「ホンダe」。ディーラーの情報によると、11月5日から開始された第2期のオーダー受付も受注台数の上限に達したそうだ
同じくEVのレクサス「UX300e」は、2020年10月に発売したが、2020年度分の販売台数が135台に限られていた。しかもメーカー(レクサス)のウェブサイトで申し込みを行い、抽選で商談できる人を決める方法を採用している。かつてのシビックタイプRに似た売り方だ。
販売店に尋ねると、以下の反応だった。
「販売方法が抽選になると、長年にわたってレクサスを乗り継いできたお客様に優先して売ることはできません。心苦しいところがあります。また2020年度分の135台は、10月の発売後早々に締め切られたので、今はUX300eを購入できません。次の発売時期などは知らされておりません」
先ごろ販売された135台で終了して、将来にわたって購入できない可能性もある。
このほかマツダ「MX-30」のEVも2021年1月に発売予定だが、マツダの販売店では「今のところメーカーから発売の予定などは聞いていません。受注開始の時期もわかりません」としている。
レクサス初のEV「UX300e」。わずか135台という受注枠は、あっという間に埋まってしまった。販売方法が抽選だったため、普段からディーラーを懇意にしていても購入することができなかった
2021年1月にEVモデルを投入することを公表している「MX-30」。受注開始時期、台数などは現在のところわかっていない
三菱「エクリプスクロスPHEV」は、2020年10月15日に予約注文の受け付けを開始して、12月4日に発売する。販売店によると「生産に余裕があり、今の予約受注の段階でも、1カ月半程度で納車できます。多少の遅延があっても、3カ月以上も待たされる心配はありません」という。
このように見ると、EVやPHVには、日本車なのに日本国内で購入しにくい車種が多い。少なくともホンダeとRAV4 PHVは、いつ納車されるかわからず、レクサス UX300eは実質的に販売していない。普通に購入できて販売実績も相応にあるEVとPHVは、リーフとアウトランダー/エクリプスクロスPHEV、プリウスPHV程度だ。
2020年9月17日に発表された三菱「エクリプスクロスPHEV」。アウトランダーと同じPHEVシステムを搭載している。リーフやi-MiEVと同じく、限定販売ではないので、注文すればいつでも手に入れることができる
■なぜEVとPHVの売り方はわかりにくいのか!? その真相
このようにEVとPHVの売り方や納期が曖昧でわかりにくい理由は、生産や販売する台数が少ないからだ。RAV4 PHVは1カ月に300台、ホンダeは83台という規模だから、発売しても割り当てられた台数が短期間で埋まってしまう。
なぜここまで台数が少ないかといえば、まずは生産規模の問題がある。EVには容量の大きなリチウムイオン電池などが必要とされ、その供給規模にも限りがある。生産が軌道に乗ったハイブリッドのように、大量に生産することは難しい。
ふたつ目は、EVやPHVは地域によって供給台数に差があり、日本はほかに比べて概して少ないことだ。例えばホンダeの年間販売計画は、日本では1000台だが、欧州では1万台だ。日本に供給される台数は、欧州の10%に留まる。その理由を開発者に尋ねると、以下のように返答された。
「ホンダeは、欧州のCAFEに対応することを当面の重要課題として開発されました。そのために欧州に積極的に投入します。ホンダeを販売する地域は、今のところ日本と欧州だけです」
RAV4 PHVも欧州で販売され、スズキに向けて、OEM車の「アクロス」も供給する。レクサス UX300eも同様で、欧州に重点を置く。ちなみに欧州では、「IS」などほかのレクサス車の多くも、ハイブリッドのみの設定になった。燃費規制もあり、モーターを搭載しない従来型のノーマルエンジン車は品ぞろえが減っている。
トヨタ「RAV4 PHV」のOEM供給を受けることで誕生したスズキ「アクロス」。スズキが欧州のみで発売することを発表しているが、CAFE対応のためだと考えられる
以上のようにEVやPHVは、新しいカテゴリーだから、もともと生産規模が小さい。しかも燃費規制の迫っている欧州の販売比率を増やしたから、日本市場に向けた供給台数がますます減り、受注方法などもわかりにくくなった。
ただしEVやPHVをせっかく用意したのに、納期がわからなくて購入できないのは困る。特にホンダeは全長が3895mmと短く、後輪駆動を採用するから前輪の最大舵角も増えて、最小回転半径は4.3mだ。小回り性能が優れ、コンパクトカーのなかでも特に運転しやすい。日本の道路環境にピッタリなEVだ。
日本では総世帯数の約40%が集合住宅に住むから、充電が必須条件になるEVは、所有しにくい面がある。それでも需要に対応できるだけの供給は行って欲しい。日本でもモーターを併用したクルマが求められ、急速充電器の設置も進んできた。EVやPHVは、欧州だけの商品ではなく、日本でも高い価値を発揮する。
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みんなのコメント
台数見れば分かる通り、始めから少数しか作ってないからですよ。
だから売り切れるのも早い。
そもそも高額出す物好きは少数派なので、会社の業績にはほぼ関係ない。
過剰な投資は不良債権になってしまう。経営者は分かって作ってる。
つくづく日本は豊かな国でお金持ちばかりでいいね。