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「空冷ポルシェの恐るべきチューニング適合度に迫る」500馬力なら純正パーツで対応可能!?

掲載 更新 48
「空冷ポルシェの恐るべきチューニング適合度に迫る」500馬力なら純正パーツで対応可能!?

精度と耐久性の高さは想像を遥かに超えるレベル!

500ps程度なら純正パーツで十分に許容できる

「空冷ポルシェの恐るべきチューニング適合度に迫る」500馬力なら純正パーツで対応可能!?

長い歴史を持った世界を代表するスポーツカーでチューニングに対する適応力が高く、国産スポーツカーからの乗り替え組も多いポルシェ911。日本において、そんな911チューンの草分け的存在といえるのプロモデットコミネだ。

「このところ水冷エンジンを載せた996以降も増えてきたけど、チューニングベースとなると、まだまだ993以前の空冷エンジン搭載モデルの方が多いな」と代表の小峰氏は言う。

中でも今回で取り上げるのは、目標馬力を500psとした場合にポピュラーと言える3.3Lフラット6ターボのM64型エンジンだ。

取材車両の黄色い993カレラはサーキット仕様として製作された1台。もともと搭載される3.6Lフラット6のNAエンジンでは、パワーを求めていくと耐久性に不安が残るということでM64に換装された経緯を持っている。

結論から先に言ってしまうと、M64での500psはエンジン本体がまったくのノーマルでも耐久性に不安を抱えることなく、タービン交換のみで達成できてしまう。

NA用EXマニを加工してIHI製C7タービンとHKS製ウエストゲートを装着。最大ブースト圧1.2キロ時に550psを発揮する。リヤエンドに見えるのは、タービンからのエンジンオイルを溜めてクランクケース内(ノーマルはオイルタンク内)に戻すためのタンクだ。

小峰氏いわく、「とにかく、純正パーツの精度と耐久性が抜群に高いから500psだったら余裕。ピストンは始めから鍛造品が入ってて、ブースト圧を2.0キロかけても問題ないし、クランクシャフトは1200psでもノーマルでいけちゃうくらいなんだからさ。ただ、パーツは純正でもイイけど、要所要所に手を加えてやらないとな」とのこと。つまりM64チューンでは、各部に施す加工がポイントになる。

そこで具体的な作業として挙げられるのが、まずポート径の拡大。これにより吸排気効率が格段に向上して、大幅なパワーアップを実現する。仕様を問わず、エンジンチューンを進めていく上では必須といえるメニューだ。

作業は2日半かけて小峰氏自らが行なう。ちなみにM64はクランクケースに対して片バンク3組ずつ、計6組のシリンダーとヘッドが個別に固定される。作業の時は効率を考え、治具を使って写真のように6個のヘッドを1列に並べてリューターで削っていく。

また、クランクシャフトを支えるクランクケースの支柱部分にはナイフエッジ加工が施される。これは、シリンダー側に向いている平坦部を削って、ナイフの刃のような鋭角に仕上げる作業。目的は、ピストンの往復運動で発生するクランクケース内の圧力をできるだけ下げることにある。結果フリクションロスが低減し、レスポンスアップをもたらしてくれる。

クランクケースをシリンダー側から見たところ。クランクシャフト支持部の形状の違いは一目瞭然だ。機械加工のような仕上がりだけど、実はこれも小峰氏がリューターを駆使して手作業で行なっている。エンジン1基を仕上げるのに丸2日を要するそうだ。

さらに、シリンダーとヘッドそれぞれの接合面にミゾを彫ってリングを入れるクーパーリング加工も重要。というのもM64には元々ヘッドガスケット自体が存在せず、アルミ同士が合わさっているだけだからだ。

それでもノーマルのブースト圧(0.8キロ)で乗る分には問題ないけど、ブーストアップするとそこからガスが吹き抜けてしまう。それを防ぐのがクーパーリング加工で、ブーストアップと同時に行う作業なのである。

そういった各部の加工と併せてプロモデットで交換を勧めているパーツが、オリジナルのカムシャフトと強化バルブスプリング&チタンリテーナー。作用角とリフト量を拡大したカムはレスポンスアップを、強化バルブスプリング&チタンリテーナーは高回転域でのバルブ追従性を高め、レブリミット7500rpmを実現する。

さらに、ツインプラグ化に加えて、アメリカ・マロリー製CDIを追加することで点火系を強化。高回転域でも確実に強い火花を飛ばして失火を防ぎ、燃焼効率を高めてパワーを引き出す。

スロットルボディはインフィニティ用φ90を流用。インタークーラーは国産車用コアをベースにサイドタンクを製作したもので、INφ75、OUTφ90のパイピングとともにワンオフ品となる。

燃調はモーテックM4によるDジェトロ化で800ccインジェクターをコントロール。「ノーマルは機械式のKジェトロだから制御が雑だし、トラブルの可能性もある。モーテックを使えば、シンプルかつ精度の高い制御ができるんだよ」と小峰氏。

もう1台、チューンドM64を載せるシルバーの964ターボも紹介。サーキット仕様の993カレラ改ターボに対して、こちらはストリート仕様として製作されている。

エンジン本体はシリンダー&ピストンはノーマルのまま、ポート拡大加工の上、強化バルブスプリングとチタンリテーナーを組んだヘッドチューン仕様となる。

そこに、アメリカB&B製EXマニを介してブリッツK5タービンとトラストウエストゲートが装着される。トラストプロフェックBスペックIIで制御される最大ブースト圧は1.2キロ。エンジン自体は純正ECUを排してモーテックM4でフルコン制御され、490psを発揮する。

どちらも厳選したパーツと緻密なセットアップ、空冷ポルシェを熟知するトップチューナーならではのノウハウが凝縮した、まさに理想的チューンドだ。

TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA/PHOTO:小林克好(Katsuyoshi KOBAYASHI)

●取材協力:プロモデットコミネエンジニアリング 埼玉県越谷市川柳町3-106-1 TEL:048-986-6444

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みんなのコメント

48件
  • 結局、チューニングが行き着くと一番重要なのは「丈夫な事」になる。
    いくら見た目良くても、音が良くても、レスポンスが良くても
    丈夫じゃなきゃ何の役にも立たない。
  • ストリート仕様なら触媒なしは違法でしょ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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