変則的に土曜開催のナイトレース決戦となった2024年のNASCARカップシリーズ第29戦『バスプロショップス・ナイトレース』は、次なるステージ“Round of 12”に向けプレーオフ16名のカットライン争いにも注目が集まるなか、レースの500周中で実に462周をリードし、両ステージ制覇も達成したカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、僚友チェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を7.088秒差で退ける「完璧な夜」を過ごすことに。
この圧倒的な支配により、ラーソンがNo.1シードで“Round of 12”に進出する一方、タイ・ギブスとマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)のJGR陣営2台や、ハリソン・バートン(ウッド・ブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)、そしてブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)にとっては厳しい結末となり、ここでシリーズチャンピオンシップを争う資格を失うこととなった。
豪州王者SVGわずかに及ばず。最終周の大逆転劇でクリス・ブッシャーが勝利/NASCAR第28戦
今季プレーオフ3戦目の舞台となったシリーズ最短トラックのブリストル・モーター・スピードウェイは、金曜走り出しのスケジュールこそ変わらないものの、決勝がいつもより一日早い土曜夜開催と密度の濃いコンパクトさが独特の緊迫感を生み出すことに。
そんな結末を知ってか知らでか、最初のフリープラクティス(FP)はギブスの54号車が最速発進を決めると、続く予選ではアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が今季初、そして同地でも最初のポールポジションを奪った。
「FPでは予想以上に苦戦したと思ったが、予選ではグリップがかなり効いたね」とキャリア通算5度目のポールウイナーに輝いたボウマン。
「少しタイトすぎたから、1周走ってみて『すごくいいか、すごく遅いか』という状況だった。タイトに行くとボトムスピードが落ちるから。かなりいい感触だったし、予選をうまく通過して先頭からスタート出来ることに感謝している」と続けたボウマン。
「予選はここ数年、僕らの得意分野ではなかった。カットオフレースだし、先頭からスタートすることは間違いなく重要だね」
こうして始まった0.533マイル(約857.8m)ショートオーバルでの勝負は、前述のとおりラーソンが主導権を握り33周目に僚友ボウマンを抜いてトップに立つ。ステージ1が進むにつれ巧みにトラフィックを処理したHMSの5号車カマロZL1は、ダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)やバートン、ケセロウスキーといったプレーオフ組を次々とラップダウンに送り込む。
同じくステージ2で早くも2周遅れにされたスアレスは、一時プレーオフ出場継続の可能性が危ぶまれる状況に陥る。しかし最初のブレイクにおいて、ピットレーンの速度違反によるペナルティ裁定がJGR陣営の希望を打ち砕き、レース最終盤で右後輪を完全摩耗させたギブスは結果的に15位でチェッカーを受け、スアレスとチェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)にRound of 12進出の権利を譲る結果となった。
「スピード違反のペナルティは僕の責任だ。わずかにリミットに近づきすぎたからね。僕の責任さ……残念だよ」
■肩を落とすトゥルーエクスJr.「ここ3週間はただただ失敗ばかり」
同じくカットラインより14ポイント低い状態で臨んだトゥルーエクスJr.も、ステージ1で4位、ステージ2で2位と、つねにトップ3圏内を快走する起死回生のドライブを披露していたが、この日5回目となる最後のコーション中に同じく速度違反を取られ、ここで夢の続きが途絶える結末となってしまった。
「最初のふたつのステージはいい走りができ、ポイントをたくさん獲得できた」と今季限りでフルタイム引退を決めているトゥルーエクスJr.。「2番手か3番手で走らなければ、勝ち抜けなかっただろう。それができたかどうかは誰にもわからない。それができたかどうか確かめたかった……」
「チームのためにがっかりしている。今週もそうだし、シーズン中ずっとみんなで一生懸命に頑張ってきたのに、ここ3週間はただただ失敗ばかり。何もうまくできない……。わずか0.09mph(ピットロードの速度許容範囲を超える)の差で、勝ち抜けたかどうか知るチャンスを奪われるのは本当につらい。多分、2番手を走れたかどうかはわからない……。ずっと2番手に近かったが、結局は関係ないんだ。チームメイトたちに申し訳ない気持ちだよ」
一方、カットラインより6ポイント低い位置で出場したデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)は、8番手発進からつねにトップ5に留まり、最終的に4位でチェッカー。アクシデント続きだった前戦ザ・グレンの分を穴埋めするリザルトとなった。
「もちろん優勝を目標にしていたが、5号車(ラーソン)の方が全員より優れていたように見えた」とハムリン。「クルマはしっかりしていたし、ステージの中盤まではすごく調子が良かった。でも最後は持ち堪えられなかったね。全体的には、前進できるものを与えてくれたチームに感謝したい」
終始、その集団前方でレースを運んだラーソンは、ブリストルで通算1351周をリードする自身の単一トラック最多記録を更新するとともに、ヘンドリックとしても単一イベントにおける最多リードラップの記録を樹立する同地2勝目、今季最多5勝目、そしてキャリア通算28勝目を手にした。
「ああ、チームは週末ずっと素晴らしい仕事をした」と満足げなラーソン。「いいFPをし、いい予選を戦わなくてはならないが、僕らはそれをやった。とにかく最高のクルマだったし、彼ら5号車のクルーはこの業界で最高さ!」
「我々は多くのレースで優位に立っているが、すべてを制することはできないかもしれない。だから、このクルマでプレーオフ勝利を挙げ、今日はリック・ヘンドリックも来ている前でレースを制することができて本当にうれしいね」
ひさしぶりの併催となったNASCARクラフツマン・トラック・シリーズの第18戦、今季プレーオフ2戦目となる『LIUNA! 175』は、前戦8月末のミルウォーキーマイルでキャリア初優勝を果たしているレイン・リッグス(フロントロウ・モータースポーツ/フォードF-150)が、プレーオフ組を差し置き驚異の連勝を飾り、これで4戦連続のトップ5入りを果たすことに。
同じく併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第26戦『フード・シティ300』は、今季レギュラーシーズン最終戦の天王山を迎え、序盤のウォール接触から立ち直ったコール・カスター(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が今季2勝目を飾り、逆転でのレギュラーシーズンタイトル獲得とチャンピオンシップ進出を決めている。
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