2018年のアウディのベストセラー
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)もっぱらSUVの情報ばかりが目立つようになって久しいが、A4のようなクルマもしっかり更新を続けているということも忘れずにいたい。SUVの快進撃は世界的に留まるところを知らない。車種は増える一方で、想像できる限りのニッチモデルにまで派生しているだけでなく、フェラーリのSUVなど想像もしなかったようなクルマも誕生する見込み。コンパクトクロスオーバー、SUVクーペなどは、もう珍しくもなくなった。
いままでレギュラーメンバーでもあった3ボックス・スタイルのサルーンやエステートは、控え選手のように光が当たらなくなった。車高を上げたSUVが主力選手に入れ替わった感がある。だが、アウディはまだ3ボックス・サルーンの可能性を信じているようだ。
インゴルシュタットを拠点にするアウディは、A4はブランドのコアモデルだと定義している。意外にも世界的に見るとアウディが売ったクルマの5台に1台はA4で、サルーンとエステートを合わせてカウントすれば、2018年のアウディのベストセラー・モデルなのだ。まだSUVのQ5にエースの座は奪われていないらしい。
コンパクトサルーンの新鮮味を失わせず、トレンドに合わせるため、今回そんなA4も控えめながらフェイスリフトを受けた。モデル中期のリフレッシュということで、デザイン面での変更は大きくはない。ヘッドライトとテールライトのデザインが新しくなり、フロントバンパーとリアバンパーも新しくなっている。A4にとってハンサムなアピアランスは、外すことのできない基本仕様のようなもの。
グレードのラインナップも少し見直された。英国では、テクニックがエントリー・グレードとなり、その上にスポーツ、Sラインが続く。さらにブラックエディションが用意され、トップグレードとして「フォーシュプルング」が設定された。
A4に求められていた先進的なテクノロジー
英国での価格はエントリーグレードのサルーンが3万750ポンド(399ポンド)からで、トップグレードは未定ながら、5万6000ポンド(728万円)程度になる見込み。パワートレインはガソリンエンジンが3種類にディーゼルエンジンが3種類で、最高出力は135psから250psまで。189psの最高出力を持つディーゼルのトップグレード、40 TDI以外のすべてのクルマには、電圧12Vのマイルド・ハイブリッドシステムも装備される。
エクステリアと同様に、インテリアデザインもわずかに手直しが施されているが、この小さな変更こそ、アウディのA4に求められていたものでもある。ダッシュボードの中央には10.1インチのタッチモニターが配され、最新世代のMMI(マルチメディア・インターフェイス)ソフトウェアがインストールされた。インスツルメントパネルも、アナログのメーターからデジタル・コクピットへと刷新されている。
これらはインテリアを先進的に見せるだけでなく、実際の技術的な面でもクラスの前衛的ポジションへと進めた。走行中、タッチモニターの操作が少々難しいことは他のモデルと同様だが、高精細なグラフィックと反応の良さには、思わず感心してしまう。ただし、エアコンの操作もすべて内蔵している点は、わたしとしては同意できないところではある。
テスト車両は40 TFSIで、ガソリンエンジンを搭載したモデル。滑らかなエンジンの出力は、アウディ製の7速SUVがトロニック・トランスミッションを介して前輪を駆動。2000rpm付近まで回転数を上げると、満足できる歩調が得られる。ピークトルクの発生回転数は1450rpmからとなっているが、2000rpm以下では活発さを感じることは難しい。
SUVの中にあっても光るA4の独自性
最高出力は189ps、最大トルクは32.5kg-mで、本気になれば迅速に速度を乗せていく。追い越し加速も、特にドラマ性があるわけではないが、難なくこなせるはず。息を呑むような加速というよりも、あくまでも控えめで紳士的。A4のサルーンに求める性格でもあるように思う。一方でトランスミッションの変速は時々ためらいを感じる。アクセルペダルの踏み込み量に応じて積極的にキックダウンするのではなく、あまり変速しないように設定されているようだ。
ステアリングからのフィードバックも、それほど豊かに得られるわけではない。だが操舵時の重さは自然で、ロードホールディング性の高さを想起させる安心感は伴っている。乗り心地も引き締まったものながら、快適性を損なうほど緊張感のあるものではない。そのぶん、良好なコーナリング時のボディコントロール性を獲得している。
A4のコーナリング性能もさることながら、高速道路での振る舞いは特に注目すべき点。ロードノイズや風切り音が気になることもなく、エンジン音も極めて静かに、控えめにささやく程度。まったく不快になる部分もなく、余裕あふれる乗り心地に浸ることができる。
ダイナミクス性能では、メルセデス・ベンツほど華があるわけでもないし、BMW 3シリーズのような優れた運動神経を備えているわけでもない。しかし機械的に洗練され、先進的なテクノロジーを搭載したクルマとして、このクラスでの訴求力は決して低くはない。ライバルモデルとは異なる、独自の個性と長所を備えている。やや過剰気味のSUVモデル群の中にあっても、その魅力は薄まっていないと思うのだ。
アウディA4 40 TFSI スポーツのスペック
価格:3万5585ポンド(462万円)
全長:4726mm
全幅:1842mm
全高:1427mm
最高速度:210km/h
0-100km/h加速:7.3秒
燃費:14.9km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:1455kg
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:189ps/4200-6000rpm
最大トルク:32.6kg-m/1450-4200rpm
ギアボックス:7速ツインクラッチ・オートマティック
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