12月10~11日の週末に開催された2022年SCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”最終戦『スーパーファイナルBRB』は、選手権首位で自身2度目の戴冠に挑んだルーベンス・バリチェロ(フルタイムスポーツ/トヨタ・カローラ)が、下位に沈んだ2度のプラクティスを経て予選で4番手グリッドを奪取し、ギリギリ王座への望みを繋ぐ展開に。
そしてレース1での3位表彰台獲得やライバルの脱落もあり、レースウイークを通じて復活劇を演じた50歳の大ベテランが、涙、また涙のシリーズチャンピオンを獲得。同時に2020年からシリーズに本格参戦を開始したTOYOTA GAZOO Racingブラジル陣営にとっても、同カテゴリーでの初タイトル獲得となった。
4戦4勝者、大接戦の週末はピケJr.が今季2勝目。ついにバリチェロが選手権首位浮上/SCB第10-11戦
10月末にゴイアニアで開催された前戦ダブルヘッダーでは、4ヒートで4人のウイナーが誕生する大接戦のなか、全セッションでトップ10入りを果たしたバリチェロがついにポイントリーダーの座に浮上。そこから8点差で6年連続のタイトル候補として臨む3連覇王者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)や、ディフェンディングチャンピオンで同288点のガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)、そして隣国アルゼンチンからの“越境参戦”2年目で大活躍を演じたマティアス・ロッシ(A.マティス・フォーゲル/トヨタ・カローラ)ら4名が、今季のタイトル候補としてインテルラゴスに乗り込んできた。
しかし意外なことに、この世界的に有名なアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェで勝利を挙げた経験のある3名に対し、バリチェロは跳ね馬をドライブしたF1時代を通じて優勝経験がなく、金曜公式練習の午前午後でそれぞれ最速を記録したセラやロッシに対し、30番手、24番手と、チャンピオン争いに一抹の不安がよぎる発進となった。
「今日は気温や路面温度など、あらゆる条件で必要なすべてのテストを重点的にこなして、主にレースで必要と思われるバランスを探ることに1日を費やした。その点に関しては充分なデータを得ることはできたけど……直接のライバルたちが速いのは気掛かりだね。いずれにせよ、ここから改善できるかどうかは僕ら次第だ」と、メニュー消化の手応えと同時に不安げな表情も見せていたバリチェロ。
明けた土曜の予選を前に、併催された今季創設のミドルフォーミュラ『BRBフォーミュラ4ブラジル』で、甥っ子のフェリペ・バリチェロと、そのいとこであるフェルナンド・バリチェロの初優勝を見届けた“ルビーニョ”は、現地14時20分から自身のタイトルに向けた勝負に挑むことに。
しかしQ1では最初のグループで期待したほどタイムが伸びず。続くグループのアタック中は自らの名が計時ボード上でみるみる降下していく状況をただ見守る展開となる。
■感涙の表情で言葉を絞り出したバリチェロ「人生で最も幸せな日だ」
しかし最終的にカットライン15番手でQ2進出を果たしたバリチェロは、ここが分岐点となりラバーインの進んだ路面で息を吹き返し、自身のQ2アタック終了時点でトップタイムを叩き出すと、最終的に5番手でQ2突破を確定。ポールを争った最後のセッションでは、伏兵とも言えるサンパウロ出身の19歳、フェリペ・バプティスタ(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)がキャリア初ポールを奪取する。
フロントロウにはこの週末が所属するA.マティス・フォーゲルでの最後のレースになるロッシ、3番手にユーロファーマRCのエースで父チコ・セラのタイトル獲得記録更新を狙うセラと、直接のライバルには先行されたものの、バリチェロ自身も2列目4番手を確保して、ポールまで0.217差とパフォーマンスを大きく改善することに成功した。
「15番手でのQ1突破が限界だったが、ギリギリの緊張感が味わえて満足だ(笑)。あらゆる感情とともにこの瞬間を生きられて光栄だし、こんな勝負は本当に“テイスティ”だね!」
そして今季最後の日曜となった午後は、両ヒートとも30分+1周のスプリント戦が実施され、オープニングでは新鋭バプティスタが初ポールをそのまま勝利に変え、同カテゴリーで75番目の勝者に。美しいポール・トゥ・ウインを決めた19歳とは対照的に、隣からスタートを切ったロッシはピットストップ中のアクシデントでデニス・ナバーロ(カバレイロ・スポーツ/シボレー・クルーズ)と絡み後退。2位セラ、3位バリチェロが表彰台の脇を固める結果となった。
続けて開催された最終レース2は、リバースグリッドの優位を活かしたシリーズ3冠経験者のリカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が今季5勝目、キャリア通算35勝目を飾り、シーズン最多勝ドライバーになると同時に、2年連続最終戦勝利で1年を締め括ることに。
背後ではネルソン・ピケJr.(モチュールTMGレーシング/トヨタ・カローラ)とセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)が表彰台を得るなか、バリチェロ、セラ、カサグランデらタイトル候補にはアクシデントの連鎖が襲うことに。
序盤の混乱でマシンにダメージを負ったバリチェロはなんとかコースに留まったものの、カサグランデの失格処分を無線で知らされた瞬間、トップ10圏外の11番手にいた大ベテランの2014年以来となるシリーズチャンピオンが確定。チェッカーを待たずにコクピットのなかで涙を流した男は、50歳と6カ月18日の史上最年長記録を打ち立てて、南米最高峰ツーリングカーSCBの新チャンピオンに輝いた。
「さあ、お祝いの準備はいいかい? 僕を応援してくれる多くの人に感謝しなければならない。人生で最も幸せな日だ!」と、震え声のまま感涙の表情で絞り出したバリチェロ。
「本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。まだ勝利は飾れていないが、僕はインテルラゴスが大好きで、そして僕にとってもうひとつ重要なトラックであるゴイアニア(大の得意サーキット)で選手権首位に昇格できたことが大きかった」と、これで今季3勝と7回の表彰台を数えた新チャンピオン。
「僕らはつねに“些細な問題”を抱えているが、この瞬間はすべてから解放される。この機会が活かせて幸せだし、愛する人々と一緒に、このインテルラゴスが与えてくれたものを噛み締めたい……」
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