■いまではポルシェが採用も…ホンダが先取った先進技術とは?
1980年代、排出ガス規制を乗り切った自動車メーカーはバブル景気も後押しし、高性能化/高機能化を推し進めますが、その陰にはさまざまな失敗もありました。
もちろん「失敗は成功の元」ですが、「これはさすがに」というアイテムもいくか存在。
今回は、そんな珍装備・珍アイテム・珍機能を紹介していきます。
ホンダ「S2000」復活! ファンの声に応えて試作車を初公開!
現在、ATの多段化が著しいなか、MTもポルシェ「911」が7速MTを設定し話題となりましたが。
しかし、今から35年前にそれと同等のトランスミッションがホンダに存在しました。
それが1985年4月、モデル末期の初代シティに追加された「ハイパーシフト」です。
パッと見は普通の4速MTですが、2速(1.772)/3速(1.178)/4速(0.794)それぞれにHI(1.000)/LO(1.362)のふたつのギアを備えることで7速MTを実現していました。
副変速器付のMT自体は1978年に登場の三菱「ミラージュ」に採用された「スーパーシフト」がありましたが、ハイパーシフトの特徴は副変速器の切り替えが自動であることです。
HI/LOの切り替えはアクセルの踏み具合/エンジン回転/クラッチのON-OFFをコンピューターで演算、変速操作は油圧クラッチを採用していました。
作動イメージとして、「3速で走行中に追い越しをしたい→アクセルを踏む→HIからLOに自動でシフトダウン→力強い加速→追い越しが終わりアクセルを緩める→自動でHIにシフトアップ」と、要するにMTなのにATのようにキックダウン機構を持ったトランスミッションでした。
当時のホンダは「操作は4速MTのまま、7速を自在に使いこなせる独創のメカニズム」と語っていました。
HI/LO切り替えの滑らかさや自然なフィーリングは「なるほど」と思う部分はありますが、実際に7速のように使えるかというと難しいところです。
さらに「HI/LOに切り替えが煩わしい」、「体感しづらい」など、凝ったメカニズムの割にはユーザーメリットが薄かったようです。
その証拠に、約1年半後となる1986年10月に登場した2代目シティには、ハイパーシフトは設定されず通常の5速MTが搭載されていました。
次に紹介するのは、まだコンビニが「すぐそこに!!」ではなかった時代、飲み物を保冷するためにエアコンを用いた「クールボックス」を装備するモデルがありました。
ちなみにトヨタ「クラウン」の伝統装備のひとつでもあり(14代目で廃止)、リアシートの座面後ろやアームレスト後方に用意されていました。
かつては多くのモデルに設定がありましたが、現在はトヨタ「ランドクルーザー」やレクサス「LX」に設定(センターコンソールボックス内)されているくらいで、純正装備という意味では絶滅危惧種となっています。
さらに1982年登場のトヨタ2代目「タウンエース/マスターエース」に世界初の「製氷機」も用意されていました。
当時のカタログを見ると「走行状態に応じて30分か~60分で2cm角の氷が20個も作れます」と記載されていました。その後、1BOXモデルの多くに設定されましたが、こちらは絶滅。
現在の高級ミニバンとなるトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」や日産「エルグランド」にも設定はありません。
■昔から健康意識は高かった? 「加湿&酸素濃度」など驚きのアイテムとは
これまでカークーラー、カーエアコンと車内環境を整えるアイテムが生まれてきました。
現在は、温度設定のみで基本は自動で調節するオートエアコンが主流となり、上級モデルには外の空気の汚れを感知して内外気を自動で切り替えするシステムも存在しています。
そんななか、日産の初代「シーマ」や「セドリック/グロリア(Y31)」には「車内用加湿器」がオプション設定されていました。
センターコンソール後ろの後席用吹き出し口付近に装着し、車内用というだけありインテリアとの調和はバッチリです。
一般的な加湿器と同様にタンクに給水してスイッチを入れるとあの白いモクモクが出てきます。
カタログには「暖房、冷房による車内の空気の乾燥を加湿することにより、潤いのある空間を作ります」と記されています。
確かにエアコンで除湿しているので理に適っていますが、ユーザーが重宝していたとはいえず、追従するメーカーはありませんでした。
しかし、現在ではカー用品として、USBタイプの車内用加湿器も登場しており、冬場の乾燥する車内においては重宝するという声もあるようです。
その一方で、三菱は別のアイデアをトライしていました。
それは1992年に登場した3代目「デボネア」の社用車向けシリーズの最上級グレード「エグゼクティブIII」のみに用意されたアイテム「オキシジェンリッチャ(酸素富化機)」です。
トランクに設置されたシステムで酸素を発生させ後席の2つの吹き出し口(リアクオーターピラーとペンシルタイプ)から車内に送り込むことで、車内の酸素濃度を25%から30%にアップ。
酸素濃度を高めると身体機能を活性化する効果があるといわれ、現在こそ酸素カプセルなどが普及し、一般的にも認知されています。
エグゼクティブIIIのリアシートに座っていたショーファーはさぞかしビジネスの世界では切れ者だったのでしょうか。
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