12月15日、東京都港区のHondaウエルカムプラザ青山にてファン感謝イベント『Honda Racing 2024 Season Finale(ホンダ・レーシング2024シーズンフィナーレ)』が行われ、ホンダとともにF1王者に輝いたアイルトン・セナについてのエピソードを語るトークショー『F1参戦60周年特別企画 ~セナとHondaの6年間~』が実施された。
ステージには中嶋悟監督、佐藤琢磨、山本尚貴らと当時を知るエンジニア3名が登壇して当時を振り返り、ほかでは聞けないトークを繰り広げて集まったファンを盛り上げた。始まるとすぐに、セナとゆかりのある写真がディスプレイに次々と映し出され、その風景とともに当時を振り返っていく。
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まずは中嶋監督から、1987年チーム・ロータス時代のチームメイトであったセナについて語った。
「そりゃ、存在感バッチシですよ。先輩だし、どこに行っても速いし。速すぎてショックも受けて、周りの人に『どうしたらこんなに速くなるの?』と聞いたりもしましたね」
「シーズン中は、自分はほとんどのサーキットが初めてだったので、コース図を見ながら『ここは絶対に気をつけろ』と指導してくれましたね」
そして続いては琢磨が、1987年F1日本GPで初めて現地観戦をした際のエピソードを皮切りに、印象的だったセナの走りを振り返る。
「もう鮮明に覚えていますし、衝撃でした。初めて見た瞬間は(咄嗟に)立ち上がって、そのまま座れなくなっちゃうくらいでした」
「F1マシンが130Rから来るときに、音がこだましてくるんです。戦闘機のような金属音と、横隔膜に震えるような1.5リッターターボの音がしてから、フッとシケインに現れて。そこからいきなり加速してきて、目の前で時速250キロくらい出てるかな、それは凄かった」
さらに、セナカラーのヘルメットでカートに乗っていた山本が続いて「当時は、誰がすごいのかなんてわかりませんでしたが、黄色いヘルメットで赤と白のマシン、あの選手がかっこいいなと憧れましたね」と振り返る。
「僕が初めて見たのは1992年の鈴鹿で、4歳の時でした。あの時はシケインで見てました」と山本が話すと、琢磨も「俺もシケインだった!一緒じゃん!」と反応。まさかの一致に会場も湧き、ともにトップドライバーとして活躍するふたりの幼少期に根付いたセナ像が明らかになっていく。
山本からはさらに、ファン感謝イベントで乗った『マクラーレンMP4/6』の思い出も飛び出す。
「僕はMP4/6が大好きで、鈴鹿のファン感謝デーのイベントで初めて乗ることができて、めちゃくちゃ感動しました。ただ、感動して緊張しすぎて、(エンジン)ブローするのが怖くてシフトアップを一個ずつ(慎重に)やっていったら、僕のクルマだけド素人感満載で(笑)」
同じマシンに乗った経験のある琢磨も「ダメだなぁそれは(笑)。おれはなんちゃって“セナ足”(コーナリング時にアクセルオン/オフを繰り返すセナ特有の技術)とかやっちゃった。またどこかで乗ろうよ一緒に」と続け、憧れのセナのマシンとの思い出話に花を咲かせた。
その流れから、トークは“セナ足”の話題へ。当時を知る中澤エンジニアからは「コーナーに入ってから立ち上がりまでの間に、1秒間に5回くらい『パッ、パッ、パッ、パッ、パッ』と踏むんです」とその技術を説明する。
田邊エンジニアも「それを10何個のコーナーで毎周やるんです。当時はセンサーが壊れたんじゃないかって大騒ぎしましたね。それで本人に聞いたら、『自分でやってるから』って言ってました」と続けた。
さらには琢磨も、デモラン前のシートフィッティングで気づいた“セナ足”の秘密を語った。
「動体保存のMP4/6は(ゲルハルト・)ベルガー車なのですが、スロットルボディとリンケージをオーバーホールしたときに、セナが使っていたリターンスプリングを入れたそうなんです」
「そしたら、シートフィッティングの時に(ペダルが)めっちゃくちゃ柔らかくて、壊れてんじゃないかって思って聞きました。そしたら当時セナのエンジニアだった方が『セナはこれなんだよ』っておっしゃっていて」
「それで実際に走ってみたら、勝手に“セナ足”になるんですよ。セナはエンジニアリングにも長けていましたから、きっと自分の周波数に合う(スプリング)レートにしていたんじゃないかな」
ほかにも、走行データを管理し始めたころに中嶋監督とセナの数値を比較したときのエピソードなど、当時の秘話が次々と語られていた。こちらのトークショーの模様は『本田技研工業株式会社(Honda)』公式YouTubeでの生放送動画でもアーカイブとして見ることができるので、セナファンのみならず全F1ファンは必見だ。
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