この記事をまとめると
■水産便のドライバーは長時間をトラックのなかで過ごす
令和時代にも細々生き残っていた! 一世を風靡した「水中花シフトノブ」のいま
■トラックにいる時間が長いため車内に装飾を施す人が多いという
■デコトラ愛好家に人気の車内カスタムを紹介
ひと月に数日しか帰れないドライバーも多い
北は北海道、南は九州沖縄。全国各地を駆けまわる長距離ドライバーたちは、文字どおり日本列島を縦断する。とくに水産便のトラックたちは、旬の魚が水揚げされる漁港へと出向くため、渡り鳥のような存在だ。そんな彼らが自宅に帰れるのはひと月に数日程度。荷物によって行き先が変わるため、もちろん帰宅できない月もある。トラックのキャビンが仕事場であると同時に、マイホーム代わりとなるのである。
そんな水産便のトラックたちは、車両に装飾を施す傾向が強い。俗にいうデコトラ仕様のトラックで、大切な相棒を化粧する。そしてマイホームと化した車内には豪華な生地を張り付け、シャンデリアなどで絢爛豪華に飾り立てるのだ。
近年では荷室スペースを拡大したショートキャビンの大型トラックも開発されているが、当然のごとく人生の大半をトラックで過ごすような彼らには、到底受け入れられないもの。天井部分が寝室となっているキャビンも存在するが、とても快適に過ごせる空間ではないようだ。「夏は暑いし雨が降るとうるさいし。さしずめ、天候の影響をもろに受けるカプセルホテルといった感じ」だと、とあるトラックドライバーが話してくれた。
そんな彼らが望むのは、ごく一般的な寝台スペースが装備されたキャビン。なかでも天井部分が広いハイルーフが人気である。そんなハイルーフの部分に棚を設置したりテレビを置いたり、長距離ドライバーや待機時間の長い業種に就くドライバーたちのデコトラは、車内にもさまざまな趣向が凝らされている。
トラックの内部を快適なマイルームに
デコトラ愛好家たちの間では、キャビンのスペースを拡大する出窓や背抜きといった手法も好まれており、広く定着している。それがどのような内容なのかを説明しよう。
まず出窓は、文字どおりキャビン後部に設置された後部ガラスを外し、新たなボックスを製作して延長させるというもの。キャビンの後部とボディ(荷台)の間には空間が存在するのだが、そのスペースをキャビンの室内として活用するのだ。後部窓の部分を出窓にした場合、小物などが置ける棚として活用することができる。
そして背抜き。メカニズムは出窓と変わらないのだが、大きく違うところはキャビン後部の壁をカットし、室内をそのまま拡張させてしまうというところ。そうすると寝台部分が広くなるため、より快適となる。
出窓とは比較にならないほどの空間が得られるのだが、キャビンのカットや箱の製作及び溶接、そして断熱などの内張りをイチから仕上げるという大がかりな工事が必要となるため、費用も時間も要してしまう。
また、しっかり製作しなければ溶接が振動などで外れたり割れたりしてしまい、雨漏りの原因にもなる。そのため、ハイリスクハイリターンであるといえるだろう。
自家用トラックでデコトラを楽しむ愛好家たちは、荷室となる箱の内部を部屋に改造する人が多い。その場合は出窓や背抜きではなく、キャビンの後部と荷室前部をぶち抜き、つなげてしまうという技も人気を集めている。
見た目の派手さはもちろん、このような普段は見えないような部分も、デコトラは手が込んでいる。トラック愛好家の世界もじつに奥が深く、とてもディープでアツい世界なのである。
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