BMW通から高い支持を集める
ヨーロッパ大陸でもっとも格式が高いとされるクラシックカー・コンクール「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」に付随して開催された、RMサザビーズの「Villa Erba」オークションは、長年コンコルソ・ヴィラ・デステの公式オークションの地位を占める。今年は、長年にわたってコンクール・デレガンス全体のオーガナイズを行ってきたBMWの名車たち、ことに近現代の「M」モデルたちが「The M Power Collection」と銘打って多数出品されることになり、前回は2016年型の「M4 GTS」を紹介した。今回は近年人気の「E46系M3」のさらにアイコニックなハードコア版「M3 CSL」のあらましと競売結果についてお届けしよう。
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最後の鋳鉄製ブロックを持つM3
2000年3月のジュネーヴ・ショーにて、3代目となるE46系M3が発表。その1年半後となる2001年9月、フランクフルトモーターショーにおいて、パフォーマンス志向を高めた軽量ハードコアバージョンのM3 CSLがデビューした。
「CSL」の名は、1970年代初頭に登場した伝説的ホモロゲーションモデル「3.0CSL」へのオマージュ。このM3 CSLでも「Coupe(クーペ)」「Sport(シュポルト)」、そして「Leichtbau(ライトバウ)」。すなわちライトウェイトのイニシャルと謳われていた。
その内容はネーミングに違わず、空力パーツは強化プラスチック製の専用パーツとされたほか、重心にも影響するルーフはカーボンファイバー製とされた。またセンターコンソール、ドアトリムも同様にカーボンファイバー製のものに置き換えられた。
さらにエアコンディショナーやナビシステム、オーディオ、フォグランプなども潔く取り去られた上に、豪華な電動シートから軽量フルバケットシートへの変更。薄板リアウインドウガラスの採用、遮音材の簡素化など徹底的な軽量化を図った結果、車両重量は1430kgと、E46系M3の標準モデルよりも約110kgもの軽量化に成功した。
いっぽう、ダブルVANOSを組み込んだ3.2Lの直列6気筒DOHC24バルブのエンジンには、エキゾースト側カムプロフィールの変更や排気バルブの軽量化、機関内部のフリクション低減などを施行。標準型M3の343psに対し、360psまでパワーアップされた「S54B32HP」型を搭載することになった。トランスミッションは6速シーケンシャルMTの「SMG II」のみながら、専用プログラムが用意されたことで、シフトチェンジに要する時間が短縮されたという。
さらにブレーキは、フロントのローターをM5に使用されているフローティングタイプの345mmに変更するとともに、リア側も大径ピストンに変更。専用サスペンションに専用19インチホイール、中空スタビライザーなど、すべてレーススペックのものに置き換えられていた。
こうして開発されたM3 CSLは2003年6月から12月にかけて、ミュンヘン近郊レーゲンスブルクの「M」専用工場から、わずか1383台が生産されたという。そのうち約1000台がドイツ国内にデリバリーされ、残りをヨーロッパ諸国および日本市場に振り分けたといわれている。
■M3 CSLと最新M4の乗り比べを誌面で振り返る
新車時代の日本での価格の2倍で落札!
このほどRMサザビーズ「Villa Erba」オークションに出品されたM3 CSLは、2003年7月1日に製造された個体とのこと。イメージカラーであるシルバーグレー・メタリックの外装に、アマレッタの人工スウェードとリフレックス・クロスのインテリアが組み合わされ、「シャドーライン・スタイリングパッケージ」とクリア・ウインカーレンズが装着された。また、ライヒトバウの名にふさわしく、オーディオシステムもキセノンヘッドライトも装備されていない。
このM3 CSLは、2003年7月15日にバイエルン州ギュンツブルクのディーラー「オートバプティスト(Auto-Baptist)KG」社を介して初登録・納車され、2022年1月に今回のオークション出品者が購入するまで、初代オーナーの手元にあったことが判っている。また、車両に添付されている請求書には、現オーナーの手にわたった翌月にリアディファレンシャルとドライブシャフトを交換したことなどが詳細に記されている。
今回のオークション出品に際しては17カ所以上のサービススタンプが押された整備記録簿が付属しており、最新のスタンプは2023年3月16日に発行されたものである。いっぽう、BMW本社とのやり取りでは、ファーストオーナーへの納車前にリミッターを解除し、最高速度が280km/hのフルスペックに引き上げられたことなども確認されているとのことであった。
E46系M3は、古き良き鋳鉄ブロックを持つM社謹製ストレート6気筒自然吸気エンジンを搭載した最後のM3として、近年では味わいを求めるBMW通のエンスージアストから高い支持を得ているようで、それは市場価格にも反映されている。
くわえて、ヴィラ・デステのコンクール本選や、ヴィラ・エルバのコンクール一般公開会場では、主催母体でもあるBMWの素晴らしいクラシックモデルたちが、主役ないしはゲストとして登場することに影響を受け、隣接するオークション会場もBMWに対して購買意欲が高まりそうなことから、この競売はなかなか白熱するかと思われていたがその予想は的中。
近年、2000万円前後での取引が多いM3 CSLのなかにあって、5月20日に行われた競売では14万9500ユーロ、約2310万円で無事落札に至った。日本には150台(ほかに諸説あり)が正規輸入され、その際の販売価格は1150万円だったそうだが、今回の落札価格は、実にその2倍にも及んだことになるのだ。
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みんなのコメント
確かFR でニュルでも当時上位にいたはず
値上がりするのもしゃーない