「ビニールレザー」にあまり良い印象を持たない人も
先日ある新車ディーラーにて、店内に展示してあった高級セダンをセールスマンの案内で見ている時のこと。セールスマンが「このグレードですと、シート生地は“ビニールレザー”なります」と説明してくれた。このセールスマン、どう見ても“昭和生まれ”ではないのは確実だとわかる若手であった。
高級感は抜群だけど「布」のほうがいい場合も! 本革シートのもつデメリットとは
このセールスマンは、“合成皮革”と言いたかったようであり、このモデルのカタログを見ると、シート生地については何やら面倒くさい名称がついており、これをそのまま説明してもなんのことやらわからないので、わかりやすくビニールレザーと紹介してくれたようであった。
ただ、筆者のような昭和生まれにとっては、“ビニールレザー”にはあまり良い印象を持っていない。我が家で初めてマイカーとして購入した、1976年式トヨタ・パブリカ スターレットセダン デラックスのシート地はビニールレザーであり、このスターレットだけでなく、当時の乗用車でファブリック(毛織物)地のシート表皮になるのは上級グレードのみと言うケースが当たり前。フロアについてはカーペット敷きがほとんどであったが、スタンダードだけ塩化ビニールというクルマも珍しくなかった。
ダッシュボードは樹脂で、シートはビニールレザー、床だけはカーペット敷きだったのだが、カー用品店で“タイヤ&レザーワックス”買ってきて、ピカピカでツルツルに車内を磨き上げていた父親を手伝っていた少年時代を、筆者はいまも鮮明に覚えている。
80年代が見えてくるころになると、だいぶファブリック地のシート表皮の採用が進んだのだが、当時の乗用車でのベンチマーク車となる、4代目(セダンでは最後のFR)トヨタ・カローラをみると、中間グレードのGL以上はファブリックではあるが、カスタムDX、DX、スタンダードでは依然としてビニールレザーとなり、さらにDX系とスタンダードでは採用するビニールレザー地で差をつけていた(スタンダードのほうが安い?)。
さて、話を令和に戻そう。商用車でもビニールレザー地のシート表皮を採用するモデルを探すのにひと苦労し、ここ最近本革はもちろんのこと、前出のセールスマンのいうところの、“ビニールレザー(合成皮革)”の設定が目立ってきている。
かつて本革シートを採用する日本車は少数派だった
2020事業年度に年間販売台数で10万台強を売ったトヨタ・アルファードでは、廉価グレードのみはファブリック地を採用し、エグゼクティブラウンジは本革となり、売れ筋のSCパッケージは合成皮革となっている。アルファードでファブリック地を選ぼうものなら、将来下取り査定ではマイナスポイントになるとの話も聞いている。
納期遅延が続いているトヨタ・ハリアーでも、最上級グレードのレザーパッケージが人気となり、とくにこの仕様を選ぶと納期がさらにかかるとのこと。
そもそも日本は、シート表皮でも“ガラパゴス現象”といってもいい傾向が続いていた。欧米や、アジア地域を見渡しても本革(あるいは合成皮革)シートが好まれてきたのに対し、日本ではファブリック地が好まれ、高級車でも“ベロア地”など高級織物をシート表皮に採用することが多く、本革シートは少数派であった。
2001年に韓国ヒュンダイ自動車が日本市場に参入してきた時、カローラと同クラスのエラントラというモデルの試乗車が本革シートを採用して驚いたのを覚えている。韓国では圧倒的に本革シートが支持されているとのことで、カローラクラスであっても設定されることは珍しくないとのこと。いまはグローバル化し、クルマのパーツや用品も世界調達して自動車生産が行われているのでだいぶ変わってきたが、過去にはアメリカ車、イギリス車、ドイツ車、フランス車など、国によってレザーシートの臭いが違っていた。ドイツ車は“酸っぱい”臭いがし、フランス車は甘い臭いが車内に充満していたのをいまも覚えている(あくまで筆者の感想です)。
技術革新が進み、コストダウンとともに合成皮革といってもさまざまなタイプが選べるようになってきたことも、日本車で本革シートだけでなく、合成皮革シートの設定が目立つようになってきたようである。
前述したように、筆者に“ビニールレザー”と説明したセールスマンは悪意があってそのように説明したわけではない。ただ筆者のような“オジさん”世代には、ビニールレザーという響きに悪い印象を持つ人もいるから、「合成皮革といったほうがいいよ」とアドバイスしてショールームを後にした。
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みんなのコメント
昭和生まれならケチらずそこそこお金持ってるでしょ
正直なディーラーマンだと思うw