F1日本GP決勝終盤、メルセデスのルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルは、フェラーリのカルロス・サインツとポジションを争い、ハミルトンはなんとかサインツを抑えきって5位を獲得した。この時のチームの判断について、ハミルトンは不満を示しているが、メルセデスは、チームが最大の結果を出すため、ハミルトンを守ることを最優先したと述べている。
レース終盤、サインツは最後のピットストップを遅らせたことで、フレッシュタイヤを生かして、5番手と6番手を走るメルセデスのラッセルとハミルトンとの差を急速に縮めていった。
意図的にDRSを使わせるメルセデスの作戦に気づいたサインツ「マシンの中で笑った」/F1日本GP
ラッセルは他とは異なる1回ストップで走り、この時点でペースが落ちており、そのすぐ後ろに追いついたハミルトンが引っかかっている状況だった。メルセデスのストラテジストが状況を分析した結果、よりフレッシュなタイヤを装着したハミルトンをラッセルの前に出すという決定がなされた。ラッセルはこの決定に疑問を呈したが、チームの指示に従い、ハミルトンにポジションを譲った。
ラッセルの前に出た途端にハミルトンのペースは1秒速くなったが、メルセデスは、ラッセルをサインツから守るために、ハミルトンに対し、チームメイトにDRSを使わせるよう指示。ハミルトンはペースを落としてラッセルのすぐ前にとどまった。
ハミルトンとしては、自分がラッセルに追いついた段階で速やかに前に出してもらい、ラッセルがサインツに対処する間に先行して差を広げた方が良かったと考えている。
「あれはまったく良くない作戦だった」とハミルトンはレース後に語った。
「あの指示を聞いた時、前回のレース(シンガポールGP)から思いついたのだとすぐに分かった。でも全く意味がなかった」
しかしメルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、まず何よりハミルトンの順位を守ることを優先して判断を下したと説明した。
「その場でマシンを管理するのはかなり難しいことだ」とショブリンは述べた。
「順位の入れ替えを指示したのは、カルロスが非常に速いペースで2台に迫ってきているのを見て、真ん中を走っていたルイスのタイヤは(サインツよりも)古いタイヤだったため、(追い越される)リスクがあると考えたからだ」
「もう少し良い結果になった可能性はあるが、あの時点では、ルイスまでもがポジションを失うことをなんとしてでも防ぎたかった。カルロスよりも先行してフィニッシュできる可能性は、ルイスが最も高かったからだ」
レースのこれより早い段階で、ハミルトンとラッセルはホイール・トゥ・ホイールの激しいバトルを繰り広げ、あわや接触かというシーンもあった。
その後、ふたりは異なる戦略を採り、ハミルトンは2ストップ戦略を採用した一方、ラッセルは1回ストップで走り、53周のレースの24周目にミディアムタイヤからハードへと交換して、そのままチェッカーフラッグを受けるまで走り切った。
ふたりの激しいバトルがメルセデスの戦略決定に影響を及ぼしたのかと聞かれたショブリンは、次のように述べた。
「いや、そんなことはない。チームの取り組みという点では、我々はフェラーリより多くポイントを獲得することを目指しているからだ。今回のようなレースでは特にそうだ」
「表彰台を目指してマクラーレンを追うのは難しいと分かった時点で、フェラーリの動向に注意を切り替えた」
「2台のマシンを有効に使って、フェラーリに対抗することを目指した。フェラーリは2台ともレース開始時点で我々よりも前にいたので、そのうちの1台にでも勝てれば、有効なダメージリミテーションだと言える」
ハミルトンとラッセルのバトルにおいて、ラッセルがコースから大きく押し出される場面があった。ラッセルは、無線でチームに対し、「誰と戦えばいいんだ? 互いにか、それとも他のドライバーか、どっちなんだ?」と言い、不満を示した。
後にメルセデスのコミュニケーションズディレクターであるブラッドリー・ロードは、緊迫した無線でのやりとりについて、チーム内で話し合いをするものの、深刻な問題ではないと主張した。
「彼らは難しいコースで激しく競った」と彼は『Sky Sports F1』に語った。
「ヒートアップしている状態での無線メッセージだから、あれこれ読み取ろうとすればできてしまうだろう」
「だがいつものことだが、少しプレッシャーから離れ、今日の鈴鹿のような高温のコクピットから抜け出して、レース後のエンジニアリングデブリーフで、話し合いを行う。解決する必要があることは、そこでうまく解決されると確信している」
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