ガンディーニの才能を開花した1台
2024年3月13日、ランボルギーニ「カウンタック」やランチア「ストラトス」のデザインを手掛けたマルチェロ・ガンディーニが85歳で亡くなりました。今回の「クルマ昔噺」は、ガンディーニが手掛けたアルファ ロメオ「カラボ」を振り返ります。
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5台の33シャシーのうち最も早く公開されたのがカラーボだった
カロッツェリア・ベルトーネの元でその天才ぶりを発揮したマルチェロ・ガンディーニ。ベルトーネでの彼の初仕事はランボルギーニ「ミウラ」というのが通説である。とはいえ、3代続けてチーフデザイナーが表に出て活躍するのはよろしくない……と、当のヌッチオ・ベルトーネ御大が考えたのか、ガンディーニが去ったあとはチーフスタイリストの名前が表に出ることはなくなった。やはりスカリオーネ、ジウジアーロ、そしてガンディーニ時代のベルトーネが如何に偉大だったかを示すようにも感じる。
アルファ ロメオ「カラボ」のベースは33ストラダーレ用のシャシーである。アルファ ロメオ 33ストラダーレはそのシャシーナンバーの数から全部で18台が生産されたとされることが多いのだが、現実にはそれよりもはるかに少ない数しか作られていない。そしてストラダーレ用として作られたシャシーのうち、次の5つは当時隆盛を極めたカロッツェリアに渡されたのだ。
ストラダーレのシャシーナンバーは750.33.101から始まり750.33.118で終わる。これが18台作られたとする理由だが、このうち下3桁が 108、109、115、116、117のシャシーはカロッツエリアに渡り、それぞれがプロトタイプを製作した。
108および115はピニンファリーナに渡り、108は最終的にアルファ ロメオ 33スパイダー クネオとして1971年に登場した。もう1台の115は33/2 クーペ スペチアーレとして1969年に誕生している。116の行き先はジウジアーロが立ち上げたイタルデザインである。
1969年のトリノショーでデビューしたそれは、イグアナの名を持っていた。そして残りの2台はベルトーネに行った。シャシーナンバーは117および109で、117は1976年のジュネーブショーで登場したナバホの名を持つモデル。そして109が今回紹介するカラボで、1968年のパリサロンで初公開されたものである。つまり5台の33シャシーのうち最も早く公開されたのが、このカラボだったというわけである。
ちなみに最後に公開されたベルトーネのもう1台、ナバホもガンディーニのデザインである。そしてピニンファリーナに渡った2台のうち、クオネのシャシーは引き渡された直後の1968年にアルファ ロメオ33 ロードスターとしてデビューし、その後同じシャシーを使いまわしてクオネになった。というわけなので実質的には5台のシャシーから6台のコンセプトカーが生み出されたことになる。
カウンタックより先にシザーズドアを採用した
オープンボディの車体中央に装備したウイングをある意味ロールバー代わりに使っていたロードスターのデザインもユニークであったが、その直後に登場したカラボのデザインはその後1970年代から始まるデザイントレンドの主流をなしたことで、ピニンファリーナも最初のロードスターのボディを変更せざるを得なかったのではないかと思うほどである。
その衝撃的なデザイントレンドとは、「ウェッジシェイプ」である。カラーボの先端が尖った先鋭的なデザインは、そのモチーフが後にランボルギーニ カウンタックに用いられることになり、それが量産化されたことからセンセーショナルで最先端のデザイントレンドとなった。
もう1つカラボの特徴は前ヒンジを支点にして上方に跳ね上げるタイプのシザーズドアを史上初めて採用した点だ。これも後にカウンタックで量産化され、大いに注目を浴びたデザインであった。
リトラクタブルヘッドライトに関してはすでに多くのメーカーがそのアイデアを採用していたが、カラボはルーバーとなって3枚のベントが開閉するタイプだったため、通常のリトラクタブルヘッドライトとは明確に異なり、デザインのモチーフとして使われていた。このルーバー風は前年に、同じくガンディーニのアルファ ロメオ モントリオールプロトタイプに採用されていたことから、これは間違いなく彼のアイデアであった。アルマジロタイプのリアウインドウはミウラに採用されたものである。
こうして見てくると、如何にカラボのデザインが先鋭的で時代を先取りしていたかがわかるし、ガンディーニのデザイントレンドが1970年代を通じて多くのメーカーに影響を与えたことがわかる。
私が実車を初めて見たのは1978年のことで、当時はアルファ ロメオのミュージアムが開館したばかり。その取材でミラノのアルファ ロメオミュージアムを訪れた時だった。メタリックグリーンに塗装されたそれはカラボの名前を体現したもの。オサムシという昆虫の種類から来た名前で、金色オサムシの色がまさにこのカラボの塗装であった。
インテリアは2年後に量産モデルとしてデビューするランボルギーニ ウラッコのインパネそのもののデザインが使われていた(つまりこれも量産化された)。当時は目がロン・パリになると言われたスピードメーターとタコメーターの配置が最大の特徴だった。ちなみにステアリングのデザインもほぼウラッコに採用されていた。
やはりガンディーニの才能はこのクルマを持って開花したといった方が良いのではないだろうか。
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