電動スポーツモデル GT-R後継も?
日産の欧州部門の幹部によると、エンスージアスト向けのスポーツモデルはまだ今後の計画に含まれており、電動化の時代にそれらを市販化するためには固体電池が鍵になるという。
【画像】欧州に力を入れたい日産【日本未導入モデル3台を写真で見る】 全93枚
スーパーカーのGT-Rは、13年という長い生産期間を経て、後継車がないまま欧州市場から撤退した。また、厳しい排ガス規制によって新型Zも欧州では販売されないため、同市場でスポーツモデルを展開できない状況が続くと見られていた。しかし、欧州日産の幹部はAUTOCARに対し、バッテリー技術の進歩により、そうしたモデルはまだ「検討されている」ことを認めた。
日産は最近、4台のコンセプトカーを発表している。小型クロスオーバーの「チルアウト」は、リーフの後継車を予告するもので、市販化に最も近いモデルだ。アリアと同じCMF-EVプラットフォームをベースにしたEVクロスオーバーで、英国で製造される予定である。
また、ピックアップトラック「サーフアウト」やスポーツカー「マックスアウト」のコンセプトも発表。それらがどの程度現実的なものなのか、AMIEO地域(中東、インド、欧州、オセアニア)の上級副社長兼最高企画責任者のフランソワ・ベイリー氏は、次のように語っている。
「23台の電動化モデルの発売を発表し、そのうちEVは15台でした。これまでに5つのモデルを公開していますが、問題は、次の段階がどうなるかです」
その15台のEVのうち2台はリーフの後継車とマイクラの後継車だが、商品計画にはスポーツモデルを入れる余地があるようだ。
固体電池で低価格・軽量化を実現
GT-RやZだけでなく、大型SUVのパトロールにも熱意が向けられている。ベイリーはAUTOCARに対し、日産が開発に取り組んでいる固体電池技術は、車両重量を過剰に増やすことなく必要な航続距離を確保し、こうしたクルマの市販化を実現できる可能性があると語った。
さらにベイリーは、GT-Rの電動後継モデルについて、「検討しています。わたし達は皆、クルマ好きですからね」と、社内で議論が行われていることも明らかにした。
しかし、「EVのスポーツカーはぜひ用意したいのですが、整理する必要があります。(デビューの)順番を発表する準備はできていませんが、検討が進められています」として、主力となる大衆向けモデルが優先されるとの見方を示した。
日産の固体電池がいつ実用化されるかによって、エンスージアスト向けEVの登場時期が左右される。研究は比較的進んだ段階にあり、2024年に試験生産を行う予定だ。その後、2026年頃に実用化され、2028年には固体電池を使った最初の市販車が路上を走ることになる見込みだ。
固体電池技術により、エネルギー密度が著しく向上し、EVとガソリン車やハイブリッド車との価格競争が加速されるはずである。日産は、現在のコストが1kWhあたり約100ポンド(約1万6500円)であるのに対し、固体電池では57ポンド(約9300円)と見積もっている。
マイクラ後継はEVクロスオーバーに
一方、日産はより小型で、より手頃な価格のクルマにこだわり続けている。フランソワ・ベイリーは、「これは非常に重要なことです。欧州では、小型車は重要なセグメントであり、若い顧客がEVに乗り換えることで、新しい世代を育成することが不可欠なんです」と話す。
しかし、現在欧州で販売されているマイクラの後継車は、従来のハッチバックではない。CMF-BEVプラットフォームをベースにした、EVクロスオーバーになる予定だ。
「EV市場は、良くも悪くも、明らかにクロスオーバーに移行しています。スタンス、安全性、荷室の広さなどが理由です。クロスオーバーは重要な戦略軸なのです」とベイリーは述べている。
なぜ今になってEVを? 10年先を見据えた動き
英AUTOCAR編集部は、日産AMIEOマネジメントコミッティ議長のギヨーム・カルティエにインタビューを行った。
――なぜ日産は今になって2台目のEVを発売するのですか?
「日産は2030年までのビジョンを持っていますが、これは日産にとって新しいことです。最近まで、わたし達はMTP(中期計画)、つまり3年から5年のサイクルで行動することが多かったのです。今は10年先を見据えています」
「2つ目のポイントは、ビジョンだけでなく、電動化に対する明確な見解を持っていることです。現在では、EVに投資するか、EVとICEに投資するか、決めなければなりません。日産は、ユーロ7(非ハイブリッド車)には投資しません」
――ルノー・日産・三菱アライアンスは、同じプラットフォームでEVをどのように差別化するのでしょうか?
「プラットフォームを共有する同じセグメントのクルマをいくつか見ても、設計方法がまったく違うので、全くの別物であることがわかります。アライアンスには、必ずしも目に見えるものではありませんが、本当に重要なものがたくさんあるのです」
――半導体不足やウクライナ戦争の影響を日産はどう受けていますか?
「以前より良くなっています。そのため、(生産を)劇的に増やす予定ですが、今年は世界的にも欧州でも、需要はまだ当社が望むレベルにはありません。前進は微々たるものです。でも、わたしは楽観的です。2022年は、2021年よりも確実に良くなると思います」
「ウクライナでは、従業員を大切にしており、まず彼らの安全を確保することを第一に考えています。(部品供給について)検討は行いましたが、ウクライナには大きな調達先はありません」
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