ベストカーWeb編集部員が中国出張で北京や南京、上海市内をクルマで走行していて目についたのがテスラモデル3の数の多さ。テスラは各国メディアとの対応も情報を開示しないやり方で軋轢を生んでいるそうだが、その真実はどこにあるのかを斬る!
文/鈴木直也、写真/テスラ、ベストカー編集部
中国でもモデル3がビュンビュン走っていたが……果たしてテスラの真実とは何か?
■テスラの真実はいったいどこにある?
テスラモデル3。このセダンモデルEVが中国市場では闊歩していた
いい意味でも悪い意味でも、常識で推し量れないのがテスラという会社だ。厳密にいうとテスラの創業者はイーロン・マスクではないが、彼が経営権を握って以降のストーリーは大河ドラマ並みに波乱万丈で面白い。
何度も資金ショートで潰れると言われ、実際に株式市場では大量の空売りを浴びせられるが、あり得ないような奇跡を何度も演じてピンチを切り抜け今や世界ナンバーワンのEVメーカーの座に君臨している。
2022年の業績を見ると、年間生産台数約137万台、売上高10兆5000億円、純利益1兆6000億円。創業わずか20年の電気自動車専業メーカーが、少なくとも売上高ではトヨタの3割近いところまで迫っているわけで、これはもう目がくらむほど凄い成功と言わざるを得ない。
この大躍進の舵取りを担っているのが、ご存じイーロン・マスクという天才的経営者だ。
自動車メーカーというのは巨大な設備産業だから、立ち上げには莫大な資金を要する。海のものとも山のものともわからない新興電気自動車メーカーだったテスラが、初期の資金調達に成功したのは100%イーロン・マスクの手腕によるものだ。
■マスク氏の優れた洞察力があればこそテスラはモデルSを出せた?
テスラモデルS。イーロン・マスク氏はこの高級サルーンシフトによって成功を収めることになる
マスク自身も個人資産から1億ドル近くを出資しているが、名だたるベンチャーキャピタルが出資者として名を連ね、粘り強いロビー活動によって政府からも多額の助成金を引き出す……。
危機に陥っても何度となくそれを跳ね返せたのは、起業家としてのイーロン・マスクの個人的な信用力。「彼なら何かやってくれるはず」という期待感は、ほとんどスティーブ・ジョブズに匹敵するものがある。
もし、イーロン・マスクがいなかったら、テスラはおそらくスタートアップ段階で終わっていたに違いない。
さらに、製品企画という点でもイーロン・マスクには最初から優れた洞察力があった。
テスラ最初の製品はロータスエリーゼをベースとしたEVスポーツカーだったが、これはマスクが経営に参加する前から企画されていたもの。これを早々に棚上げして、狙いを高級サルーンにシフトして開発されたのがモデルSだ。
今考えれば、この選択は大正解だった。この頃のEVはどうやったってコスト高となるわけで、お手頃価格で造ろうとすれば商品としての魅力に欠けるクルマになる。リーフをはじめとして、この罠に陥ったEVは少なくない。
■電池値供給能力の重要性を見抜いていたのは慧眼!
写真右のモデルSの成功がテスラのサクセスストーリーのスタートとなった
しかし、イーロン・マスクは「EVのアーリーアダプターは富裕層。新しい価値を提案すれば彼らは高価でも買ってくれる」と読んで、モデルSを企画、結果的にこれが大当たりする。モデルSのデビューが2012年。これが、テスラのサクセスストーリの始まりとなったわけだ。
さらに、生産工場と電池のサプライ、そして充電ネットワークについても、初期の段階でイーロン・マスクは重要な決断を下している。
テスラが成長するためには「まともな工場」が必要だが、幸運なことにカリフォルニア州フリーモントのGM/トヨタの合弁工場「NUMMI」が閉鎖となり、これを譲り受けることに成功。この時トヨタはテスラに5000万ドル出資。一時は新型EVの共同開発という話まで持ち上がっている。
電池については、創業以来のパートナーだったパナソニックと合弁で、史上最大のリチウムイオン電池工場の建設に着手。これが、後にGigafactoryと呼ばれることになるのだが、電池の供給能力の重要性を10年前から冷静に認識していたのはさすがと言わざるを得ない。
また、資金的に余裕のない段階から、全米を網羅するスーパーチャージャー充電ネットワークの整備に取り組んだのは、どれだけ賞賛しても足りないくらい凄い。いまや、このスーパーチャージャーがテスラの大きな魅力となっているのを考えると、その先見の明には脱帽するほかない。
これらの仕事をこなしただけでも大したものだが、イーロン・マスクは同時に宇宙ロケット開発のスペースXも経営しているわけで、まさに“超人"と言うより他に表現する言葉が見つからない。ジョブズ亡きあと、アメリカ経済界最大のスターといっても過言ではないだろう。
■対メディアに関しては大いに問題あり?
ほぼすべての動作をテスラどのモデルでもタッチスクリーンで完結させている
しかし、光あるところには必ず影が生じる。イーロン・マスクの強烈なキャラクターが作り出した影として、情報の閉鎖性と独りよがりのガバナンスは大いに問題がある。
情報の閉鎖性については、自動車メディアで仕事をしていると実感する。ふつうの自動車メーカーは、機密に属する事項をのぞけば、メディアに対してあまり隠しごとはしない。
むしろ、技術的な特徴については、日本なら自動車技術会、アメリカならSAEで、論文を積極的に公開する文化があり、特に秘密にしたい核心部分以外は、かなりオープンに情報が手に入る。
対して、テスラはまず広報の窓口がほぼ存在しない。バッテリーから発火した火災や、オートパイロットやFSDでの事故が起きたケースなどは日本でも話題になるが、アメリカのメディアを見てもほとんどの場合テスラはノーコメント。
米国運輸省(DOT)や米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)ですら「舐められている」ようで、リコールや事故調査に協力的とは言い難い印象がある。
■ガバナンスの欠如をどうするのか?
筆者はテスラで問題となっているのはガバナンスの欠如だと厳しく指摘している……
また、ギリギリ合法のラインを守っているとはいえ、オートパイロット(AP)やフル・セルフドライビング(FSD)の脱法的使用を野放しにしているのもいただけない。
APもFSDもレベル2のADASだから、ドライバーは常にステアリングを握って前方を監視する義務がある。しかし、ステアリング入力をごまかす用品(ステアリングに付けるただの重り)を使えば手放しのまま走れるのは、テスラユーザーなら常識。こういう脱法行為にドライバー監視カメラの導入など実効性のある対策を取らないのは、既存の自動車メーカーでは考えられないガバナンスの欠如だ。
2010年に5000万ドルを出資したトヨタは、2016年までにすべての株式を売却してテスラと手を切っているのだが、その理由はテスラのガバナンスにリスクを感じたからと言われている。
トヨタは2009年に北米で大規模なリコール騒動に巻き込まれ、豊田章男社長が議会公聴会に呼ばれるなど大きな痛手をこうむっただけに、ベンチャー気質丸出しで大胆にリスクをとるテスラは、パートナーとしては付き合い切れなかったというところなのかもしれない。
テスラについてあんまりネガティブなことを書くと、ネットでは炎上しがちという説があるけど、それもまたイーロン・マスクの強烈なキャラがハレーションを起こしているのかもしれませんね。
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みんなのコメント
今後、バッテリー供給と価格勝負になっていくが、BYDやテスラ以外に覇者は出ないのでは。
ウインテルがPC市場を席巻したような形で収束しそう。
テスラやBYDがバッテリー供給先として自動車は利益が出なくてもと判断したら、圧倒的な廉価になって既存メーカーは太刀打ち出来なくなる。
BYDと覇権争いが今後激化していくと、どうなることやら。