ベテランも頷く懐かしさ
穏やかなハンドリングで、トコトコと心地良い単気筒エンジン。このライドフィールは、バイクファンの大半以上が好むものではないでしょうか。ただ走るだけで楽しい。どこまでも走り続けたくなります!
【画像】「カッコよすぎ!」発売されたばかりのカワサキ「W230」を画像で見る(20枚)
丸目1灯のヘッドライトに丸みを帯びた燃料タンク、水平基調のフラットシートやキャブトンマフラー、ツインショック、昭和の頃からずっと変わらないオートバイらしいスタイルです。
「やっぱりこれだよなぁ」と、新型なのにどこか懐かしさがあり、ベテランも納得がいく。カワサキWシリーズの末弟として「W230」が11月20日に車両本体価格64万3500円(税込み)で発売されました。
昨秋のジャパンモビリティショー2023で世界初公開され、翌24年春のモーターサイクルショー大阪&東京でも展示。発表以来、問い合わせが殺到していると、販売店から耳にするほどの大反響。
すでに予約し、納車待ちとなっているファンも多数いるそうです。決して急かすわけではありませんが、欲しい人はノンビリなんてしていられませんので、冒頭からここに記しておきましょう。
低中速重視のエンジン設計
鋼管セミダブルクレードルフレームに積む空冷4ストローク単気筒は、ボア・ストロークがスクエア気味の67x66mmで、排気量を232ccとしています。
最高出力はわずか18PSですが、スペックなど気にしません。シンプルで信頼性の高いSOHC2バルブで、低中回転域のフィーリングを重視したセッティングが施されています。
KLX230系のエンジンを用いていますが、より高い慣性モーメントを発揮する重いフライホイールを採用することで、過敏すぎることのないゆったりとしたトルクフィールをもたらし、スロットルを開けるとともに心地よい鼓動感が味わえます。
低回転域で十分なトルクを発揮するカムプロフィールにし、低回転でもエンジン回転を安定させるECUセッティングが施されました。
サウンドにこだわった!
エンジンは空冷であることを誇示するかのように美しいフィンが刻まれ、シリンダーはかつて『650W1』(1966年/昭和41年)が採用していた鋳鉄シリンダーをイメージさせる耐熱ブラックの塗装仕上げとしています。
レトロな雰囲気を強調するように、スロットルボディカバーをクロームメッキ仕上げとしているのも目を見張ります。
左側のクランクケースカバーはW800のイメージを踏襲し、逆三角形のゼネレーターカバーとスターターモーターカバーで構成されました。優美な曲線を描くクランクケースの下では、エキパイが消音室に導かれ、トグロを巻いて再び右側へ出てきますが、ヒートガードによってストレート管のように見せているのも見事としか言いようがありません。
キャブトンマフラーからは乾いた歯切れのよい音。「サウンドチューニングを徹底した」と、MEGURO S1/W230開発リーダーの高谷 聡志さんは教えてくれます。オールステンレスのサイレンサーはバフがけが丁寧に施され、その仕上がりはじつに美しい。
また、内部構造はスタイリングをモチーフにした「カワサキ250メグロSG」(1964年/昭和39年)のマフラーを再現しているから驚きを隠せません。
パンチングパイプの孔の大きさや配置がほとんど同じで、兄弟車としてデビューした『MEGURO S1』(72万500円)とともに、耳障りの良いサウンドを奏でますから、もぉ~たまりません!
先進技術もレトロに魅せる
ライトハウジングにボリューム感を持たせ、トラディショナルなスタイリングにマッチするオーソドックスな丸目ヘッドライトは、配光特性に優れた高輝度LEDをローとハイで上下ふたつのパートに分けて配置。上下両方にポジションランプを装備することで、バルブ型ヘッドライトのようにライト全体が点灯して見えるように設計されているのもこだわりを感じてなりません。
メーターは左に速度、右にエンジン回転計の二眼式。スピードメーターに埋め込まれた小型液晶ディスプレイには、オド/トリップメーター、時計を切り替え表示。タコメーターにはETCインジケーターも備わります。文字盤にはアイコニックな「W」のブランドロゴが入り、ブラックの背景にレトロ感あふれる黄色のフォントが使われています。
アップライトなライディングポジションを生み出すハンドルで、燃料タンクはニーグリップがしやすい形状。シート高は745mmと低く、身長175cm/体重66kgの筆者だと、両足がべったりとカカトまで地面に届きます。143kgしかない軽量な車体で、取り回しも苦になりません。
インナーチューブ径37mmの正立フォークは117mm、オーソドックスなツインショックは95mmのストローク量を持ち、ブレーキは前後ともシングルディスク仕様。ローター径は2ピストンキャリパーを持つフロントが265mm、リヤは220mmで十分な制動力を発揮します。
大ヒット間違いなし!
フロント18インチは650W1と同じホイール径。神経質さのない、ゆったりとしたステアリングフィールを生み出しています。筆者(青木タカオ)は前輪を19インチ化し、チェンジペダルを現代のバイクのように左へ移したカワサキ『W1SA』(1971年/昭和46年)に30年間乗り続けていますが、“ダブル”と聞けばやはり気になって仕方がありません。
ずっと飽きずに乗り続けられる。そんなオートバイがカワサキWシリーズなのです。奇をてらったところはなく、日本の道にちょうどいい。街乗りメインの日常使い、休日のツーリングにと、我々が愛車に求める必要最低限の性能を有し、尖った部分がありません。
自分に寄り添ってくれる愛車として、長く所有するほどに愛着がわく。間違いなく、『W230』もそうなるでしょう。
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