欧州以外ではかなり高い評価を受けている
「日本車は壊れないから高く売れる」。アメリカ人たちは、こんなことをよく言う。日本車が海外に本格的に輸出されるようになったのは、1960年代。輸出先の多くはアメリカだった。最初は、「東洋の島国からやって来た小型車」という感じで、でっかいアメ車たちのなかで肩身の狭い思いしてきた日本車たち。
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しかし、70年代に入ると一気に風向きが変わった。排気ガス規制のマスキー法の施行と、オイルショックが重なり、大排気量で大柄ボディのアメ車たちの氷河期に突入。代わって市場のリーダーになったのが、燃費が良くて壊れない日本車だった。80年代以降、アメリカで日本車の販売台数は一気に伸びると、「俺たちの仕事がなくなる」とアメ車製造工場の従業員たちが日本車を大型ハンマーで叩き壊すデモンストレーションをするなど、日米経済摩擦に発展。その後、90年代に入るとアメリカ国内での日本車製造工場が次々にオープンし、アメリカ人は雇用が安定したことで日本車バッシングは沈静化した。
そして2018年現在、アメリカ人にとっての日本車は、ごく自然なかたちで日常生活の中に溶け込んでいる。さらに言えば、アメ車や韓国車に比べて「故障することが少ない」というイメージが強く、いや実際に故障も少なく、そのため中古車価格も高値で取引されている。燃費が良くて、下取り価格が高い日本車は、実用・実利主義のアメリカ人のお気に入りである。
一方、ジャーマン3を要する自動車先進地域の欧州では、日本車に対するイメージは少し違う。故障しにくく、下取りもまあまあ良いという点では、アメリカと同じ。だが、欧州車が築き上げたヒエラルキーを崩すまでには至っていないのが実情だ。
ヒエラルキーとは、社会における地位を指す。具体的には、メルセデス・ベンツやBMWが上位にいて、それをアウディなどが追う。一般庶民はフォルクスワーゲンやルノーで、その少し下にフォルクスワーゲンから派生したスペインのセアトとチェコのシュコダがいる。
日本車の位置付けは、フォルクスワーゲンと、セアト・シュコダの中間といった感じだ。ただし、トヨタのハイブリッドは先進的な商品イメージで、欧州ヒエラルキーの中で別格の存在。また、近年はレクサスやインフィニティに対して、理解を示す欧州人も増えてきている。
では、アジア圏での日本車はどうか? まず、東南アジアに行くと、どの国も日本車だらけ。タイでも、ベトナムでも、ミャンマーでも、「日本車は品質が高い」と高評価で、中古価格もけっこう高い。また、カンボジアでは、ほかの日系メーカーより遅れて市場参入したマツダは「BMWと同格ブランド」というイメージがあるほど、高級ブランドである。
そして、販売台数3000万台の世界ナンバーワン市場の中国でも、日本車は品質が高いことで評価は極めて高い。ただし、富裕層になると欧州車志向が極めて強くなる。そうしたマーケットにレクサスは中国人の趣向を強く意識した新型ESを登場させるなど、中国プレミアム市場への積極的なアプローチを行っている。世界各地、ところ変われば、日本車のイメージもいろいろ違う。
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