BMWは2020年10月7日、BMW128tiを本国で発表した。「ti」といえば、かつて3シリーズに設定されていたコンパクトハッチバック。その「ti」が実に16年ぶりに復活したのだ。
しかし、かつての「ti」のようなコンパクトなハッチバックではなく、往年のスポーツモデルとBMWコンパクトの両方の歴史を受け継ぐ正統派として復活した。
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「ti」シリーズ最初のモデルとなる128tiには265hpを発生する2L、直4ターボが搭載されている。まさにFFスポーツ最強といわれる、VWゴルフGTI(245hp/2L、直4ターボ)を打倒するべく投入された、ゴルフGTIイーターなのだ。
さて、発表された新型128tiはどんなモデルなのか? ゴルフGTIと比較しながらその中身に迫ってみたい。
文/大音安弘
写真/BMW VW
【画像ギャラリー】はたしてどちらがFF最強か? 新型BMW128tiとVWゴルフGTIを写真でチェック!
FF最強のスポーツハッチとして復活!
アグレッシブな顔つきの128ti。ハイグロスブラック仕上げのキドニーグリルやブラック化したミラーキャップ、前後バンパーのサイドスリットとサイドシルスポイラーに赤を配することで、スポーティさを強調をしている
サイドシルスポイラーに貼られたtiの赤いレタリングが映える。225/40R18タイヤ+8J×18のMライトアロイホイールを装着。車高は10mmローダウン化され、専用チューニングのMスポーツサスペンションと機械式トルセンリミテッドスリップデフを標準装備
BMWは、2020年10月7日、新型モデル「128ti」の詳細を発表した。同車は、2020年9月16日に、ニュルブルクリンク・ノルドシェラフにて最終テストを実施していることを公表し、その存在が明かされたばかり。
「ti」といえば、BMWファンにとって、馴染みあるモデル名の復活となるが、同時にBMWにとって新境地を切り開く一台であることを忘れてはならない。
なにしろ、「グリーンヘル」の異名をとる世界一過酷なサーキットで仕上げていることを強調しているのだから。
まずは「ti」の歴史を振り返ろう。時は1963年まで遡る。BMW1800TIは、BMW1800の高性能モデルとして世に送り出される。
その名は「Turismo Internazionale(国際ツーリングカーレース)」の頭文字を与えたものであり、高性能GTであるとともに、モータースポーツ車両として高い素質を備えていることを意味していた。
最大の特徴は、デュアルキャブレターを2基与えることで高出力化を図ったこと。当時の標準的なセダンは、45hpから60hp程度だったのに対して、約2倍となる110hpを発揮しており、スポーツカーをライバルとした。
その後、ツインキャブレターの「TI」は、日本でも有名なマルニこと「2002」まで受け継がれ、高い人気を誇った。
1966年から1977年にかけて生産された小型2ドアセダン、02シリーズに設定された2002ti
さらに時は流れ、1994年、3シリーズのプレミアムコンパクトハッチバックとして「ti」の名が復活。
3シリーズのトランクを切り落とし、ショートボディ化を図ったようなユニークなスタイリングが与えられていた。
1994年3月に登場した3シリーズtiコンパクト
初代3シリーズtiは、E36型のデザインを纏っていたが、一世代前のE30型3シリーズベースに開発されたものであった。
しかし、次期型となるE46型では、3シリーズとプラットフォームが共有化。ただフロントマスクも個性的な専用デザインとし、差別化が図られた。
2001年1月に登場した3シリーズtiコンパクト。他のE46型3シリーズとシャシー、サスペンションを共用化していた
FFスポーツモデルの頂点へ
ハイグロスブラック仕上げのキドニーグリルが特徴
バランスのとれたプロポーション。FF最強スポーツとしてどのように発展していくのかも楽しみだ
ブラックとレッドのアクセントがtiの特徴
その後、3シリーズのコンパクトハッチ「ti」は、2004年に、1シリーズへと発展。独自路線を歩むことになる。つまり、新生「ti」は往年のスポーツモデルとBMWコンパクトの両方の歴史を受け継ぐ正統派として復活を果たそうとしているのだ。
BMWは、新しい「ti」を「単なる新しい1シリーズのバリエーションではない」と明言する。そのポジションは、1シリーズの最上位モデル「BMW M135i xDrive」の次ぐものだというから、そのスポーツ度の本気が伺える。
エクステリアデザインは、Mエアロを纏う「M135i xDrive」と似たMスタイリングのものだが、各部に専用のフィッシュが加えられている。
キドニーグリルはハイグロスブラック仕上げとなり、ミラーキャップもブラック化。前後バンパーのサイドスリットとサイドシルスポイラーに赤を配することで、スポーティさを強調。
さらにサイドシルスポイラーには、赤い「ti」レタリングが躍る。かなり軽快かつ若々しい装いだ。
ただし、ボディ色にメルボルンレッドかミサイノブルーを選んだ場合は、アクセントパーツとバッチカラーは、ブラックに置き換えられるという。
レッドステッチが入るスポーティなインテリア
基本的なデザインは1シリーズと変わらないが随所にレッドステッチが入る。10.25インチのディスプレイを装備。MスポーツステアリングやMフットレスト、Mペダル(ステンレス製)などMパーツがふんだんに取り入れられている
ホールド性の高いti専用のスポーツシートにも赤いアクセントが入る
コンソールにはtiの赤い刺繍が入る
初公開となるインテリアにも、他モデルとは少し異なり、アクセントカラーとして赤を積極的に採用。
ステッチやセンターコンソールボックス上の「ti」ロゴ、シート表皮のストライブデザインなどが赤色で統一されている。シートはスポーツシートとなり、ステアリングもMスポーツデザインが標準となる。
ゴルフGTIを上回る265hpの2L、直4ターボを搭載
新開発の265hpを発生する2L、直4ターボに8速スポーツATを組み合わせる
注目のパワーユニットは、新開発の2L、直4DOHCターボを搭載。これは、M135i xDriveから派生したユニットだという。
最高出力は265hp/4750~6500rpm、最大トルクは400Nm/1750~4500rpmを発揮。これに8速スポーツATが組み合わされる。
0-100km/h加速は、6.1秒と公表されている。最高出力と加速性能では、M135iには遠くおよばないが、128tiは車両重量が1445kgに留められており、約80kgも軽量という武器があるのだ。
BMWによれば、この新しい前輪駆動のスポーツカーは、典型的なBMWの駆け抜ける喜びに焦点を当てた、特に若者をターゲットしたモデルだという。
そのために、足元には、10mmローダウン化を図り、専用チューニングを加えたMスポーツサスペンションと機械式トルセンリミテッドスリップデフを標準化。
ステアリングやサスペンションも専用チューニングが施される。アンチロールバーとブレーキシステムは、M135i xDriveから受け継がれ、軽量なMホイールと225/40R18のミシュランパイロットスポーツ4を装着している。
2シリーズのMPVからスタートしたBMWの前輪駆動車は、正直、スポーツ性という点ではイマイチであった。
ところが新型1シリーズの登場で、BMW流のFFテイストが見えてきたように感じられる。
事実、MINIのJCWも最新世代でひと皮むけた感があり、その経験も活かされているのだろう。tiの復活は、FFでもBMW風味が出せるという強い自信の表われともいえる。
VWゴルフGTIと真っ向勝負!
欧州では2020年9月から受注が開始された新型ゴルフGTI。赤いラインの入ったフロントグリルと伝統のハニカムグリルを備えた大型のエアインテークグリルが特徴。オプションのフォグランプはX字型に光る
GTI専用のスポーツステアリング、伝統のタータンチェック柄の専用スポーツシート、ステンレス製ペダルを装備。また10.25インチのデジタルコクピットと10インチのナビゲーションシステム(DiscoverPro)など最新のインフォテインメントシステムを採用
FFスポーツといえば、ドイツには最強のライバルが存在する、そうVWゴルフGTIだ。2020年4月、コロナウイルスの影響で中止されたジュネーブショーから舞台をバーチャルモーターショーに移し、ゴルフ8ベースの新型GTIが世界初披露されている。
そのスペックは、2L、直4ターボエンジンを搭載。最高出力245hp、最大トルク370Nmを発揮。トランスミッションは、7速DCTを組み合わせる。
車両重量は1463kgで、0-100km/h加速が6.3秒と記されている。ただし、フロントアクスルディファレンシャルロックを装備すると、6.2秒に短縮される。
0-100km/h加速では、6.1秒の128tiがゴルフGTIをリードする。ちなみに最高速度は、いずれも250km/hと同じだ。これらのデータからだけでも、128tiがゴルフGTIイーターであることは一目瞭然だろう。
ドイツ価格では、128tiが4万1575ユーロ(約515万円)に対して、ゴルフGTI(7DSG仕様)が3万7608ユーロ(約466万円)とゴルフのほうが50万円以上も安い。
性能が拮抗すると思われるだけに、ややゴルフ有利か? いずれも装備差はあるだろうが、走りに関わる部分は、仕様差がないと思われるだけに、この価格差をどう受け止めるかだろう。
1シリーズti、ゴルフGTIともに2021年初夏頃に日本導入と予想
BMW128tiのボディサイズは全長4319×全幅1799×全高1434mm、ホイールベース2670mm。128tiに搭載されるエンジンは265hp/400Nmを発生する2L、直4ターボ
ゴルフGTIのボディサイズは全長4287×全幅1789×全高1478mm、ホイールベース2627mm。搭載されるエンジンは245ps/370Nmを発生する2L、直4ターボ
欧州では、新型ゴルフGTIはすでに発売済みで、BMW128tiも2020年11月の発売を予告している。
ライバルとなるゴルフは、ベースモデル自体の日本での導入が2020年早々と見られ、GTIの導入は当然、その後になる。
一方、BMWは比較的スピーディな導入が図られるため、新型BMW1シリーズti、新型ゴルフGTIの日本発表時期はいずれも2021年初夏頃ではないかと予想する。
数々のスポーツカーを手玉に取ってきたゴルフGTIか、それとも新境地のFFスポーツに挑むBMW128tiか。その勝負の行方が、今から楽しみだ。
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