■あなたは「前向き駐車」と「後ろ向き駐車」どっち?
日本では、バックから駐車する「後ろ向き駐車」がスタンダードとなっています。
一方で、アメリカやヨーロッパでは前向き駐車がほとんどです。なぜ、日本では後ろ向き駐車が多いのでしょうか。
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自動車業界では「道がクルマをつくる」という有名な言葉があります。
アメリカのように国土が広大で、なおかつガソリン価格が安い国では、大きなエンジンを搭載したゆとりのあるクルマが育ち、高速道路による都市間移動の多いヨーロッパでは、走行安定性の高い、いわゆる「走りの良いクルマ」が育つというのが良い例です。
そして日本では、人口密度の高さや石油資源の少なさから、コンパクトなエコカーが育ちました。
このように、その国や地域の事情とクルマの進化は切っても切れない関係にありますが、クルマそのもののみならず、クルマの使い方にも地域性は表れるようです。
そのもっとも有名な例のひとつが、駐車の方法です。日本では、片方が閉じている駐車場の場合、バックから駐車する「後ろ向き駐車」が一般的です。
一方で、アメリカやヨーロッパなどでは、特別の事情がない限りは、頭から駐車する場合がほとんどです。
もちろん例外はありますが、なぜここまではっきりとした違いが見られるのでしょうか。
そもそも、駐車場における駐車の向きを規定した法律はありません。というのも、駐車場は原則として私有地であるため、道路交通法の範疇外となる場合が多いためです。
住宅地に面したコンビニエンスストアなどでは、騒音や排気ガスなどに配慮から、住宅地側へ頭を向ける前向き駐車を指定する場合もありますが、もし仮にそうした場所で後ろ向き駐車をしたとしても、現実的には、罪に問われる可能性は低いと思われます。
つまり、日本で後ろ向き駐車が多い理由は、法律上の問題ではなく、文化や慣習に依存するものといえます。
実際、運転免許を取得する際の教習所などで配布される教本内の「3 自動車の運転方法 1-5 発進にあたっての安全確認(3)」には、以下のような記載があります。
「バックで発進することは危険ですから、車庫などに入れるときは、あらかじめ発進しやすいようにバックで入れておきましょう」
このように、教習所などでは発進時の安全の観点から後ろ向き駐車を推奨しているようです。
また、前向き駐車よりも後ろ向き駐車のほうが、駐車がしやすいということも理由として挙げられます。
ほとんどのクルマは前輪が操舵輪となっているため、前進方向への旋回時には、構造上内輪差が生じることになります。
バック時には後輪の軌跡に対して内輪差が生じないため、後ろ向き駐車のほうが、駐車をするために必要なスペースが少なくなる傾向があります。
東京をはじめとする日本の都市は、世界的に見ても人口密度が高い一方で、世界トップクラスの自動車保有台数を誇っていることから、ほとんどの駐車場が必要最低限のスペースしか用意していない場所がほとんどです。
そのため、世界的に見ても駐車の難易度が高いことで知られており、より少ないスペースで駐車できる後ろ向き駐車のほうが浸透したと考えられます。
一方、広大な国土をもつアメリカや、人口密度の低いヨーロッパでは、日本ほど駐車スペースが狭くないことから、後ろ向き駐車が一般的にならなかったようです。
この説を裏付けるものとして、シンガポールや香港といった、日本と同等以上に人口密度が高く、クルマが多い地域の例が挙げられます。
これらの国や地域では、日本と同様に後ろ向き駐車することが多く、人口密度やクルマの多さと、駐車の向きには関連があるといえそうです。
■前向き駐車にもメリットがあった! その思わぬ効果とは?
アメリカやヨーロッパでは前向き駐車が一般的な理由は、単に人口密度が低いというだけではないようです。
例えば、アメリカやヨーロッパの場合、日本の都市部よりもスーパーマーケットやコンビニエンスストアの密度が低いことから買い物の頻度が少なくなる一方で、家が広くストレージスペースを確保しやすいことから、1回の買い物で買い込む食料品や日用品が多くなる傾向があります。
スーパーマーケットが遠く、1度の買い物の量が多ければ当然、クルマを使うことになります。
大量の商品をクルマに運び入れるには、トランクやリアハッチを開ける必要があり、荷物を積みやすいように前向き駐車をするケースが多いようです。
また、治安の悪い地域では、防犯の意味合いから前向き駐車をする人もいるようです。
前向き駐車の場合、発進時にまずバックする必要があり、後ろ向き駐車に比べて発進してすぐに逃走に移行する難易度が高いことが防犯対策になるというのが理由のようです。
※ ※ ※
駐車の方法は国や地域によって特色が出やすい部分ですが、近年ではバックモニターやコーナーセンサーの普及により、より安心かつ安全に駐車できるようになっています。
一部の車種では自動駐車機能を備えているものもあり、そうしたクルマが普及すれば、また新たな駐車文化が生まれるかもしれません。
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