ドライバーである以上、運転がうまくなりたいと思うのは当然のこと。では、運転が上達するにはどうすればいいのか? 今回は、運転がうまくなれるクルマについて見ていくことにしたい。
文/長谷川 敦、写真/スズキ、ホンダ、マツダ、写真AC
ロードスターに乗ればうまくなる!?? 運転技術上達につながるクルマ4選
そもそも上手な運転とはどういうことか?
学力テストやスポーツなどとは違って「運転のうまさ」は数字で評価しにくい。それでも運転のうまい人は確実に存在するし、同様に運転が不得意な人もいる
ひと言で「運転がうまい」といっても、それはクルマを速く走らせられるのか、あるいは安全性が高いのか? はたまた車庫入れが上手にできるのかなど、いろいろな「うまさ」が考えられる。
サイズやパワーの異なる多様な車種が混在し、ドライバーのレベルもまちまちな公道走行においては、事故を起こさず周りのクルマにも迷惑をかけない運転が「うまい」といえるだろう。
さらに誰かを乗せている場合、同乗者に不快感や不安を与えない運転にも「うまい」という評価が与えられる。
実は、ここまであげたさまざまな「うまさ」のなかで、低速での車庫入れ以外はある程度共通の要素によってそれが決定される。それはクルマを上手に操れるということ。
クルマを上手に操れる人には運転に余裕があり、それが周囲に注意を払えることにもつながる。そういう人ならば、交通安全に貢献するとともに同乗者も不快にはならない。
車庫入れや縦列駐車が上手にできる人も運転がうまいといわれるが、これは走行するクルマをうまく操るというのとは少々異なるテクニックになる。
もちろん公道走行も車庫入れもうまい人はいるが、実はレーシングドライバーでも車庫入れを苦手にしている人はいる。
今回は、クルマを上手に走らせられる人を「うまい」と定義づけ、うまくなるためにはどんな車種で練習すればいいのかを考えていこう。
運転がうまくなるクルマとはどんなクルマ?
制限速度のないサーキットを走ると、自分がドライブしているクルマの限界がわかりやすい。限界を知っていると、それが公道走行の際に余裕となって現れる
ここからのテーマは「運転がうまくなるクルマ」だ。
サーキットやダートトライアル、氷上など、クルマが限界で走れるフィールドでの走行経験を積めば、それがどんなクルマであっても運転テクニックが上達するのは間違いない。
だが、一般ドライバーがサーキットを走る機会はまれで、一生それを経験しない人がほとんどだ。であれば、日常走行が運転の上達につながるクルマを選べばいいということになる。
ここでお薦めなのが、コンパクトなサイズでキビキビ走るクルマだ。ハンドルやアクセル操作に対して俊敏に動くクルマは、乱暴な操作をするとそれが過剰な挙動になって現われる。ガクガクと動くような操作は、運転手自身はともかく、同乗者にとって迷惑このうえない。
このようなクルマをスムーズに操作できるようになれば、それは運転がうまくなったといって差し支えないだろう。少々過敏な挙動のクルマで習得したスムーズ操作は、動きのゆったりしたセダンやミニバンなどを運転する際にも役に立つ。
では、具体的にはどのクルマが運転技術上達に貢献するのか? 今回は現在でも新車で購入可能な車種をメインに見ていきたい。
運転技術上達につながるクルマ4選
●マツダ ロードスター
現行型のマツダ ロードスター。シリーズ4代目にあたるモデルであり、大型化によって一部に不評を買った3代目よりもコンパクトなサイズになっている
いまや日本を代表する2座席オープンスポーツカーのマツダ ロードスター。このクルマの特徴は、軽量&コンパクトでリア2輪駆動(FR)なこと。
現在の公道車はスペース効率などに優れるFF(フロントエンジン・フロント駆動)が全盛で、FR(フロントエンジン・リア駆動)のクルマは少ない。操縦性が機敏で、限界付近ではリアタイヤから滑りやすいFRのほうが、運転が難しいといわれているのも数を減らしている理由だ。
しかしロードスターはスポーツドライビングを優先して伝統的なFR方式を採用している。これが機敏な操縦性を生み出し、実際にこの操縦性を好む人も多い。
マニュアルトランスミッション(MT)搭載車があるのも注目したいポイントのひとつ。クラッチとシフトレバーの操作をシンクロさせつつ、ハンドル操作も同時に行うMT車の運転をマスターできれば、それは総合的な運転技術の向上に結びつく。
歴代ロードスターはどれもドライバーを鍛えるクルマだったが、現行型の4代目にもこの性質は色濃く引き継がれている。現行型ロードスターを純粋に練習用と考えるには少々高価かもしれないが、技術の習得に効果的なのは間違いない。
●スズキ スイフトスポーツ
現行型スズキ スイフトスポーツ。上は6速MT仕様セーフティパッケージのイメージ写真だが、この写真からもアグレッシブなクルマであることが理解できる
スズキのスポーティハッチバック車がスイフトスポーツ。このモデルはFFだが、運転技術を向上させる要素を多分に持っている。
まずはFFなのにクイックなハンドリング特性に味付けされていること。前述しているが、機敏なクルマを優しく扱えるようになると確実に運転はうまくなる。
元々スイフトは世界ジュニアラリー選手権にも導入されたレース志向の強いモデルであり、2003年に発売された初代スイフトスポーツは、5速MT仕様のみが設定され、オーディオレスというレース用ベース車両的な位置づけだった。
その後スイフトスポーツでのレース&ラリー活動は終了しているが、4代目となった現在でもレーサーのDNAは継承され、軽量なボディに140psを発生するターボエンジンの組み合わせは、申しぶんない速さを発揮する。
現在では数少ないMTモデルがラインナップされているのも運転技術向上には適していて、スポーツの名称を冠するだけあって足回りも硬めに仕上げられる。
スイフトスポーツの美点は日常使用車としても優秀なこと。4ドア5人乗りに加えて十分なサイズの荷室も用意されている。普段は実用車として使いながら、時にはスポーツドライブを楽しむことで運転もうまくなれる。
●ホンダ N-ONE
ホンダ N-ONE。写真のRSグレードには6速MTモデルがラインナップされ、ターボチャージャーで武装したエンジンが660ccとは思えないパワーを発揮する
続いて軽自動車なのにスポーティなキャラクターを持ち、さらにMT仕様もラインナップされているホンダのN-ONEをあげたい。
N-ONEは軽セミトールワゴンにカテゴライズされるモデルで、基本的には日常使いを重視した実用性の高いクルマだ。しかしそこは走りにこだわるホンダのこと、RSグレードのモデルはエンジンをターボで武装し、6速MT仕様も用意している。
64psを叩き出すパワフルな660ccターボエンジンが軽量な車体に搭載され、動力性能はいうことナシ! そんなN-ONEを、6速MTを操りながらドライブする。これを考えただけでも運転がうまくなるのは間違いないだろう。
少々残念なのは駆動方式がFFということ。実用性重視の軽自動車なのでこれはある意味当然だが、できればFRがよかったと考えるかもしれない。
●ホンダ S660
ホンダ S660。貴重な軽ミドシップモデルでファンも多かったが、残念ながら2022年で製造・販売が終了した
ホンダからはエンジンをミドシップ(運転席と後輪の間)に搭載した飛びきりスポーティな軽自動車のS660がリリースされていたが、同車は2022年3月をもって販売を終了している。ただし、販売終了から間もないこともあって、現在でもS660の入手は比較的容易だ。
FFはもちろん、FRよりもさらに俊敏な運動性能を発揮するミドシップ(MR)のS660なら、運転技術上達のための強い味方になってくれる。
S660は2シーター車のため、ドライバーはクルマの中心付近に着座する。このため4輪の動きを体感しやすく、FFはおろかFRよりもクイックなMR車の挙動をコントロールする訓練になる。
運転好きならMR車の動きも好きになるはずで、自然とドライブする機会も増え、それが運転技術の向上にもつながる。
今回は運転がうまくなれるクルマ4モデルを紹介したが、もちろんどんなクルマに乗っていたって、日頃から丁寧な操作と周囲への注意を続けていれば運転技術は自然に上達する。
機会があれば、サーキットなどで行われるスポーツ走行会に参加してみるのもいいだろう。愛車の限界領域での挙動と自身の技量を知っておけば、日常のドライブにも余裕が生まれる。
とはいえ公道で最優先されるのは安全である。常に安全運転を心がけていれば、それだけでも運転がうまくなるといえるだろう。
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