■80sポップカルチャーを象徴する歴史的名作とは
英国シルバーストーン・オークション社は、英国フェラーリ・オーナーズ・クラブとのコラボレーションのもと、2021年6月上旬にフェラーリだけを対象としたワンメイクオークション「The Sale of Ferraris in Association with Ferrari Owners’ Club of Great Britain」を対面型で開催。
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クラシック世代から現代のモデルに至る車両、フェラーリにまつわるオードモビリアなど136アイテムが出品された。
今回は、そのオークションに出品された1台、世界的コレクターが長らく所有していたという1987年型フェラーリ「テスタロッサ」を俎上に載せ、オークション「レビュー」しよう。
●1987 フェラーリ「テスタロッサ」
フェラーリ・テスタロッサは「512BBi」の後継モデルとして1984年パリ・サロンに登場した伝説の12気筒ベルリネッタだ。そのネーミングは、1950年代終盤から1960年代初頭にかけて、FIA世界スポーツカー選手権の絶対王者として君臨したレーシングスポーツ、「250テスタロッサ」に由来する。
1973年のデビューから連綿と進化を図ってきたBB系ユニットを4バルブ化し、390psまでスープアップしたボクサー(180度V型)12気筒5リッターのエンジンを、同じくBB系からホイールベースを50mm延長した鋼管スペースフレームに搭載。290km/hの最高速度を標榜した。
一方、新時代のフェラーリを宣言するごとき意欲的かつアグレッシブなボディは、量産ベルリネッタとしては初めてスカリエッティではなく、ピニンファリーナが架装。デザインワークは同社に所属していたスタイリスト、故エマヌエーレ・ニコジアが中心になって手掛けたとされている。
そして、今や伝説として語られる北米のTVドラマ『マイアミバイス』でも、主人公ソニー・クロケット刑事の愛車として大活躍するなど、1980年代カルチャーを象徴するスーパーカーとして世界中のファンを魅了することになったのだ。
●現代における「テスタロッサ」の評価は
テスタロッサは、フェラーリ栄光の歴史の中でも特筆されるべき名車の1台だ。商業的にも成功をおさめ、生産台数は7177台にのぼった。ただこの生産台数の多さゆえに、クラシックカー・マーケットにおいてこの種のクルマに求められる「希少価値」という点では、いささか分が悪くなってしまっていることも否めない事実のようだ。
それでも数年前のフェラーリ暴騰の際には、カリスマゆえに2000万円越えの取引が頻発していたものの、ここ1、2年で明らかに沈静化してしまった感がある。
たとえば、昨2020年11月にRMサザビーズ北米本社が開催した「OPEN ROADS, FALL」では、極上のコンディションを誇るテスタロッサが17万500ドル、日本円にして1760万円で落札されたことは記憶に新しい。
そんな現況のもと、英国フェラーリ・クラブとのコラボ開催でおこなわれたオークションに出品される漆黒のテスタロッサに、われわれは大いに注目したのである。
■コンクール・コンディションで維持された1台の落札結果は?
このほどシルバーストーン・オークション社と英国フェラーリ・オーナーズ・クラブが共催したオークション、「The Sale of Ferraris in Association with Ferrari Owners’ Club of Great Britain」に出品された1987年型フェラーリ・テスタロッサは、かつてサンディエゴのフェラーリ代理店だった「コーンズ・モータース」社によって販売された、アメリカ仕様の左ハンドル車である。
●どのようなヒストリーを持つ「テスタロッサ」なのか
マイナーチェンジによって5穴ホイールとなったばかりの時期の中期型で、当時13万5050ドルで販売されたという記録が残されている。
この個体における最大のトピックは、カリフォルニア州サンディエゴに隣接する高級リゾート地、ラホーヤ在住の著名なカーコレクターにして、コンクール・デレガンス上位入賞の常連でもあるケネス・C・スミス氏が新車として購入したこととされる。
スミス氏のコレクションは、ロールスロイス、フェラーリ、パッカード、アストンマーティン、ジャガー、シボレー「コルベット」など多岐にわたるものとのこと。マーケティングおよび広告事業から引退したのち、ラホーヤのハーシェルアベニューに置かれた自身のオフィスを拠点に、コレクタブルなクラシックカーの販売にも携わり、欧米のクラシックカー界における名士として認知されているそうだ。
当然のことながら、スミス氏の所有するすべてのクルマは「コンクール・コンディション」だ。2014年の「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」において部門賞を獲得したロールス・ロイス「ファントムVセダンカ・ド・ヴィル」と同様に、全車とも正しい考証に基づいた最上級のコンディションで維持されているとのことである。
そんな最高のコレクターが30年以上にわたって愛蔵していたこともあって、この黒いテスタロッサも最高クラスの1台と思われる。ともに「ネロ(黒)」で仕立てられたエクステリア/インテリアは、1万4280マイル(約2万3000km)というローマイレージを物語るように、あたかも新車のような美しさを保持している。
2019年に、アメリカとイギリスに半年ずつ在住する現オーナーによって英国に輸入されたのち、ノッティンガムのフェラーリ正規代理店「グレイポール・フェラーリ(Graypaul Ferrari)」社に直行。テスタロッサでは肝要なタイミングベルト交換を含む、エンジンのフルサービスや、細かいメンテナンスサービスを受けたという。
また今回のオークション出品に際しては、オリジナルのドキュメントにレザーウォレット入りのブックセット、純正オプションだったスケドーニ社製ラゲッジセット(出荷時に入れられる麻袋つき)も添付されるなど、クラシック・フェラーリを手に入れる際に求められる条件は、すべて満たしているかに思われる。
さらに今回のオークション落札者には、英国のフェラーリ・オーナーズ・クラブの無料会員資格を受ける一年分の権利も付与されるとのことであった。
●アメリカンな「テスタロッサ」の最終ジャッジは?
シルバーストーン・オークション社は「これは素晴らしいコンディションと非常に少ない走行距離で保有され、ドライバーに極上の楽しさと冒険を与える準備の整ったテスタロッサを手に入れる最高のチャンスです」という謳い文句とともに、9万から11万英ポンド、つまり日本円換算で約1382万円から約1690万円というエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところが競売では入札が進まず、あえなくNo Sale(流札)に終わってしまったのだ。
車両コンディションや来歴からすれば、エスティメートが高すぎだったとも思えないいっぽうで、やはりサイドマーカーやリアバンパーの巨大な樹脂製ガーニッシュなど、北米仕様特有の追加パーツが「無粋」と評されたか、あるいはポリッシュ仕上げの施された「アメリカンな」アロイホイールがイギリスのフェラーリ愛好家には敬遠されたのか、などの理由も推測される。
たとえ著名コレクターが大切に保有してきたテスタロッサであっても、オークション現場の「流れ」を獲得できない限り、高価落札とはならないことを証明したかにも感じられた1台である。
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みんなのコメント
確かにフェラーリのアメリカ仕様、敬遠されがちですよね、たとえ人気カラーであっても。現行モデルに関してはパワー等はヨーロッパ仕様と遜色ないと思いますが。
さて話がそれましたが、本題のテスタロッサ、アメリカ仕様というのが評価を下げましたね、状態は素晴らしいだけに残念。
個人的にアメリカ仕様のテスタロッサに限らず、ストップランプは気になりませんが、サイドマーカーやウインカーレンズ類がいけないと思います。308に関しては一番、アメリカ仕様が嫌われる顕著なモデルと思います。
一方でアメリカ仕様といえでもフェラーリはフェラーリなので、それをあえて安く買って、外見だけはヨーロッパ仕様に換えて楽しむのも、あり、だと思います。
このろくでなし感がたまらんね
欲しい