英国で唯一のアルピナの輸入代理店に
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
【画像】詳細テストで満点獲得 アルピナB3 ツーリング リムジンとベースの3シリーズも 全67枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
英国リバブールの有名なナイトクラブ、キャバーン・クラブを開業したのは、もとレーシングドライバー、フランク・シトナーの兄、アランだった。その後2人で事業を拡大させ、1968年に英国初のBMW専門ディーラーをノッティンガムに立ち上げた。
それからの30年間で、ネットワークを拡大。2002年にロジャー・ペンスキーが経営する、当時のユナイテッドオート・グループから1億5500万ドルで買収されるほどの企業へ育て上げた。
その成功は、フランク・シトナーの手腕によるところが大きい。長年モータースポーツへ情熱を注いできた人物だ。シトナーが10歳の時には、BRMのV型16気筒を載せたF1マシンが傍にあったという。
シトナーはオースチンA40でレース・キャリアをスタート。1970年代にウイリアムズの前身、フォーミュラ・フォードに移り憧れるような戦いを繰り広げた。1988年にはプロドライブが用意したE30 M3を駆り、英国ツーリングカー選手権で優勝している。
その走りから、「怖いもの知らずのフランク」という愛称で親しまれた。優れた才能を自ら信じていたという。
彼の英雄伝を語りだすと紙面が足りない。今回はB3 ツーリングにまつわる話だった。英国でアルピナを広く知らしめた彼に、インタビューした内容をご紹介したい。
1981年の夏、シトナーは兄のアランとミュンヘンへ向かい、アルピナの創業者、バーカード・ボヴェンシーペンと契約を結んだ。トム・ウォーキンショー・レーシング側の権利を絶ち、英国で唯一のアルピナの輸入代理店となるために。
唯一の存在といえた高性能上級サルーン
果たしてシトナー・ノッティンガム社は、BMWをベースにアルピナへ仕立てることが許可された、ドイツ・ブーフロー以外で唯一の拠点になった。「B9 3.5は、息を呑むようなクルマでしたね」。とシトナーが振り返る。
ボヴェンシーペンと彼のチームが開発した、E28型5シリーズがベースのアルピナだ。「シリアスな高性能エグゼクティブ・スポーツサルーンという、当時唯一の存在でした」
メルセデス・ベンツはまだ、上級さだけに焦点を当てていた。アウディはアンダーステアがひどく、BMWは初代M5を生み出す前だった。
アルピナB9 3.5は248psを獲得。ベース車のBMW 528iは、2.8Lの直6から183psを発生するに留まった。BMWの頂点を飾っていた3.5Lユニットですら、221psの最高出力だった時代だ。
アルピナはその3.5Lエンジンへ全体的に手を加え、5シリーズへ搭載し直した。現在のように、シャシーまわりにも大幅な改良を与え、実際にリフトを抑える効果がある壮観なボディキットで武装させた。
英国のアルピナの歴史で興味深い点は、アルピナが自動車メーカーとして認められるまで、ドイツからは完成車を輸入できなかったこと。シトナーは英国へクルマをコンバージョンする必要があり、芸術的な技術までも持ち込むことになった。
「エンジンやホイール、ボディキット、デフやサスペンション、タイヤにエンブレムなど、すべての部品をコンテナで輸送する許可を得ました」。シトナーが当時を説明する。英国に届くと、その素材をもとにB9が組まれた。
当時のBMWの中でベストのハンドリング
「エンジンは528iから降ろし、ドイツへ送り戻しました。クルマの注文を受ける頃には、アルピナの部品が頻繁にノッティンガムへ届いていました。コンバージョンを習得するため、技術者がブーフローを訪ねてもいます」
かなり手間のかかるプロセスだが、商業的には成り立ったらしい。アウディ・クワトロが2万400ポンド、BMW 528i SEが1万6925ポンドだった時代に、アルピナB9は2万4100ポンドで売られた。
初期の右ハンドル車の多くは、モータースポーツ関係の人物へ渡った。充分な資金を用意できる人たちだ。
「B9 3.5は、隕石のように道を走ります」。1983年、AUTOCARの試乗ドライバーを務めていた、ジョン・マイルズの興奮したコメントの1つ。彼はロータスのF1でヨッヘン・リントとチームメイトだった経験を持ち、優れたシャシーエンジニアでもあった。
「B9のハンドリングは、これまで試乗したBMWの中でベスト。中回転域は、スーパーカーと比較するべき味わいです。BMWの6気筒が、12気筒ユニットのような柔軟性も持ち合わせています」
「記載をはばかる速度域でも、当たり前のように走ります。ドライバーの多くが、通常のBMWよりB9の方が意のままに操れると感じるでしょう。アイドリングより少し上の回転数で、問題なく交通の流れにもついていけます」
「操縦性と乗り心地が融合し、長距離ドライブもこなせるオールラウンドな快適性を生んでいます。ソフトなサスペンションを備えたクルマ以上に」。こんな言葉が続いていた。
この続きは後編にて。
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