デンマークのニッチメーカー、新世代へ
デンマークの自動車メーカーであるゼンヴォは、新型ハイパーカーの「オーロラ」を発表した。ST1やTSRといった従来のモデルから脱却し、新世代のラインナップの幕開けとなる。
【画像】知る人ぞ知るデンマークのハイパーカー【ゼンヴォの新型オーロラと従来モデルを比較する】 全55枚
ゼンヴォ(Zenvo Automotive A/S)は2007年に設立された比較的若い会社で、少量生産のハイパーカーメーカーとしてブランドを確立しつつある。左右に傾く可動式リアウィングなど、独自の技術やデザインで知られる。
ゼンヴォの会長兼最高商業責任者(CCO)のイェンス・スヴェルドラップ氏は新型オーロラについて、AUTOCARにこう語った。「このクルマがどうあるべきか、最初に腰を据えて考えました。なぜこのクルマを買わなければならないのか? なぜゼンヴォなのか?」
そして導き出された答えが、排気量6.6L、4連ターボチャージャーを搭載した巨大なV12エンジンだった。北欧神話に登場する雷神トールのハンマーにちなんで「ミョルナー」と名づけられたこのエンジンは、最高出力1267ps/8000rpmを発生し、9800rpmでレッドラインに達する。
「もし異星人がサーキットに降り立ち、ゼンヴォのV12エンジンの音を耳にしたら、彼らは髪を逆立て、目から涙を流すことでしょう。エモーショナルな存在であり、(サウンドは)重要なのです」
V12ハイブリッドで1875ps 最高速度450km/h
しかし、来るべき排出ガス規制「ユーロ7」への適合を確実にするためには、ハイブリッド化が必要だった。オーロラには203psの電気モーターが3基搭載され、結果的にシステム総出力を1875psに引き上げている。
0-100km/h加速は2.3秒とブガッティ・シロン・スーパースポーツよりも速く、最高速度は450km/hに達するという。また、電気のみで約33kmを走行可能で、サーキット走行に向かう途中、街から静かに抜け出すことができる。「朝の5時にV12エンジンに火を入れるのは、だんだん許されなくなってきている」とスヴェルドラップ氏は冗談めかして言った。
こうした性能にもかかわらず、スヴェルドラップ氏は、決して見出しになるような数字を追い求めることが目的ではなかったと語る。
「ニュルブルクリンクでどれだけ速いかは気にしていません。わたしにとっては、乗り降りしやすいほうがいい。サーキットで1秒の駆け引きをするよりも、その方がわたしにとってはずっと価値があるんです」
そのため、ゼンヴォはアクティブ・エアロによるグリップよりも、機械的なグリップの最大化に力を注いでいる。「日曜の朝、ダウンフォースで走り回る必要はないですよね」とスヴェルドラップ氏。
3連ディスプレイ ドライビングに焦点
インテリアでは、コネクティビティなど「実用性」を意識しながら、ドライバーを可能な限り没頭させることを目指したという。
そのため、大型のインフォテインメント・ディスプレイはない。アップル・カープレイとアンドロイド・オート対応の円形デジタルメーターが3つ、ドライバー正面に備わっている。従来のインフォテインメント・タッチスクリーンがないことについて、スヴェルドラップ氏は次のように説明する
「このクルマに乗るのは、逃げるためです。ある意味、オートバイのようなものですね。少し頭を空っぽにして、すっきりするためにドライブに出かけるんです」
オーロラには、「アジル(Agil)」と「ター(Tur)」の2つの仕様がある。アジルはサーキット走行に特化した仕様で、2基のフロントモーターを省いて後輪駆動とし、乾燥重量を1300kgに抑えている。
一方、ターはフロントアクスルにトルクベクタリングを備えた四輪駆動で、エアロフォイルと大型リアスポイラーを省いた分、より安全なオンロード性能を意図している。内装も豪華になり、乾燥重量は150kg増加する。
どちらの仕様であっても、大胆なエアダクトやカーボンファイバー製モノコックなどを備えた、高出力のハイパーカーであることに変わりはない。
価格は360万ユーロ(役5億7000万円)から。2025年から各仕様50台ずつ、合計100台を生産し、2026年に顧客への納車を開始する計画だ。
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