愛車の履歴書──Vol22. 萬田久子さん（後編）

愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第22回の後編。俳優の萬田久子さんが、マイバッハとの思い出を披露。最新モデルにも触れた！

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最新のメルセデス・マイバッハ「S680 4MATIC」の後席に乗り込んだ萬田久子さんは、シートの掛け心地や調度品を確認してから、第一印象を口にした。

「上から目線で言うわけじゃないですけれど、Rickyが持っていたマイバッハと比べると、カジュアルになったというか、親しみやすくなった感じがしますね」

Rickyとは、萬田さんのパートナーで、「セオリー」ブランドを日本に持ち込んだ佐々木力さんのことだ。ファッション業界では、リンクセオリー・ジャパンのCEOを務めたことで知られる。佐々木さんは2011年、60歳で亡くなっている。後編となる今回は、萬田さんと佐々木さんの思い出のクルマである、マイバッハについて訊く。

「マイバッハが発表されて、彼はすぐに購入したと記憶しています。確か2000年代のはじめだったんじゃないかな」

19世紀末の自動車黎明期、エンジニアとしてゴットリープ・ダイムラーを支えたのがウィルヘルム・マイバッハだった。

1908年にダイムラーから独立したマイバッハはエンジンを開発する企業を立ち上げる。飛行船ツェッペリン号のエンジンはマイバッハが開発したものだった。第一次世界大戦後、彼の子息が超高級車メーカーを立ち上げたが、第二次世界大戦後にダイムラーの傘下になっている。

そして2002年に、メルセデス・ベンツを超える超高級車ブランドとして、マイバッハの名前が復活を果たしたのだ。

萬田さんは「大きい方のマイバッハだった」というので、全長5728mmのマイバッハ57ではなく、全長6165mmのマイバッハ62だったはずだ。

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本日の試乗車であるメルセデス・マイバッハS680 4MATICの全長は5470mmだから、萬田さんが「親しみやすくなった」というのも頷ける。

「初めてマイバッハに乗った時は、驚いたというよりも、格好よく言うとコンフォータブルだと思いましたね。私は仕事でマイバッハに乗ったことはなくて、いつもプライベートで、パーティに行く時とか、髪の毛をセットすると普通のクルマだと天井についてしまうんです。でもマイバッハだったら大丈夫」

マイバッハの思い出は、シャンパーニュとセットだったとも語る。

「後ろの席にRickyと座って、いつもシャンパーニュを飲んでいた記憶がありますね。到着してから飲めよって話ですけれど（笑）、グラスもついていたし、冷蔵庫もあったし、そうそう、小さいシャンパーニュのボトルに呑み口をつけるのが流行った時期があって、あれもよく飲みました。オードリー・ヘップバーンとは言わないけれど、レッドカーペットが似合うというか、そう、ハリウッドを感じさせてくれるクルマでした。パーティの多い時期だったのかな、マイバッハというと、パーティドレスで乗っていたというイメージがあります」

パーティ会場や結婚式にマイバッハで出かける時に意識していたのは、「似合う人間にならなきゃ」ということだったという。

「ミス・ユニバースの日本代表に選ばれた時に、賞品として（トヨタ）スプリンターと毛皮のコートをいただいたんです。ロングコートじゃなかったけれど、映画で見ていたようなルックスで。それでバスに乗って通学したんですが、バスに毛皮は似合わないと痛感したんです。いつか、この毛皮にふさわしいクルマを持たなきゃいけないと思って、同じような感情をマイバッハには抱きました」

あらためて、最新のメルセデス・マイバッハS680 4MATICの後席の感想を尋ねると、「静かで快適だし、やっぱりこのクルマに似合う人になりたいと思いますよね」という答えが返ってきた。

「私はクルマが好きですけれど、クルマ単体を見るのではなくて、乗っている人とクルマが似合っているかを気にしながら見ていますね。似合っていると人もクルマも格好よく見えるし、トラック野郎も格好いいと思います。だから代官山のTSUTAYAで（ラ・フェスタ・）ミッレミリアを見るのが好きなんです。マチャアキ（堺正章）さんの愛車とか、とっても似合っていて素敵」

メルセデス・マイバッハS680 4MATICの後席でくつろぎながら、萬田さんはクルマの思い出話をいくつも聞かせてくれた。その優雅な所作と、毅然とした口調は、間違いなくこのクルマに似合っていた。

萬田久子（まんだひさこ）1958年4月13日生まれ、大阪府出身。B型。1980年、NHK朝の連続小説『なっちゃんの写真館』で俳優デビュー。ドラマ『大奥』（1984年）、映画『めぞん一刻』（1986年）、NHK大河ドラマ『翔ぶが如く』（1990年）、映画『集団左遷』（1994年）、ドラマ『美男ですね』（2011年）、映画『龍三と七人の子分たち』（2015年）、NHK朝の連続小説『あさが来た』（2015年）など、多数の作品で活躍する。

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文・サトータケシ　写真・加藤純平　ヘア＆メイク・黒田啓蔵　スタイリスト・宋明美　編集・稲垣邦康（GQ）

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マンキュウで～す✌️