2020年11月15日、 イスタンブール・パーク・サーキットで行われたF1第14戦トルコGPの決勝は、ホンダファンにとっては信じられない展開となった。フリー走行から絶好調で優勝を狙っていたレッドブル・ホンダは自滅のような形で後退、アルファタウリ・ホンダは渋滞から抜け出せないままフラストレーションの溜まる結果となってしまった。なぜこんなことになったのか、ドライバーのコメントをまじえて検証してみよう。
上位に進出してはタイヤ交換とスピンで後退
レッドブル・ホンダはフリー走行から予選Q2まですべてのセッションで最速タイムをマーク。他を圧倒していたが、予選Q3でレーシングポイント勢にしてやられ、2番グリッド、4番グリッドスタートとなったのが、まず大きな誤算だった。
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スタート1時間前に雨が降ったことから、完全なウエットコンディションとなり、路面のグリップが低い偶数列のマックス・フェルスタッペン(予選2位)とアレクサンダー・アルボン(予選4位)はスタートで大きく後退。それでもすぐに巻き返して4番手と5番手まで順位を挽回する。
序盤、路面の状況が改善していく中で各車ウエットタイヤから浅溝のインターミディエイトタイヤに交換。タイヤを交換したアルボンはハミルトンとヴェッテルをパスして4番手に浮上するが、フェルスタッペンは2番手のペレスをパスしようと仕掛けたところでスピン、タイヤを傷めて再度のタイヤ交換を余儀なくされる。
路面はさらに乾き、タイヤの消耗が激しくなっていたことから、多くのドライバーが再びピットインして新たなインターミディエイトタイヤを装着するが、ここでステイアウトしていたアルボンがスピンして6番手まで後退してしまう。
フェルスタッペンは他車のピットインもあり3番手までポジションを上げた後、タイヤ交換のためピットインしてアルボンの後方7番手でレースへ復帰するが、乾いていく路面に再びスピン。それでもフェルスタッペンはそこから巻き返し、残り7周のところでアルボンの前に出たものの、挽回もそこまで。両者ともにそのままフィニッシュ。結局レッドブル・ホンダの2台は、上位に進出してはタイヤ交換とスピンで後退するというちぐはぐな展開で、6位と7位に終わった。
一方、予選で失敗したアルファタウリ・ホンダ2台は、ダニール・クビアトが16番グリッド、ピエール・ガスリーはパワーユニット交換に関連するペナルティで最後列からのスタートとなった。
アルファタウリ・ホンダの2台は好スタート、トップ10を視野に入れる位置でレースを進めるが、路面の状況が改善していく中でインターミディエイトタイヤに交換した後、ピットインせずにとどまっていたケビン・マグヌッセン(ハース)に前をふさがれる形となってしまう。これが痛かった。
この後、クビアトが1ストップ、ガスリーが2ストップと戦略を分けたが、序盤でマグヌッセンの前に出られなかったマシンは軒並みポイント圏外に留まっており、クビアトとガスリーも上位進出は果たせず、12位と13位でレースを終えた。レーシングラインでさえ滑りやすく、ラインを外してのオーバーテイクは困難な状況だった。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、レースを終えて「トルコGP決勝は、スタート前に降った雨のためウエットコンディションでのレースとなりました。レース時にはやんだものの、低い外気温であったこともあり、終了までドライにはならず、徐々に路面の状況が変わる中でタイヤマネージメントなど難しいレースになりました。プラクティス、また予選での感触がよかったレッドブル・ホンダですが、フェルスタッペン選手が6位、アルボン選手が7位と残念なポジションでの終了となりました。アルファタウリ・ホンダの2台は、濡れた路面で走行ラインを外してのオーバーテイクが難しい状況などからポジションアップに苦しみ、ポイント圏外でのフィニッシュとなりました。今シーズンは中東での3連戦を残すのみとなりました。いい形でシーズンを終えられるよう、ここから準備をしていきます」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
「とても難しいレースでした。グリッドの偶数列はグリップが低く、スタートがうまくいかずに4番手までポジションを落としました。3番手までポジションを戻すと、コントロールの難しい中でチェコ(ペレス選手)についていこうとしましたが、コーナー出口の縁石の外にあるグリーンゾーンまで出てしまい、大きなスピンを喫しました。ウォールにはぶつからないようにしましたが、タイヤにフラットスポットができたことでピットインせざるを得ませんでした。新しいタイヤに交換して、前に追いつくまではできましたが、パスすることができませんでした。コース上には1つの走行ラインしかなく、そのラインですらもとても滑りやすいという状況で、前のマシンと同じラインしか走れないというのはとてもフラストレーションが溜まりました。また、路面も完全に乾ききってはいなかったので、スリックタイヤに交換することもできず、消耗の早いインターミディエイトで走り続けなければなりませんでした。あとは前方のマシンについていくレースになり、グリップのない中で生き残ろうとトライしていきました。いい一日にはなりませんでしたし、自分たちが意図したようなレースでもありませんでした」
アレクサンダー・アルボン(レッドブル)
「勝利が目指せたと思うので、7位という結果には複雑な気分です。レースウイークを通じて僕らの競争力は高かったので、今日の結果はつらいです。僕らは2台ともスタートがよくなかったのですが、ポジションを上げていき、インターミディエイトに交換したときは素晴らしいグリップがあってとても速かったです。しかし、ペースはとてもよかったものの、2セット目のインターミディエイトに交換してからはグリップがなくなってペースを失い、少し困惑しました。理解しがたい状況ですが、冷静になり、なぜこのようなレースになったのかを分析しなければなりません。今週末はマシンの進化を確認できましたし、トライしたこともとてもうまくいったので、その部分には満足しています。ガレージのみんながすごく助けてくれたので、次のバーレーンでまたそれを再現するのが待ちきれません」
ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
「レースウイークを通じて僕らはあまりよくありませんでした。ウエットタイヤではパフォーマンスを発揮できず、かなり苦戦することは分かっていました。金曜日のドライコンディションではすべてがよかったのでやや困惑しましたが、ウエットやインターミディエイトになるととても遅くなってしまい、フリー走行や予選でもタイヤを適切に作動させられずに苦戦しました。さらに、今日はペナルティも受けました。次に同じコンディションとなった場合に備えて、なにが悪くて、もっとうまくやるには何が機能しなかったのかを理解する必要があります。すでにいくつか答えは見えていますが、僕らはもっといい仕事をすべきでしたし、とてもがっかりしています。この週末は終わったわけですから、この先のレースに目を向けていきます」
ダニール・クビアト(アルファタウリ)
「語るべきことはあまりないレースになりました。自分のレースに徹して12位となりましたが、これ以上にできることはあまりありませんでした。僕らはポイントが獲得できず、レース中ずっと戦っていたのに成果が得られなかったことには、フラストレーションが溜まります。とても難しいレースでしたが、幸いにも一度のスピンのみであまりミスをしませんでした。ドライバーにとってはこうしたコンディションで無事に完走できて気分がいいものですし、集中力を養うためのいいトレーニングになりました。全体的に振り返ると、今週末ウエットでの僕らのペースはあまりよくなく、マシンを作動領域に入れるのに苦しんでいました。何がよくなかったのかを見極め、そこから学んでいきます」
タイヤを供給するピレリはトルコGPについて「日曜日の天候は一日中涼しく、路面温度と周囲温度は摂氏13度前後で、レース開始前は雨が降っていました。レース中、路面は乾きましたが、トラックが滑りやすく、レース終了時に雨が降るリスクが予想されたため、誰もスリックタイヤを使用しませんでした。当初から難しいレースになることはわかっていましたが、ハミルトンは信じられないほどトリッキーなグランプリを、ウェットタイヤ8周、インターミディエイトタイヤ50周のワンストップで走り切りました。ハミルトンはインターミディエイトを効果的にスリックタイヤに変え、それらから最大限の力を引き出しました。見事でした。ウエットタイヤからインターミディエイトタイヤに交換するポイントの判断は比較的簡単でしたが、次をどうするかは極めて複雑でした。ワンストップはレーシングポイントのセルジオ・ペレスとアルファタウリのダニール・クビアトだけでした」と分析している。
次戦第15戦バーレーンGPは11月27日から29日、サクヒールのバーレーン・インターナショナルサーキットで開催される。
2020年F1第14戦トルコGP 決勝 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 58周
2位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+31.633s
3位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ) +31.960s
4位 16 C.ルクレール(フェラーリ) +33.858s
5位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+34.363s
6位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+44.873s
7位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +46.484s
8位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+61.259s
9位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス)+72.353s
10位 3 D.リカルド(ルノー)+95.460s
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +1周
13位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) +1周
F1ドライバーズランキング(第14戦終了時)
1位 L.ハミルトン(メルセデスAMG)307
2位 V.ボッタス(メルセデスAMG)197
3位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)170
4位 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)100
5位 C.ルクレール(フェラーリ)97
6位 D.リカルド(ルノー)96
7位 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)75
8位 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)74
9位 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)70
10位 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)63
F1コンストラクターズランキング(第14戦終了時)
1位 メルセデスAMG 504
2位 レッドブル・ホンダ 240
3位 レーシングポイント・メルセデス154
4位 マクラーレン・ルノー 149
5位 ルノー 136
6位 フェラーリ 130
7位 アルファタウリ・ホンダ 89
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