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日産のコンパクトSUV「キックス」に試乗──コンパクトSUVとしては異例に静かで、異例にスムーズで、異例に速い|NISSAN

掲載 更新 3

日産のコンパクトSUV「キックス」が初のマイナーチェンジを受け、「ノート」と同様の第2世代のe-POWERを搭載して登場。モータージャーナリストの今尾直樹氏がさっそく試乗した。

NISSAN KICKS|日産キックス

打倒ヤリスクロス&ヴェゼル?──e-POWERとプロパイロットを搭載した日産「キックス」に試乗|NISSAN

日産のコンパクトSUV「キックス」に試乗

日産のコンパクトSUV「キックス」が初のマイナーチェンジを受け、「ノート」と同様の第2世代のe-POWERを搭載して登場。モータージャーナリストの今尾直樹氏がさっそく試乗した。

Text by IMAO Naoki|Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko

ポイントは新世代パワートレーンの搭載、内装の質感向上、そして安全装備の充実

2020年6月に国内に登場した日産のコンパクトSUV「キックス」が初のマイナーチェンジを受け、7月17日に発売となった。

ポイントは3つ。まずはe-POWERが第2世代に切り替わった。2020年の年の瀬に発売し、現在販売好調の「ノート」と同じパワートレインを搭載。同時にノート用のe-4WDシステムを使ってこれまでFWD(前輪駆動)のみだったキックスに4WDが新設定された。

次に、インテリアの質感を向上させた。これは世評を受け止めての改良で、コンソールまわりを新設計したほか、ベージュやブラウンのシックな仕様も用意している。

3つめは安全装備の充実で、クラス初の前方衝突予測警報システムを全車標準。

以上のような改良にもかかわらず、2WDの価格はプラス3万8000円にとどめ、お求めやすくしている。というのが日産の主張だ。

ということで、この新型キックスの発売に先駆け、日産追浜試験場内にあるグランドライブで「X FOURスタイルエディション」という4WDの最上級グレードに試乗したので、報告したい。スタイルエディションというのはシート表皮やトリムにブラウンとブラックの2トーンの合皮を用いた内装のオシャレ仕様である。合皮にはダブルステッチが入っており、ドアを開けると、なるほどシックな世界が広がっている。シフトのスイッチは現行ノートと同じタイプだ。

早速、長い直線のスタート地点から全開を試み、加速ぶりをチェックする。お、お、おーっ、と日産e-POWERにさほど慣れているとはいえない筆者は、そのモーターの強力なトルクによる加速に一驚した。

第2世代のe-POWERは、発電用のエンジンはこれまでと同じ1,198cc 直列3気筒を搭載している。12.0という高い圧縮比のこの自然吸気エンジンは最高出力60kW(82ps)/6000rpm、最大トルク103Nm /4800rpm を発揮する。

ところが、モーターは強力になっている。マイナーチェンジ前の最高出力は95kW(129ps)/4000―8992rpmから100kW(136ps)/3410―9697rpmに、最大トルクは260Nm/500―3008rpmから280Nm/0―3410rpmに向上しているのだ。

しかも試乗車は4WDである。後輪を駆動するためのモーターも搭載しており、このモーター、電動4WDのリア用としては50kW(68ps)/4775―10259rpm、100Nm/0―4775rpmと、たとえばトヨタ「ヤリス クロスE-Four」のそれの3.9kW(5.3ps)と52Nmと較べると、パワーにして10倍以上、トルクにして2倍以上を誇る。

ヤリス クロスは車重1,250kg。キックスは1,755kgと、およそ500kgも重い。なので、直接の比較はできないにしても、1クラス上の「RAV4のE-Four」のリアモーターの40kW(54ps)、121Nmと較べても見劣りしていないことは記憶にとどめておくべきかもしれない。

SUVながらハッチバックに近い操縦感覚

SUVながらハッチバックに近い操縦感覚

モーターの強化に加えて、第2世代のe-POWERではモーターの制御がより緻密になっている。第1世代の経験から、エンジンを始動させる頻度を減らすエネルギーマネージメントを学んでもいる。エンジンの始動頻度が減れば、当然、それだけ静粛性が上がる。静粛性が上がれば、クルマの上質感はおのずと上がる。

全開加速だと、1.2リッター3気筒エンジンは発電のためにブウウウンっというサウンドを発して高回転を続ける。それでも、1.2リッター3気筒のコンパクトSUVとしては異例に静かで、異例にスムーズで、異例に速い。といってよいと思う。コーナーが近づき、速度計が150km/hを指したあたりで減速したけれど、直進安定性にも不安はない。これこそドライ路面における4WDの恩恵だ。

全開時、アトキンソンサイクルのエンジンとは異なり、吹け上がりが心地よいところも好印象の要因だろう。駆動系のスムーズさは、エンジンが発電に専念していることによる。内燃機関の咆哮と振動、ロックンロール感覚がお好きな方には違和感があるわけだけれど、シティコミューターとしてのe-POWERの可能性は無限大であるように筆者は思う。

乗り心地も、車重が重めなこともあって、このクラスのSUVとしては落ち着きがある。背は高いけれど、操縦感覚はハッチバックに近い。重たい電池を床下に搭載しているかだろう。

試乗した空間も時間も限られているため、これ以上の感想を申し上げることは控えておこう。マイナーチェンジ前のキックスに、筆者が試乗していないこともある。

それでも、新型キックスがコンパクトSUVとしての商品力を大幅に強化したことは想像にかたくない。なんせキックスは、同じ2020年の年の瀬に登場したノートが第2世代のe-POWERを搭載していたのに、世代的には古いままで、しかもライバルのトヨタ ヤリス クロスやホンダ ヴェゼルとは違ってFWDしかなかった。自販連が発表している乗用車ブランド通称名別順位で、キックスは本年1~6月25位だったけれど、今回のマイナーチェンジで一気に挽回するに違いない。

SUV百花繚乱の時代、日産としては、この新型キックス、次のエクストレイル、そしてEVのアリアをもって電動4WD3兄弟、もしくは3姉妹とし、他社にはない価値としてアピールしていくという。日産の反攻に期待したい。

Nissan Kicks X Four Style Edition|日産キックス Xフォー スタイル エディション


全長×全幅×全高|4290×1760×1605mm
ホイールベース|2620mm
トレッド前/後|1520/1535mm
最低地上高|170mm
駆動方式|4WD
車重|1755kg
乗車定員|5名
サスペンション前|マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション後|トーション・ビーム/コイル
エンジン|1198cc 直列3気筒DOHC(ボア×ストローク=78.0×83.6mm)
圧縮比|12.0
最高出力|60kW(82ps)/6000rpm
最大トルク|103Nm /4800rpm
モーター(フロント)|EM47 交流同期電動機
最高出力|100kW(136ps)/3410―9697rpm
最大トルク|280Nm/0―3410rpm
動力用主電池|リチウム・イオン電池
モーター(リア)|MM48 交流同期電動機
最高出力|50kW(48ps)/4775―10259rpm
最大トルク|100Nm/0―4775rpm
動力用主電池|リチウム・イオン電池
ブレーキ 前|ベンチレーテッド・ディスク
ブレーキ 後|ディスク
タイヤ 前後|205/55R17 91V
価格|328万1300円



日産お客さま相談室

Tel.0120-315-232(9:00-17:00、12/31-1/2を除く)

http://www.nissan.co.jp/

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