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愛車の履歴書──Vol42. 石野真子さん(後編)

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愛車の履歴書──Vol42. 石野真子さん(後編)

愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第42回。後編は、石野真子さんの愛車歴を綴るとともに今、興味を持っているというコンパクトな電気自動車を体験した!

3台乗り継いだメルセデス・ベンツ

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前編では、1980年代前半に芸能活動を再開した石野真子さんが、アウディ「80」を運転して仕事の現場に通うようになったところまでを記した。

「アウディ80はすごく気に入って乗っていたんですが、事務所の社長さんからメルセデスのSLをゆずって下さるというありがたいお話をいただいたんです」

1980年代のメルセデス・ベンツのSLということだと、1971年から1989年まで生産された第3世代のR107型だろう。この時代のSLの写真を見せると、「そう! このちょっとクラシックな感じでした」と、石野さんは頷いた。

「すごくきれいな形で、『私がこんなに素敵なクルマに乗っていいの?とってもエレガント』と、うれしく思った記憶があります。ボディカラーはチャコールグレーで、高速道路ですごく安定していたことに感動しました。仕事場だけではなく山や海等、日本のあちらこちらにドライブしました。神戸の実家まで、東京からひとりで運転して帰省するときも、このクルマは安心でした。ただ、屋根を開けた記憶はほとんどありません。というのもハードトップを外して、それを駐車場に保管しておかないと屋根を開けることができない構造だったので。このSLは大好きでした。最終的に15万kmを超えて、20万km近くまで乗りました。ただ、さすがにいろいろとトラブルが出るようになって、事務所に出入りしていたクルマ屋さんに、おなじようなクルマに乗りたいとリクエストしたんです」

こうして第4世代、R129型のメルセデス・ベンツSLが石野さんのもとにやって来た。

「新車に近い、ほとんど走っていない中古車で、色は紺でした。SL500も馬力があって、加速が気持ちよかったですね。クルマの運転がすごく好きだった時期で、海外に行った時もレンタカーを借りてロスからサンフランシスコまでドライブしたり、アウトバーンを走って感動したりしたことを覚えています。だから気持ちよく走るSL500は、当時の私にぴったりでしたね」

資料をあたると、SL500の5.0リッターV型8気筒エンジンの最高出力は320psとある。この高性能エンジンに鞭を入れて、石野さんは芸能活動に邁進した。

「ロケ場所にひとりで行くというのが当たり前でしたので、ドラマの撮影で山梨の住宅地とか、栃木の山の中とかいろいろな場所に行きました。カーナビも出始めで、途中から装備しましたが、まだ手書きの地図をもらって、ちゃんと目的地に着けるかなと泣きそうになりながら現場に向かっていました。『次の路地を右ね』とかひとりでブツブツ言ったり、『深夜真暗な明かりはヘッドライトだけの山道だけどちゃんと帰れるかな?』と、ベンツに話しかけたり……クルマというより頼りになる相棒とか愚痴を聞いてくれる相手という感じで、とにかくアクティブに毎日走りまわっていました」

紺色のSLも大いに気に入ったとのことで、軽く10年以上は愛用したという。

「でも、ドラマの撮影を終えてさぁ帰ろうというときに、スタジオの駐車場でうんともすんとも言わなくなっちゃったんですね。何度かメンテナンスをしていましたが、これは仕事に支障が出るということで、おなじメルセデスの『Bクラス』に乗り換えることに決めました」

石野さんが愛用したのは、2005年から2012年まで生産されたメルセデス・ベンツの初代Bクラスだった。

「この頃になると、仕事への移動は事務所のスタッフが運転してくれるようになっていました。だから正直に言うと、Bクラス以降のクルマは私用で、近所へと行動範囲も狭くなり、遠距離は運転しなくなりましたが、恵まれたカーライフです」

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「2、3年前だったかな。すごくきれいな色のクルマが停まっていたんです。くすみカラーの、空色でマットな質感の色でした。近づくとボルボというロゴを見つけて、私が乗っていたボルボはこんなに変わって、また素敵なクルマになっているんだと、感動がありました」

こうして、最新のボルボを見てみたいという石野さんのリクエストを受けて用意したのが、ボルボ「EX30」。BEV(バッテリー式電気自動車)専用の基本骨格をゼロから設計して開発した、ボルボの未来を担うモデルだ。ちなみにボルボは、2030年までにBEV専業メーカーになることを目標にしている。

「いやぁ、未来のクルマという感じですね」と、石野さんは興味深そうにボルボEX30のあちこちをチェックする。

「SL500に乗っていたときに、ずいぶんガソリンを使いましたが、もう一滴も燃やさないんですね……。あと、音も静かで、メーターがないと思ったら画面上に映し出される!こういうクルマの時代になったのですね!と、驚きます」

運転席に座った石野さんは、あちこち見まわしてから、「スイッチとかが全然ないんですね」という感想を口にする。このクルマは、縦型のタッチスクリーンにインターフェイスのほとんどを集約することで、機械的なスイッチやダイヤルをほとんど廃しているのだ。

「運転席に座ってブレーキを踏むとスイッチオンになると教えていただいて、キーをまわしてエンジンを掛けていた世代からすると、隔世の感があります」

内装にリサイクル素材が多用されていることや、配線を減らすためにオーディオのスピーカーがドアではなくダッシュボードに据え付けられているといった説明を、石野さんは興味津々といった様子で聞いている。

「もう操作がタッチ、スマホのようですね。私が初めて乗ったボルボから、最新のボルボまで見せていただいて、なんだか時間旅行をした感じで、すごく楽しかったです」

確かに、クルマの仕事をしていても、同じブランドの1970年代のモデルと2024年のモデルを同時に体験する機会はほとんどない。

石野さんとともに、自動車の進化を肌で知ることができた、貴重な取材だった。

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【愛車の履歴書 バックナンバー】
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Vol2.野村周平さん 前編/後編
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Vol4.坂本九さん&柏木由紀子さん 前編/後編
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Vol42.石野真子さん 前編

文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・冨沢ノボル スタイリング・間山雄紀(M0) 編集・稲垣邦康(GQ)

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