クルマの魅力をどこに感じるかは人それぞれ。各界で活躍する著名人が、とっておきの1台をセレクトし、その魅力や想いを語る連載がスタート! 記念すべき第1回は俳優・永山絢斗さんに話を訊いた。メルセデス・ベンツ 560 SEC AMG 6.0 ワイドボディという、かつてのAMG社が手がけたモンスターマシンを選んだ意外な理由とは?
Mercedes-Benz 560 SEC AMG 6.0 ‘Wide-Body’
当時のメルセデス・ベンツの最上級4シーター・クーペだった「560 SEC」をもとに、 ボディを拡大し、かつエンジンの高出力化と足まわりを再セッティング。 そして内外装に専用パーツを装着したスペシャル・モデルだ。当時の新車価格は2950万円だった。“オートマ”で乗るなら、コレしか考えられません。今すぐに買えないからこそ憧れが募ります」
俳優・永山絢斗さんが、憧れの1台に選んだのはメルセデス・ベンツ「560SEC AMG 6.0 ワイドボディ」。標準の560 SECではなく、過激なAMGモデルである。クルマ好きの永山さんらしいチョイスといえるだろう。
彼が所有する2台のうち1台は、フォード「フォーカスRS500」という世界限定500台、最高出力350psのモンスター・ハッチバック。もう1台はフォルクスワーゲン「ゴルフ(2代目)」だけれど、“カリカリ”にチューニングしている。どちらもマニュアル車だ。これまで彼はオートマチック車を所有したことがない。
「もともと、ノーマルの560 SECが気になっていました。あの優雅なリア・デザインや凹凸のあるテールランプなどのディテールが好きだったんです」
ある日、560 SECをウェブで調べていると、衝撃が走った。「ワイドボディの画像が表示されたんです。『こんなにもワイ ルドなSECがあるなんて……』と。それが560 SEC AMG 6.0 ワイドボディだとわかったんです」。
当時はまだメルセデスとは別会社だっ たAMGがデザインしたエアロパーツやホイールを装着したそれは、ローズウッドをたっぷり使った内装も魅力的で、永山さんはすぐに虜になった。価格は、……唖然とした。
「新車当時、2950万円ですよ!? ぶったまげました」
ベース車両の560 SECは1465万円 (1990年当時)だったから、約2倍である。
「ワルそうに見えるのも個人的には魅力です。峠を攻めるより、都市部をゆったり と、“オトナの乗り方”で嗜みたいですね。ダブルのスーツなんか着ちゃって(笑)」
560 SEC AMG 6.0 ワイドボディは、見かけだけではなかった。メルセデス・ベンツの最高級2ドア・クーペの560 SECをもとに、AMGが排気量を5.6リッターから6.0リッターに拡大し、V8のヘッドをSOHCからDOHCに仕立て直している。
「AMGモデルに限った装備ではないかもしれませんが、手が届くところまでシートベルトが自動的に送り出される機能にも惹かれました。こういう装備も個性を高めますよね」と、嬉しそうに話す。1989年生まれとは思えない、ちょっとマニアックな感想だ。気になるクルマがあるとYouTubeなどでチェックしているという。
「最近、行きつけのガソリン・スタンドで、“17クラウン”を勧められたんです。『MTに交換された中古車が入荷したので、コレ乗ってドリフトしましょうよ』と」
永山さんが話す“17クラウン”とは、1999年に登場し、2007年まで生産された11代目、S17型クラウンを指す。
「クラウンなら11代目のデザインに惹かれます。グレードは『アスリートVX』がいいですね」
アスリートVXとは、限定300台の希少車だ。「アスリートV」をもとに、シャシーとエンジンをヤマハがチューン。2.5 リッター直6ターボの最高出力は280psから、当時の日本車としては異例の300psを実現した。こんなマニアックなグ レードを挙げるとは……おそるべし。
「クラウンもいいんですけど、セダンでド リフトするならトヨタの『チェイサー』も 気になってしまって……」
欧州車一辺倒かと思いきや、日本車までチェックしているとは守備範囲が広い。 永山さんにとってクルマとは、“直感”で 選ぶものであり、ブランドに左右されないようだ。そういえばフォーカスRS500に興味を抱いたきっかけも、WRC(世界ラリー選手権)で見た勇姿だったという。もっとも、惚れたクルマとはいえ、人生初のマ イカーが並行輸入の、しかも“超”高性能 ホットハッチというのは驚きでしかない。
「フォーカスRS500をさらに自分好みにチューニングしていくなかで、唯一、目に留 まったのが560 SEC AMG 6.0 ワイドボ ディでした。標準の560 SEC含め、頻繁に中古車サイトをチェックしているのですが、全然、(市場に)出てこない。だから、“これだ”という個体に巡り会えません」
560 SECは、バブル期に発売されたモ デルだったので、それなりの台数が日本に上陸したものの、近年、程度の良い個体は海外へ流出。そのため、日本の中古車市場になかなか出まわらないらしい。状態の良い560 SEC AMG 6.0 ワイドボディは、海外のオークションで、2000万円超で取引されているという。
それを聞いた永山さんは、きっぱり「 買うなら妥協はしたくない」と、話す。
「AMG 6.0 ワイドボディは、今すぐは無理ですけど、もし、程度の良い560 SECを手放したいというオーナーさんがいらっしゃれば、ぜひ僕まで連絡ください! 冗談ではなく本気です」
いつの日か、永山さんと560 SECのショットが見られるのを楽しみにしたい。
【プロフィール】
俳優・永山絢斗(ながやまけんと)1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX~外科医・大門未知子~ 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。
【出演情報】
『絶景ハイク み仏の道をゆく』~ 国東半島・ロングトレイルの旅~(NHK BS 4K)
・放送日時:2月27日(日)11:00~11:59
文・稲垣邦康(GQ)
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