チップ・フースの初期作をリニューアル
キャデラックをベースにしたホットロッドということで、エルドラドをもじってエルドロッドというネーミングはなかなか気が利いている。しかし、この車両について「1948年型キャデラック・エルドラドがベース」という紹介のし方があちこちでされているが、これは正確ではない。1948年型キャデラックのラインナップに、エルドラドというモデルは存在しないからだ。
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【画像26枚】美しい仕上がりのエルドロッドを細部まで拝む!
他のモデルとは異なる外観を持つ、特別誂えのコンバーチブルとしてエルドラドがデビューしたのは、1953年型でのことである。爾後、この名はキャデラックのパーソナル・クーペ/コンバーチブルのネーミングとして長く使われることとなった。1948年型のラインナップを参照すると、このカスタムカーのベースは、シリーズ61あるいは62のコンバーチブルであろう。
それはさておき、このカスタマイズを行ったのは、以前にもこのページで紹介したフォードF-100(下の「関連記事」参照のこと)と同じくチップ・フースだ。実はこのエルドロッドはリニューアル版で、元々はボイドによる作品であった。同車が発表されたのは1990年代のことで、マルーンで仕上げられた当時の姿は、フランクリン・ミントから1/24ミニカー化もされている。ただしボイドによる作とは言っても、実際にデザインを担当したのは、その当時ボイド・コディントンの元でチーフ・デザイナーとして働き始めたフースだったという。
そんなエルドロッドがリニューアルされる機会を得たのは、現在のオーナーがデザインの更新を求めたためだ。フース自身もそれは望むところであったが、ではどうするべきかと悩んでいたところ、当時のオリジナル・スケッチを発見したという。フース自身のデザインは、マルーンではなくブルーで描かれていた。
この本来の構想をベースに、ルーフラインに変更を加え、フロントグリルや前後バンパー、ホイールアーチ形状もリデザイン。インテリアはシートなどを新たなカラーで張り替えたほか、1948年型のストックのステアリングを使用するなどして印象を新たにしている。こうしてエルドロッドは、二重の意味で、過去と現在のハイブリッドとして生まれ変わったのである。
フォードF-100に続く、カスタム状態だけを製品化した好キット
カスタマイズされたキャデラックの模型と言えば、有名なキャジラ(これも1948年型がベースだ)のホットウィールやレジンキットが思い起こされるが、このエルドロッドは、レベルが手掛けるチップ・フースのシリーズから、1/25スケールのプラモデルとして、2017年に製品化された。ここでご覧いただいている作例はこのキットを制作した作品であり、自動車模型専門誌「モデルカーズ」259号(2017年)に掲載されたものだ。以下、作者・畔蒜氏による解説をお読みいただこう。
「このキットのリリースを知ったのはちょうど、以前に紹介したフースのF-100の制作に着手したときだった。早速プレオーダーを入れたのは言うまでもない。フタを開けて残念だったのが、キットのパッケージング。コンバーチブルタイプなのに、フロントウィンドフレームのガードや補強パーツもなく、無造作に箱に詰め込まれた感じであった。当然の如くウィンドフレームは変形し、一部クラックが入っていた。
おそらく初期ロットは同じようなパッキングである可能性が高い。この指摘が彼の地に届いて改善されることを期待したいところだ。ウィンドフレームの修正は熱処理を避けて、手作業で徐々に戻して接着剤などで補強したが、結果として100%戻ることはなく僅かに右側に変形が残った。
さて肝心のボディスタイルは、ノスタルジックな雰囲気を残した特徴を良く再現していると思われる。おそらくフース自身が監修しているはずだ。ボディの下処理の時は、この流麗なボディラインを壊さないように注意が必要だ。特に前後のフェンダー周りのパーティングラインを削る時は、フェンダーの頂点を通る僅かな『峰』を削ってしまわないようにしたい。デタッチャブルハードトップは別パーツ、インテリアが良く出来ているので、取り外し可能としておいた方が良いだろう。
エンジンはモダンなシボレーのビックブロック、補器類も今時的。フロアとは別パーツのシャシーフレームはX形メンバーを持ち、フロント/リアのサスペンション部分はC4コルベットと、非常に興味深い。残念ながらフロント部分はホイールシャフトを貫通させるため、エンジンの一部とサス周りに切り欠きがあり不自然な感じだ。作例ではメタルシャフトをフロントサスに接着し、ホイールを受ける部分を残して中央部を切断し取り除いた。シャシーやエンジンの欠損部分をプラ材で充填して本来のディテールに戻し、省略されたフロントショックを追加した」
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