同社にとって最も冒険的といえるアルトゥーラ
マクラーレン・オートモーティブのCEO、マイケル・ライターズ氏は、同社のロードカーをモータースポーツがルーツのものへ戻したいと発言している。レーシングカーとの関係性を深め、他にはない個性や特徴を創出したいと考えているようだ。
【画像】さらにワイルド&ドラマチック! マクラーレン・アルトゥーラ ハイブリッドのスーパーカーたち 全180枚
そんな彼が現在のポジションへ就任してから、間もなく2年。早速、その変化が量産モデルへ反映されているのかもしれない。最新のマクラーレン750Sは、従来よりワイルドさやドラマチックさが強化されている。
アップデートを受けたプラグイン・ハイブリッドのアルトゥーラも、同じベクトルを向いている。リセットされたように感じた、といっても過言ではない。
アルトゥーラの販売は少し伸び悩んでいたと、同社の幹部は認めている。大々的な改良を施し、再出発を果たしたいという狙いがあるのだろう。
もっとも、2022年の発売時から、アルトゥーラは同社にとって最も冒険的なモデルといえた。それは、ハーネスを用いずイーサネット接続を利用した電気系統や、スーパーフォーム技術で成形されたアルミニウム製ボディだけではない。
カーボンファイバー製モノコックタブは、自社製造の最新版。マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャ(MCLA)と名付けられ、従来より高剛性で、電動化技術で増える車重の削減にも注力されている。
パワートレインは、V型6気筒ツインターボに電気モーターを組み合わせた、ハイブリッド。同社のP1以来となる、技術的にも1歩踏み込んだモデルといえる。
ソフトの改変で700ps 既存オーナーも対応可
アルトゥーラのオプションは多彩。ボディカラーは標準の6色のほか、追加費用で約30色から選べる。ホイールのデザインは3種類。ボディトリムや装備類も、ふんだんに用意されている。
特に選ばれる可能性が高いオプションは、7種類のパッケージとして提供。グロスブラック・インテリアフィニッシュ、パフォーマンス、MSOカーボンファイバー・インテリアなどだ。ボディスタイルは、クーペの他にスパイダーも追加された。
全長は、570Sと比較して約10mm縮められ、ホイールベースも僅かに短い。車重は1498kgと充分に軽量といえ、46kg増に留めた。カーボン製モノコックタブは強固なため、スパイダーの車重も62kgのプラスに抑えられている。
2025年仕様のアップデート内容を確認していくと、3.0L V6エンジンは、ソフトウェアの改変で最高出力が585psから604psへ上昇。既存オーナーも、ディーラーでのアップデートで同等の増強が受けられるという。
7.4kWhの駆動用バッテリーと、エンジンの直後に組まれた、トルクを補完する駆動用モーターで構成されるハイブリッド・システムは、130kgと軽量。モーターの最高出力は、95psで変更ない。
システム総合での最高出力は、20ps増しの700ps。最大トルクは73.2kg-mを発揮する。これは、マクラーレン570Sや600LTを遥かに上回る数字。アウディR8やランボルギーニ・ウラカンも凌駕する。
新しい可変ダンパーを獲得 エグゾーストも改良
主な推進力はV6ツインターボエンジン。M630型と呼ばれる広角ユニットで、強化されたクランクシャフトが組まれた。従来のV8ツインターボより50kgも軽く、コンパクトな点が強みだ。
8500rpmまで吹け上がり、パワーが上昇していく「クレッシェンド効果」を感じれるよう、チューニングされてもいる。エンジンマウントは強化された。
アクティブ・エグゾーストも改良。エンジンサウンドを一層堪能できるよう、パイプでキャビンへ導かれるアクティブ・シンポーザーも追加された。
8速デュアルクラッチ・オートマティックは、変速速度を短縮。トルクベクタリング機能を備える、電子制御のリミテッドスリップ・デフを介して、後輪が駆動される。ちなみにリバースギアはなく、電気モーターを逆回転させてバックする。
フロントがダブルウイッシュボーン式、リアがマルチリンク式のサスペンションは、遥かに高速で制御されるアダプティブダンパーを獲得。従来と同様にコイルスプリングが支えるが、姿勢制御を引き締め、操縦性と安定性を向上させたとしている。
ブレーキは、カーボンセラミック・ディスクが標準。ステアリングには、電動油圧アシストが組まれる。
思慮深いインテリアデザイン 小物入れ多数
インテリアを観察していこう。2シーターのキャビンには適度なゆとりがあり、身長の高い大人でも窮屈には感じない。ヘルメットを被れる余地もある。座り心地の良いクラブスポーツ・シートが標準で、快適な運転姿勢へすぐに落ち着ける。
サイドシルの位置が低く、乗降性はスーパーカーとしては良好。ひと呼吸置くと、マクラーレンの思慮深いインテリアデザインに気づける。
グローブボックスは備わらないが、ドアポケットは大きく、シザーズドアが開いても物が落ちないよう工夫されている。細身のセンターコンソールにも、小物入れとカップホルダーがある。
シフトセレクターの両脇にも、深いスリット。スマートフォンを立ててしまうのに丁度いいだろう。
メーターパネルはモニター式。ステアリングコラムに固定され、運転姿勢に合わせてステアリングホイールを調整すると、一緒に角度が変わる。リムに隠れてメーターが見えない、という状況はほぼ避けられている。
大きなシフトパドルがステアリングホイールの奥にあり、パワートレインとシャシーのモードを選択するスイッチが、メーターカウルの上端にある。運転中でも、視線をそらさず変更しやすい。
インフォテインメント・システムも最新版に
インフォテインメント・システムは、MIS IIという名の最新版。8.0インチの縦に長いモニターと、実際に押せるホームボタンとスクロールホイールが用意されている。処理速度は速く、操作性も良い。それでも、エアコン用に独立した操作パネルは欲しかった。
英国仕様の純正カーナビは少し使いにくいが、メーター用モニターにマップを表示できて便利。アップル・カープレイとアンドロイド・オートには無線で対応する。ワイヤレス充電ポーチが、アップデートに合わせて用意された。
試乗車にはバウワース&ウィルキンス社製の、12スピーカー・オーディオが組まれていた。音質がクリアだったことは、いうまでもない。
スパイダーの場合、シート後方の収納空間が格納式ルーフで占拠される。48km/hまでなら走行中でも開閉可能で、約11秒で完了する。運転席からの視界は良好。スパイダーでも同様だ。
公道での印象は、改良版マクラーレン・アルトゥーラへ試乗(2)にて。
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